ここ数年、だろうか。気がつけば、いつも何かに追われているように思う。
仕事、子供のこと、将来への不安・・・。いつも何かが心を占めている。周囲の自然や音や、人や、今ここにあるものに心を預けていることが、ない。こんなことでいいのかと思う。
最近、吉本ばななのTUGUMIを読み返した。10年ぶりくらいだろうか。再びひたったその世界には、今はもう忘れてしまったいろいろなモノが描かれていた。自然の作り出す音や造形、その瞬間のまぶしい光や、眠れない夜の暗闇、などなど。日常にありながら「何気ない」それらのものは、たぶん誰でもがキャッチできるものではない。キャッチしようと思っている人にしか受け取れない。
海水浴に興味がない。子供のころにはあんなに好きだった海水浴になぜ興味がないのか、その答えも本の中に見つけた。海面に沈みながら浮かびながら見る太陽の光。自然のレンズフレアや海水による光の屈折でめまいがする瞬間。もぐったとき、水面の歓声が、水を通して鈍く伝わってくる感じ。読みながら、自分の身体に残るそんな様々な感覚を思い出した。
非常階段の踊り場で、じっとしたまま耳を澄ましてみた。車の音、人の話し声、ビルを切る冷たい風・・・。あまり美しくはないかも知れないが、リアルタイムの音が、ぐっと身に迫ってきた。今日が、子供の頃から繰り返してきた、あの冬の一日であることを、少し感じられた気がした。
「娯楽」と「難しいこと」 2007.04.08
スポーツ選手って・・・ 2007.03.07