日常・・・

日常・・・

第五章 【ミニの死とは・・・】


「どこだ、ここは・・・?」
森の中心部にまで歩いていたカルロス一行の一人、ユーリが言う。
「相変わらず場所が分からないぞ」
ミニが苛立ちながら叫んだ。相変わらず、荷物はユアンが持っている。
するとカルロスが叫んだ。前方を指差している。
「あ・・・あれは!!」
カルロスの指差す方を見た。一行は走っていった。
「これは・・・?」
それは、少し前に墜落したと見られる、飛行機の残骸であった。
「これが墜落した奴だな・・・かなりぼろぼろだ・・・そりゃ一瞬で死ぬわな」
ユーリが何気に呟いた。しかし、カルロスがそれを否定した。
「見ろ、足跡がある・・・しかもかなりたくさんだ」
ユアンも便上する。
「見てください。ここに少し血痕があります」
というユアンの周りを見た。周りには少しと言わずに大量の血痕があった。
「お前・・・それを少しというか?」
ミニがユアンに言った。これは嫌味っぽく言ったつもりだろう。
そんな時、エブリーは飛行機の残骸の塊の前で立っていた。
妙に人をひきつける、その残骸はかなり巨大だ。
エブリーはゆっくりと近づいた。そして、その残骸に手を触れた。
すると、残骸から手が現れた!
「うぁ!」
エブリーは悲鳴を上げると、一行はいっせいにエブリーの元に向かった。
が、一瞬にして残骸の塊の中が崩れて、いや、吹っ飛び、中から四体の人間が出てきた。
しかし、顔は青ざめていて、歯は鋭くなっていた。
目は死んでいる。そう、これはリッカーに噛まれた時に、自然に体にリッカーを作ったものが注入されて、
人間がリッカー化、いわいるゾンビ化した状態なのだ。
「うおぉ!!」
「!」
ユーリとユアンは二人で叫んだ。
「くそ、撃て!!」
カルロスは銃を一体のゾンビへと向け、連射して吹き飛ばした。
が、すぐに起き上がった。
「何・・・」
カルロスは再び連射をした。そして何とか一体倒したが、仲間達は苦戦している。
「何なんだよ!この島は!?」
ミニが叫んだ。もちろん、誰も答えるものなどいない。
カルロスは四方八方を見回した。あっちではユーリが、こっちではミニが、そっちではユアンとエブリーが戦っている。
こうなったら、とる手段はこれしかなかった。
「おい!逃げろ!!」
カルロスは声を張り上げて叫んだ。
そして手榴弾のピンを抜くと、やつらのもとへ投げ込む。
それに感づいたメンバー達は一斉に散らばると、直後に爆発が起きた。
ゾンビたちは巻き込まれ、何体か吹き飛ばされる。
「今のうちだ!着いて来い!」
カルロスは自分の直感だけを頼りに・・・他の隊員たちを引き連れて先頭に立って走り出した。
「どこへ行くんだよ!!」
ミニの声が聞こえる。
「とりあえずあいつらから逃げる!!」
カルロスは自分を信じて走り続けた。




「アフタショット」
ネイオは操舵室で計器をチェックしているアフタショットに話しかけた。
「なんだい・・・」
アフタショットは静かにしていた。恐らく船を止めてしまった責任を・・・
再び旋回するように走り出したあと、襲撃も無いので海上で待機する事となったのだ。
「発進できそうか?今のうちにはなれないと」
ネイオが言うが、アフタショット計器の類を見て顔を上げない。
「さっき飛ばしすぎてオーバーヒートした。動かすには時間がかかりそうだ」
ネイオの周りは静かにうつむくものばかりだ。どうも気が沈んでいる。
そのとき、船が下から何かに突き上げられたように揺れた。
「なんだ・・・」
ネイオは一人で飛び出した。
「ネイオ、リッカーだ。奴がさっきから・・・あ、見えたぞ!」
魚雷専門の若いジムが海を見つめている。よく見ると、深くにリッカーの影が見える。
すると船の下にもぐりこみ、見えなくなった。そのとき、振動がきた。
「やっぱりあいつだ・・・アフタショット。船を発進させろ」
スコットはアフタショットに向かって叫んだが、ネイオが補足する。
「さっき飛ばして船が動くには時間がかかるらしいんだ」
「マジかよ!そいつはヤバイ・・・」
すると、また振動。
「僕、下に行って魚雷見てきます」
ジムは、下の倉庫に行き、魚雷を確かめに行った。
「俺たちはどうする」
ジェフがカナリーに聞く。
「俺達も銃器の積み出しだな、火薬を濡らせば意味が無い」
続いてまたもや振動が伝わってくる。リッカー、意外と頑丈のようだ。
「くそ、このままじゃ何かやられるぜ」
ジェフが叫んだ。すると、今度は「ざくっ!」という音と共に振動が伝わってきた。
「何だ、今の音?何か裂けた!」
スコットが大きな声で言う。すると下の倉庫でジムの声が聞こえた。
「お~い、大変だ~」
この声を聞いて、皆一斉に一番下の倉庫へと向かった。
「どうしたジム!何かが・・・・・・!!!!」
ネイオはそういいながら床に着地したが、滑って転んでしまった。
「いててて・・・なんだ・・・!?」
「大丈夫か!」
梯子を伝ってスコットも降りてきたが、やはり滑って転んだ。
「気をつけて」
ジムが二人が転んだのを見て叫んだ。ジェフとカナリーも降りてきた。
「ヤバイ。あれ」
ジムが指差すと、床が裂けているのが見えた。かぎ爪のあとなので、さっきのリッカーの仕業であろう。
「さっき、僕の近くで、床を裂いたんだ。そしたら水が・・・うわ!」
ジムが話し終わらないうちに、水が一気に入ってきた。このままだと、沈むのも時間の問題だ。
「浸水する前に・・・魚雷だ!魚雷を運ぼう・・・」
そうネイオが行った途端、今度はかぎ爪の痕のリッカーが体当たりをし、穴が少し大きくなった。
「早く運べ!」
カナリーが叫ぶと、ジムとネイオは協力して一つの魚雷のケースを一つ上の倉庫へ運んだ。
「早く・・・」
ネイオが言うと、今度はリッカーが船の底にしがみついた。そしてうまい具合に、かぎ爪の穴に口を押し当てて口で破壊しようとしだした。
「水もそこそこ入ってくる。奴も入ってくるぞ!」
最後にジェフが一人でリモート操作型魚雷を運びあげた。未だにリッカーはかぎ爪で開いた穴を破ろうとしている。
そのとき、またもやリッカーの体当たりで船が揺れた。
そしてその衝撃で、梯子の上にいたカナリーが浸水し始めている倉庫に落下した。
「おい!カナリー!」
魚雷を置いたジェフが手を差しのべる。
しかし、落ちた勢いで梯子まで距離がある。
何とかカナリーは立ち上がった。
しかし、突然カナリーの顔がゆがんだ。足元か?
「くそ!足が穴に・・・なんだ!!!」
ひざまで水に使っているので、よくは確認できないが、
だんだんカナリーの足元の水が赤く染まっていくのは確認できた。
「おい、大丈夫か!」
ネイオは必死になって叫んで、ジェフ同様手を伸ばす。
「助けてくれ!あいつに喰われてる!」
カナリーは必死に手を伸ばすが、届かない。無理だ。
リッカーはそんなカナリーを思い切り引っ張ると、カナリーの顔が苦痛に歪む。
「くそぉ!誰かこの化け物を!・・・」
そこまで言った時、カナリーの体は一瞬にして船の外へと引きづり込まれてしまった。
「カナリー!」
ジェフが叫んだが遅かった。
「カナリー・・・」
ジェフとジムは悲壮に顔を曇らせる。
スコットはカナリーが消えた箇所を見つめていた。浸水が酷い。
すると、一瞬にしてリッカーが帰ってきて、穴を空ける作業を再開し始めた。
かぎ爪を船に立てる。
「おい・・・マジかよ」
スコットがぼやくとリッカーは片腕を倉庫の床につけ、入ってこようとした。
ネイオは決めた。一旦上に行った。
「おい、ネイオ、そんなに急ぐなって・・・逃げるなら・・・」
とスコットが言ったが、すぐネイオは帰ってきた。武器を持って。
「それは・・・」
「ああ、コルトンが落としていった銃だ。これは強力だろう・・・」
そう言うと、下の倉庫に飛び降りた。もものあたりまで水がきている。
「おい、ネイオ。何をするんだよ!」
穴が大きくなっていた。
「ふ・・・これでもくらえ!」
リッカーは無我夢中で穴を空けている。ネイオはそれに向かって、コルトンが残した強力な銃で弾を放った。
強烈な音と共に、穴を空けようと船体にへばりついていたリッカーは吹き飛んで、海中へ投げ出された。
しかし、デメリットもあった。穴は数段大きくなり、水が入ってくる速度が速くなった。
またリッカーが来たら、簡単に入ってこられる穴の大きさである。
「やった、吹き飛ばした!」
いまさらながらジムが叫んだ。リッカーのものと思われる、赤い海水も入ってきた。
「いや、あれ位で倒せるもんじゃないぞ。一回弱るが、すぐに回復して戻ってくる・・・」
「あれでも倒せないって言うのか?そりゃ無いぜ・・・」
ジェフが歎いた。当たり前であろう。
そんなことしていると、一番下の倉庫の水の量はかなり多くなった。
梯子を登った倉庫で見ているネイオたちは、ようやく気付いた。
「ヤバイ・・・このままだと浸水して、沈んでしまう」
「本土まであとどのくらい・・・?」
「いや、本土には多分辿り着けない・・・」
ネイオなりに推測した。事実そうだった。スコットがある案を出した。
「引き返せば・・・本土に行くより、あの島の方が近いはず・・・」
「お前、またあの島に行こうってのかよ?勘弁しろよ」
ジェフは呆れたようにうつむいた。
「だけど助かるにはそれしかないよ・・・」
ジムも賛成する。
「よし、島に引き返そう・・・」
ネイオは呟いた。
「アフタショット、発進できそうか?」
スコットは操舵室までいくと、計器類をいまだ眺めているアフタショットに尋ねた。
「何とかいけそうだが・・・最高速度は」
「よし!最高速度で島まで引き返せ!」

五分後、船は島に向かって突っ込んでいた。
スピードはこの上なく出ている。水が入るのを、少しでも少なくするためだ。
「アフタショット、砂浜に近づいたらスピードを落とせ」
操舵室には全員入り込んで、前方を確認していた。これから島に戻るのだ。緊張はする。
「島に行ったら修理をするか・・・逃げ込むか・・・」
不意にジェフは操舵室を飛び出した。そして、二階席に向かってからすぐ、叫び声がした。
「おい、奴が来たぞ!!」
ネイオとジェフは一目散に二階席へ向かった。後方を見ると、海水が赤く染まっている部分がある。
それが移動してくるのだ。
「くそ・・・回復の早い・・・」
そうは言ったものの、スピードは遅かった。傷が堪えているのは確かだ。
「よし、島に突っ込んだら一目散に逃げよう・・・」
船がだんだんスピードを落としていた。
ネイオはアフタショットに指示をした。
無茶なのは分かっている・・・。
「アフタショット・・・砂浜に乗り上げて、浸水防止だ・・・そして乗り上げたら、全て機能停止させて・・・お前も逃げろ・・・分かったな」
ネイオは熟練の隊員の様にはなしかけた。アフタショットはうなずく。
「島が近づいているぞ!」
カナリーが叫んでいるのが聞こえた。
しかし、アフタショットは砂浜に向かって一直線だ。
「ベルトを忘れずに!」
スコットは誰ともなしに叫んだ。
「セイヤー!」
アフタショットが意味もわからず叫ぶと、船は島の砂浜に乗り上げた。
船はかなりの衝撃が加えられた。
「うわ!」
スコットが叫んだ。そして座席に激突する。
・・・・・・・・・・・・・・・・・静寂が訪れた。それをスコットが破る。
「・・・てて、大丈夫か」
床に転がっていたスコットは脇に倒れこむジムとジェフを起こした。
ネイオも起きている。
「・・・無事か・・・」
ネイオは確認をとったが、忘れていたことに気付いた。
「リッカーが来る・・・逃げろ」
ネイオが言うと間を置いて、自らの武器を持ちスコット、ジェフ、ジムは外へ出た。
「・・・アフタショットは?まさか・・・!」
緊迫した空気の中ネイオが操舵室の扉を開けようとした。
しかし、先に扉が開きネイオの方に向かってきた。
「あ、ごめん・・・ってネイオか。早く逃げよう」
「アフタショット・・・お前って奴は・・・」
スコットより性格憎めない奴、アフタショットだ。


カルロスたちは森の丁度、中心部にいた。
「どこだ・・・ここは?」
ミニが小さく話しかけるが、相手をするものはいない。
「ここは山とか川とかはねぇのかよ。一面平地で、草木ばっかじゃねぇか!たまに開けてるけど・・・」
ユーリがなげくそに言った。
そういったとき、急に林が途切れ、前の視界が開けた。
「お、なんだ?」
見ると建物があるではないか。
と、言っても「跡地」ではあるが。
「ボロッボロだな」
ミニが言って近づいていく。
「見ろ、結構広いぜ。何だったんだ?」
ミニは奥のほうまで歩いていくと、立ち止まった。
なにやら下を見ている。
「なんだ・・これ?」
ミニはしゃがみこむ。メンバー達はそこへ向かっていった。
「何を見つけたんだ・・・?」
カルロスはミニに問いかけるが、答える前に分かった。
地面に四角いプレートが張ってあった。
「さびているな・・・」
「当たり前だろ?」
ミニとエブリーがそんな会話をしている。
所々に鉄格子が埋め込まれている。
よく見ると、取っ手がついているのが分かった。
「これを持つんだな・・・よし、引くぞ!」
ユーリは思い切り引っ張ったが、それほど重くは無かった。
「下には・・・ん?」
カルロスはプレートの下の、四角い穴を見つめた。
穴の内面、側面の一つに梯子がついている。
「下に降りれる・・・」
カルロスが呟いた。
「下に降りる!?おい待てよ、何がいるのか分からないんだぜ!俺は・・・」
必死にエブリーは反論するが、ユアンが先に梯子を降りていくのを見て考えを変えた。
「むぅ・・・下に行けば、安全かもな・・・」
「よし、下に降りるか」
カルロスが静かに呟いた。


「カルローース!!」
ジェフの叫び声が、森中に響いた。
ネイオたちは船から逃げて、どんどん森へ入っていた。
「だめだ・・・返事が無い・・・」
「島は広い。だから、単に聞こえないだけだって」
スコットの場合、明るく呟いたのか、真面目につぶやいたのか分からない。
「あ、おいお前ら。無線を持ってないのか?」
ネイオが思い出したように聞いた。
「ああ・・・俺たちは何も持ってない・・・って、ああ!!思い出したよ!」
アフタショットがやけに大声で叫んだ。
そしてバッグから、携帯電話の少し大きくなった感じのものを取り出した。
「何だ、それ?」
スコットが覗き込みながらアフタショットに聞く。
「へへヘ、これでカルロスたちの居場所が分かる・・・」
「だから、なんだよ、それ?」
アフタショットは一つ間をおいて、語りだした。
「これは生物に反応するレーダーだ。半径数キロ・・・丁度この島くらいの範囲は生きているものが表示される」
アフタショットは説明下手だ。いまいち意味がわからない。
「あ、画面を見れば分かります・・・子の中心が俺たち。つまり現在地です。そして・・・えと・・・大きさ一メートル五十センチ以上と・・・よし、ほら、ここに緑色の奴が表示されているでしょ。これは一メートル五十センチ以上二m以下を表している」
「ってことは、人間か」
ネイオはひらめいたように言った。
「そのとーり」
しかしマップには緑色のほかに赤色があった。
「赤は三メートル以上。この上ない大きさの生き物をさす」
「これはリッカーか・・・」
赤色の奴は海の周辺でうろうろしている。
「これを見て逃げるorこれでカルロスたちを探す!一石二鳥だ!」
突然大きな声にアフタショットはなった。
そのときスコットは叫んだ。
「それを早く言えよ!」


「おお、こりゃまるで施設だな」
地下室に降り立ったカルロスたち。
内部は所々、地上から取り入れていれられている光のみで薄暗い。
そして、廊下もあり、部屋もあることが分かった。
「何の地下施設だ・・・?」
ユーリが独り言のように言う。
部屋はかなりたくさんあり、廊下はいろいろな方向に向かっている。
カルロスたちが降りたところには「2」とマークがしてあった。
恐らく第二出入り口ということだろう、とカルロスは判断していた。
割れた窓ガラス。中が丸見えである。
エブリーは興味心身で、ある部屋に入った。
なにやら電気コードがちぎられている。そして壁には引っかき痕がある。
エブリーは妙な恐怖心を覚えた。そしてその部屋から撤退した。
ミニと、ユーリは二人で座って休んでいた。ある一室で。
ミニは自分の大きなバッグの中から、数々の武器を取り出した。
それを体に装着する。
右腰にはマシンガン、右腰には強力なハンドガン、背中には珍しいショットガンを装着している。
「お前、武器愛好家か?」
「俺は武器には余念が無くてな・・・」
ミニは小型爆弾の状態を確認しながら、つぶやいた。
ユアンは廊下の傍らに座り込んだ。荷物が重いのである。
はるか頭上にある地上の光を取り入れるための鉄格子を眺めた。
すると、その鉄格子の上を何かが猛スピードで通過した。
「? なんだ?」
ユアンは鉄格子を眺めた。
すると、再び何かが通過した。
ユアンは鉄格子を眺めていると、鉄格子のうえで何かが静止した。
何かの正体はすぐ分かった。
そう、リッカー・・・。
ユアンは鉄格子の上のリッカーと数秒見つめあった。
しかし、ユアンが体を動かすと同時に、リッカーは鉄格子を破ろうとしてきた。
ガツン!ガツン!・・・鈍い音が響く。
その音に、カルロス、エブリーが気付いた。
駆け寄ってきて腰を抜かしているユアンを強引に持ち上げる。
「ユアン、逃げるぞ!」
エブリーがそういうとリッカーは天井の鉄格子を破った。
先ほどの奴より、ずいぶん小柄だ。しかし、能力的にあまり変わっていない・・・と思う。
スピードはやっぱり変わらなかった。
3人の前に天井にあった鉄格子が落下してくるのを見て、3人は走り出した。
その直後に小柄なリッカーも落下してくる。
突き当りまで来て、T字路状態のところへ来た。
前方は部屋があり、薄いガラスで仕切られている。
カルロスは後ろを確認・・・しかし、その時にはすぐそこにリッカーが迫っていた。
反応しようとしたが間に合わず、リッカーに体当たりされたカルロスはガラスに突っ込んで、部屋の中に転がり込んだ。
「カルロス!」
エブリーは銃を取り出して、部屋を確認した。
勢いでリッカーが奥のほうに転がっていた。
今がチャンス・・・
カルロスは悟り、エブリーの方に駆け出した。
マシンガンでリッカーに数発ぶち込む。カルロスはエブリーとユアンの元へ戻った。
「危なかったな」
3人は出口を目指した。
ミニとユーリは、これほどの戦いを聞き、銃を構えていた。
「どこだ・・・?」
「廊下の向こう側だな・・・」
ユーリとミニは慎重に歩を進める。
とある部屋に入るが何もない。
遠くで3人の声が聞こえるが、迷路のような地下施設ではどこにいるか分からなかった。
「くそ・・・皆はどこに・・・・」
ミニがそこまで言った時、彼の愛銃に液体がこぼれた。
「何だ?水滴が・・・」
ユーリもそれに気づき上を見た。
すると、天井にはあのリッカーが張り付いていて、今にも狙わんとばかりに下を出していたのだ。
「うわぁっ」
ユーリは文字通り、尻餅をついた。
その上にリッカーが落下してきて彼に覆い被さる。
「くそ!」
ミニはマシンガンを連射するがリッカーの後ろ足で吹き飛ばされた。
リッカーはユーリの首筋に噛み付いた。
ミニはユーリの哀れな声を聞いた直後に何とか立ち上がって、迷路のような廊下をすすんだ。
すると角から先ほどのリッカーが出現した。
「くたばりやがれぇ!」
ミニは、手にしているマシンガンを連射すると、床を這うリッカーめがけてぶち込んだ。
小さいリッカーなので、少しはひるんだようだ。
ミニは巨体に似合わず、軽快なステップで逃げ出した。
その頃カルロス達も同様に逃げていた。
「前に十字路みたいに分かれているのがある・・・曲がるか!?」
エブリーがカルロスに尋ねる。
「曲がろう・・・前方に言っても何もないだろ・・・」
そう言ったとき。
リッカーが、走る三人の丁度中央を飛び掛った。
おかげでユアンは前方に飛ばされ、エブリーとカルロスはそれぞれ左右の通路に分かれた。
リッカーは丁度中央で転んでいる。
「皆、頑張って逃げろ!」
カルロスは一人で逃げた。
もちろん、合流は無理だ。リッカーが邪魔で。仕方なく、それぞれの通路を走った。
ミニも一人で逃げていた。
また、いつやってくるか分からない・・・そのとき、壁が正面に見えた。
「くそ・・・」
そう思って諦めるが、よく見ると・・・
「扉だ・・・!」
「7」と表記された扉を期待を持って開けるが、すぐ正面に壁があった。
しかし、ただの壁ではない。梯子付だ。
「ふ~・・・これで助かった」
が、しかしミニは安心感のため、リッカーというものを忘れていた。
梯子を数段上った瞬間・・・
―だがぁぁ!―
ミニの叫ぶ声が響く。
足をリッカーの驚異的な爪に引っ掛かれていたのだ。
「くそ・・・コイツ・・・」
といって持ち前の強力なハンドガンで、足元のリッカーを撃ちまくった。
血が飛び散った。
リッカーは梯子の場から退散して、今ミニが逃げてきた通路を戻っていった。
ミニは苦痛に耐えつつ、梯子を上った。


ドドドドド――
逃げるために放置したチェーンガンをエブリーは再び手にして乱射する。
リッカーはエブリーを追ってきたのだ。
「くそやろうが・・・」
エブリーは手榴弾の栓を抜いた。
―確か十秒で爆発だったはずだ。エブリーは手榴弾を投げる。
が、リッカーはそれを気にもしなかった。無情にも床に手榴弾が転がる。
エブリーは走るスピードを上げた。
しかし、気付いた。
目の前を見ると行き止まりではないか。
しかし、左右に道があった。―逃げられる・・・―
エブリーは右に行った。
すると、カルロスとユアンが「3」表記の扉を開けて、梯子を登る所だったのである。
「待ってくれー!」
エブリーの叫び声にカルロスが気付いた。
「おい、エブリーだ。こっちだ、エブリー!」
「こっちだ!」
カルロスとユアンは揃って手を振った。
そのとたん、エブリーが曲がってきた通路で爆発が起きた。
リッカーは爆風で壁にぶつかる。
「いまだ!エブリー、早く!!」
ユアンが叫ぶ。
カルロスは既に梯子を登っていた。
カルロスは梯子を限界まで登ると、閉じられているプレートを強引に退かした。
そして光が降り注いだ。
カルロスは身を上げると、梯子を登ってくるユアンに手を伸ばした。
ユアンがカルロスに手をかけた。
その時、エブリーがようやく辿り着いた。
ユアンはカルロスの助けのもと、ようやくあがった。
あとはエブリーだけだ・・・
カルロスは梯子、下を覗き込んだ。エブリーが登ってきている。
「よし、もう少しだ・・・」
そういったとき、梯子の下にリッカーが見えた。
「エブリー!」
エブリーは、カルロスの叫び声に気付き、下を見た。
しかしリッカーは足元を咥えると思い切り引っ張った。
何とか梯子の一つの棒をつかんで、落下せずにすんだ。
「エブリー、手をつかめ!」
上からカルロスが手を伸ばしている。
しかし、あと段が一段分ほどの距離がある。
「届かない!」
「手を伸ばせ!」
「ダメだ・・・届かない」
「伸ばすんだ・・・!」
「届かないぞ!カルロス!!・・・」
そうエブリーが叫ぶと同時に、エブリーの手は滑り落ち、落下した。
そして、勢いよくリッカーに引きずられ、上からは見えなくなった。
エブリーの悲痛な声が聞こえた気がしたが、カルロスは黙ってプレートを被せた。

ミニは一人、カルロスたちとはかなり離れた出口に出ていた。
「くそやろ・・・」
ミニは噛まれた足をかばうように歩いていたが、立つ力が無くなった。
そして、ほふく前進で進み始めた。
彼が出た出口の場所は、開けていた建物の周りに比べ、木々が多い。
どうやら、中心部に近いようだ。
出口は井戸のように盛り上がっている。その中から出てきたわけだ。
ミニはなにやらぼやき続けていた。
「くそ・・・あいつめ・・・次あったら・・・ぶっ殺す・・・」
そういって自慢の連射銃を抜いた。
そして立ち上がった・・・その時。
背後から何かが飛び掛ってきた。リッカーだ。
「ぐはぁ!」
ミニの体は既にズタボロだ。
腹を噛まれて、吐血した。しかし、そんなの感じなくなってきた。
痛みというものを・・・感じなくなっていたのだ。
ミニは連射銃をリッカーに向けて放った。
小型のリッカーは力なく倒れこんだ。
その瞬間にハンドガンは弾切れを起こした。
「ははは・・・ざまぁ、見やがれ」
ミニはズタボロの体をかばうようにして倒れこんだ。
しかし、倒れこんだリッカーはまた起き上がった。
ミニは背中のショットガンを構えた。すぐさまリッカーは飛び掛って、彼の首筋に噛みつく。
しかし、ミニはリロードをしたショットガンをリッカーに向けた。
そして放った。
撃ち込んだ瞬間、リッカーの頭は大破した。
しかし、同時に何かが自身の体に大量に流れ込んだのを感じた。
もう死んだも同然だった。
何かが流れ込んだのを感じてから、もう一回リロードをした。
しかし、そのまま力尽きて倒れこんだ。
うつ伏せで、右手を上方に、その近くにはマシンガン、腰にハンドガンを装備している。哀れだ。
ミニ・ティン、人間としては死んだ。あくまで、人間としては・・・




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