日常・・・

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第六章 【怪物がなんだ!】


確かにリッカーとゾンビを足したような感じである。
リッカーアンデットは憎い顔で鼻を鳴らしながらその部屋を後にした。



「スコット、左に付け。カルロス、最後尾を頼む。ユアンとクロウは一列に。エージェン、前に来い。
キットとヘブリックは皆に取り囲まれる感じで中心へ、サーフも中心に寄せて。
俺が先頭で行く。きっちりと固めてくれ。行くぞ」
「おお、初めてだな~、こんなに特殊部隊らしく動くネイオは」
ネイオの的確な指示が飛ぶ中、スコットの冗談話が浮く。
メンバー達はネイオの指示通りに固まると事務室をレベル2を後にする。
レベル3で、ふとスコットが話し出した。
「それより・・・さっき電気消えてからそのままだけど・・・俺らだけで電気をつけるなんてことは出来ないのか?
サーフ、そんな部屋内か調べてみてくれよ」
サーフは手持ちの電子地図で施設内を検索し始めた。
「一応このレベルに電気室ってのがある・・・そこに行けば、電気配線など修理必要箇所が
分かると思う。行くかどうかは、ネイオに任せるが・・・」
サーフはチラッとネイオの方を見た。
「よし、そこに行く。サーフ、案内してくれ」
ネイオは徐々に、まともな班長になってきたように感じ取れた。




ネイオたちが戦っている丁度反対側、日本の首都東京。
アフタショットは走り回っていた。人数は少ないが、まだまだ大量の人がいる。
探している相手、ジェシーはなかなか見つからない。
そもそもこんな広い中、一人の人間を探すということが無理難題なのだが。
もう夜遅いので、既に脱出しているかもしれない。
アフタショットは携帯電話を取り出す。
昨夜、番号を教えてくれたのだが、登録するのを忘れていて直感でプッシュする。
しかし、出る相手はまったく違っている。
今回もまったく別人の男性にかかった。
「ちくしょう、使えねえ」
携帯電話をしまうと同時に、今度は着信音が響いた。
アフタショットは慌てて取り出すと、とりあえず通話ボタンを押す。
「もしもし」
『あ、アフタショットさん・・・やっとかかった』
ジェシーだ。
「ジェシー!お前どこにいる。脱出したのか?」
『いや、脱出し損ねて・・・今・・・え~と・・・どこだっけな』
電話の向こうで、ジェシーが誰かに質問している様子が分かった。
『あ、港区。港区の・・・デパート。一番上の階にいて・・・でかい塔が見える』
「そこにいろ。俺が今から行く。動くなよ!」
アフタショットは携帯をポケットにしまうと近くの自衛隊員に話しかけた。
この自衛隊員。先ほどの内田である。
もちろん日本語で。
「うんと・・・港区は・・・どこにアル?」
「港区ならここから車で三十分くらい・・・何故です?」
「そこに取り残サレテイル人がいる。救助に向かいたい」
日本語の勉強をした成果が出たようだ。
しかし、自衛隊員の対応は冷たいものだった。
「今からリッカーを退治するため、アメリカから特殊部隊員が派遣されてきます。
その人たちに任せるほうが懸命では?」
「特殊部隊か、いい響きだ」
アフタショットは英語で一言皮肉る。
「分かったなら近くのゲートまで行ってください。早くしないと、リッカーはどこにいるか・・・」
すると、自衛隊員が持っている無線機から声が聞こえた。
この無線機、緊急対策用で配られたものだ。
「どうした山井。何かあったのか?」
『内田一尉。リッカーの現在地が掴めました』
「どこだ」
『港区です』
アフタショットは固まった。そして怒鳴り声を上げた。
「言わんこっちゃない!大尉殿!港区にリッカーがいる。はやく残された人たちの救助・・・」
「うるさい!民間人ははやく避難してください!」
「リッカーのことを何も知らないくせして!日本を守る日本軍だろ!」
日本軍ではなく自衛隊なのだが細かいことは気にせずに、すかさず口論になった。
周りの者たちは、そのまま素通りしていく。
「じゃあ、あなたはリッカーのことを知っているのですか!?」
「俺はリッカーの島から生還した男だぞ!アフタショットだ!」
内田は脳内で「アフタショット」を検索にかけた。
(そういえば山井の持っていたリッカーからの生存者の中にアフタショットがいたはずだ・・・
もしかして、同一人物なのか?だったら、重要人物になるな・・・)
内田は聞いてみた。
「もしかして、2006年の島での事件の時生き残った・・・」
「YES」
こういうときは英語になった。
「だったら本部まで来て下さい。お話があります」
内田に連れられ、アフタショットは何処かに連れて行かれた。




「ここが電気室だ」
目の前には普通の扉がある。
セキュリティは甘そうに見える。
「とりあえず入ろうぜ」
エージェンがいいながら銃を装填する。
早速スコットがドアノブに手をかけた。すると、いとも簡単に扉が開いた。
「お、これは・・・俺は天才ということ・・・」
ネイオに後頭部を突かれ、スコットは後退するとネイオが前に出てきて部屋に入る。
結構狭く、壁に面している方は機械類がすらっと並んでいる。
配線コードやコントロールパネルまで様々である。
「機械のにおいがするぜ」
スコットが格好つけて語る。全然格好良くないが。
「とりあえずサーフ。故障箇所を見つけてくれ。俺達は・・・何かしてる」
ネイオは銃をしまいこむと、別の機械をスコットと共に見つめだした。
「俺はユアンと一緒に入り口を見張る。いつリッカーが来るか分からんからな」
カルロスはユアンを連れて入り口の前に立つ。
カルロスはユアンを見た。
いつになく無口だし、何処か疲れているようにも見える。
「ユアン、大丈夫か?」
「ん?あ、ああ大丈夫だ。少し疲れただけで・・・」
ユアンはまたもや嘘の報告をした。
噛まれていることでどれだけ皆を苦しめるか分かっていた。
しかし、いまさら告白するのは気が引ける。
ユアンは自分の右足を見つめた。

「どこも故障してないって」
サーフと共に故障箇所を見つける作業をしていたキットが、近くのネイオに言った。
「何?嘘だろ」
スコットが先に言うと、ネイオと共にサーフに駆け寄る。
すかさずサーフが語りだした。
「モニターで全区画の配線を見たがどこも破損はしていなかった。だから損傷で電気がつかなくなったわけじゃないと思うんだ。
多分考えられるのはブレーカーが落ちたか・・・だと思う」
サーフは隣のパネルを強引に叩き割った。
「わ!お前・・・割るなら割るといってくれよ」
スコットがやけに驚く。
サーフがじっくりと顔を近づけ分析を始める。
といっても現れたブレーカーを一つずつチェックしているだけだが。
「やっぱり・・・施設主電源が落とされてる。だから施設の電気がつかなかったんだ」
そういいながら、大きめのブレーカーを上に押し上げた。
するとバチンという音が響き、部屋に明かりがともった。
「ようやくついたな」
銃を構えていたキットが言う。
「よし、とっととレベル5まで行ってマックスたちの救出に向かおうぜ」
ネイオはそういって銃を構えた。
すると手前にいるエージェンがネイオの奥を見つめていた。
「ん?エージェン?何かある?」
「いや、部屋の奥に扉が・・・」
エージェンの指すほうは部屋の一番奥にもかかわらず、扉が見えた。
物陰になっているが確認はできた。
「何で奥に扉があるんだ?」
「多分なんか機械の部屋とかじゃないか?」
スコットが呟いたのをヘブリックが返した。
「開けてみようぜ」
エージェンが興味半分で扉の前の器材をどかし始めた。
サーフは小型地図でその場所を検索していた。
ついにエージェンは器材をどかし終えた。
「エージェン、やめたほうがいいぞ」
入り口の方でカルロスの声が飛ぶ。
しかしエージェンは扉を開けた。
「どうせ機械があってだな・・・」
そうエージェンがいった途端、ついさっきまで目に前にいたはずのエージェンが
ネイオたちの前から忽然と姿を消したのだ。
「エージェン!?」
一斉に扉に駆け寄った。
すると扉の先に通路はなく、数メートルしたの床に落下するようになっていたのだ。
エージェンは落下していた。
「エージェン!」
「た・・・助けてくれ!」
エージェンは叫んだ。
しかし、エージェンの後方にはのっしりと構えた恐竜が待っていたのだ。
そう、先ほど恐竜育成室に入ったときに数メートル上の壁に張り付くようになっていた扉は
上の階の部屋と直通していたのだ。
「助けてくれよ!」
エージェンは叫ぶが三メートル以上は高さがある。
上のネイオたちが助けるには無理があった。
エージェンが叫ぶのにおびき寄せられたか、恐竜はエージェンに近づいてきた。
「クソ!」
ネイオはすかさずマシンガンを取り出して恐竜めがけて放った。
しかしあっという間にネイオの真下にいたはずのエージェンに覆い被さるように
恐竜が姿を現し、エージェンを見えなくした。
もはやネイオたち、上の扉から見えるのは恐竜の頭だけとなった。
ネイオを押しやり、クロウが少し大きめの銃で恐竜の頭に弾を浴びせる。
すると、恐竜は頭を上げ、目の前にいるネイオたちに向かって一吼えした。
「くっ!」
クロウが扉を閉めて部屋の入り口の方へ後退する。
すると突如、恐竜が細長い口で扉をぶち壊し、部屋の中に押し込んできた。
「早く!」
入り口のユアンが叫んだので、一同は入り口の方へ逃げ込む。
最後にユアンが電気室の扉を閉めると、ネイオ班のメンバー達は一息ついた。




レベル1までアローンは来ていた。
何とか脱出をするためだ。広いホールまではたどり着けた。
「ここまで着たら、あと少しだな」
その途端、アローンの背筋は凍りついた。
ホールの壁に、四匹の小さなリッカーが張り付いていたからだ。
「・・・ここでか」
アローンはゆっくりと後退した。
リッカーは脳が小さいので、獲物は目でしか追えない事を開発者の彼はよく知っていた。
すると、一匹のリッカーが、その小さい目でアローンを睨んだ。
アローンは死んだふりの如くあえて固まる。
そのリッカーは壁から飛び降りると、アローンのほうへまっすぐ歩んできた。
「・・・く・・・・・・」
アローンはリッカーが一メートル以内に近づいても動かないよう努力した。
リッカーの息が顔にかかる。
さりげなく右手を肩にかけている大型マシンガンにかけた。
相変わらずリッカーとの睨み合いが続いている。
その時、彼の腰に備えてあった衛星電話のコールが鳴り響いた。
「くっ・・・」
それに驚いたリッカーがアローンを威嚇し、大きな口を開け長い舌を向けた。
突如激しい銃声が響きアローンの目の前のリッカーがしぶきを上げ吹き飛んだ。
アローンは大型マシンガンで近くのリッカーの腹を撃つと、走ってリッカーから逃れる。
結局施設のほうへ戻るが、無理に脱出しようとして死ぬよりマシである。
リッカーも追ってくるがアローンのほうがわずかに早く近くの扉に辿り着いた。
アローンは勢いに任せ扉を閉める。
「はぁ・・・はぁ・・・何とか・・・・・・でもどうにかしないとな・・・」
アローンは扉の向こうの部屋で小さく笑いながら呟いた。
再び衛星電話のコールが響く。アローンは衛星電話を持つと、通話ボタンを押す。
『おい、そろそろ脱出できたか?』
「なに、ちょっと手こずっているが・・・」
そこまで言って、アローンの笑みは消えた。
「あぁぁ!!」
数秒後、扉を突き破って血まみれのアローンと「リッカーアンデット」がもつれながら出てきた。
「クソやろ・・・」
アローンの実験は成功した。
リッカーアンデットは恐ろしく、凶暴な生物になっていたから・・・



特殊部隊本部、最高司令官室にはソニックが一人、デスクに座って何かを待っていた。
すると電話のベルが鳴り響き、ソニックはすぐさま受話器を取る。
「ソニックだ」
直接かけてくるのは近い階位の者か身内しかいないので砕けて応答する。
しかし今回ばかしは気軽に話す相手ではなかった。
『私ロス市警のアンサー・ドアーと申します。アン・ソニック特殊部隊最高司令官ですか?』
アンサー・ドアー・・・リッカーの事を調べていた壮年警部補である。
「そうだ。警察か。直接ここにかけるということは何か重大なことがあるようだな。聞こう」
『いや、電話料金もかかるのであまり長い話はしません。直接あってお話します』
ドアーはいたって冷静に話してくる。
ソニックも冷静に返す。
「ああ、分かった。で、いつだ。明日か、明後日か」
『なるべく早く。三十分後に』
「さ、三十分!それは困る、私にも用件が・・・」
『いや、既に皆さんには許可済みです。では』
こんな一方的な警官はいない。
特殊部隊本部に警察の手が忍び寄ってきた。実際にはソニックに・・・だが・・・・・・
ソニックはその電話で、別の番号をプッシュした。
しかし、相手はなかなか出ない。
「・・・くそ、どうなってるんだ、あいつ・・・」
ソニックは受話器を置くと、再びプッシュする。今度はガチャという音がした。
焦ったので相手の声を待たずに自分から質問する。
「おい、そろそろ脱出できたか?」
『何、ちょっと手こずっているが・・・・・・あぁぁ!!!』
相手の男の叫び声を聞いて、ソニックは受話器から顔を離した。
「おい!おい!大丈夫か!?」
ソニックは叫ぶ。相手側からはなにやらもみ合う音と、電話が放り出されたのか衝撃音しか聞こえない。
それを聞いたソニックは受話器を置いた。
「馬鹿じゃないのか・・・」
ソニックは椅子に腰掛けた。今後の対応を考えるためだ・・・




一方リッカーがいるといわれている東京都港区・・・
その区内のデパートにジェシーは隠れている。
「おい、見回りはどうした」
ジェシーは流暢な日本語で近くの日本人に話しかけた。
相手の日本人は二十歳ほどの年齢でイケメンと呼ぶのにふさわしい顔だった。
「ああ、めがねの人が一階で巡回中だ」
「日本でこんな惨事が起きるなんて・・・夢にも思わなかった」
若い男が話している脇で、四十過ぎあたりでスーツ姿の男が口を挟んだ。
このデパートには運悪く逃げ遅れて、このデパートに入った者たちが三十人ほどいる。
ほとんどが玩具やら本が配置されている六階に身を隠しているが、順番で見回りに行く者と
管理室で監視カメラを使い異常があったら報告する係がいる。
ジェシーは六階で身を隠している大勢の人たちの中にいる。
そのときお馴染みのチャイムが鳴り、デパートのスピーカーが響いた。
『緊急事態、緊急事態。正面入り口の監視カメラが、侵入してくるリッカーを捉えた!
皆、攻撃できるものは攻撃、逃げるものは逃げろ!』
「嘘だろ、おい!」
「何でよりによってこのデパートに入って来るんだ!」
ジェシーとスーツの男が次々に叫んだ。
「よし、作戦通りやれ。散れ!」
先ほどのイケメン男が他の者たちに命令を飛ばす。
『大変だ。巡回係が襲われたぞ・・・気をつけてくれ』
スピーカーでは慌てた声が響く。
ジェシーは本棚の上に飛び乗った。
すると大きな窓ガラスの向こうで、ヘリコプターが飛行しているのが見えた。


「おいおい、どこダ?変なとコロだな」
内田にアフタショットは変なところ、リッカー対策本部に連れてこられた。
「あれ、誰も居ないぞ」
内田は扉を開くとそう呟き、また別のところへと移動した。
人でにぎわうゲート付近の監視所である。
「おーい山井」
口に手を当て内田は叫んだ。
すると山井がそそくさとやって来た。
「はい・・・って、誰です。その人」
山井はアフタショットを指差し、内田に尋ねた。
「あ、これはリッカーの襲撃から生き残ったアフタショットさんだ。
これから特殊部隊が到着するだろ。リッカーのことを詳しく教えてもらうために連れてきた」
「チョ、そんな話し聞いてない・・・」
アフタショットは反論しようとしたがヘリコプターの爆音が言葉をさえぎった。
輸送機方のヘリで近くの広場に着陸した。
「こっち」
山井が内田とアフタショットを手招きで誘う。
辿り着くと輸送機の中から六人ばかしの兵士が出て来た。
見たことある制服、あれはアメリカ特殊部隊・・・。
リーダー格の男が前に出てきてうちだ、山井と握手をし、アフタショットの前に来た。
「君は・・・どういう関係かな?日本と」
リーダー格の男は質問を吹きかけてきた。
「俺?俺はアフタショット。偶然ここに来たんだ。第二回リッカー襲撃の生き残りだ」
「ほほぉ・・・」
リーダー格の男は軽く鼻を鳴らす。
「私はこの一個小隊を率いているトリート・コルトンだ。コルトン少佐」
「コルトン?」
何故か笑うアフタショットに山寺が尋ねた。
「コルトンって名前、何か聞き覚えでも?」
「い~や。べつにぃ」
「名前なんてどうでもいいな。アフタショットと御ふた方がリッカー殺しのお供かな?」
コルトンは内田、山井、アフタショットを順に見ながら言った。
「僕が同行するものです。My name is・・・」
山井は流暢な英語でコルトンに告げた。
「俺も行くぜ。カルロスたちが頑張ってるんだ。俺だけ脱出してたらダメだろ」
「決まったな。では山井とアフタショット。ヘリに乗れ。今からリッカーの元へ向かう」




施設のレベル5で助けを待っているマックスたちは狭い部屋に隠れていた。
マックスたちの班で生き残っているのはマックス、ルーク、スパン、G.E.のみ。
「おいおい、ネイオたち遅くは無いか?」
G.E.が呟いた。
皆、疲れがたまっていてほとんど無口である。
「もう少しで来るだろう。あいつらの事だから、きっとどこかで・・・」
マックスがそういったとき、不意に扉が揺れた。
ものすごい勢いで揺れる。いや、震えている。
「何だ?」
「誰だ!?ネイオか!?」
マックスが尋ねるがとてもそうとは思えなかった。
「リッカーだろ・・・下がろうぜ」
ガムをはき捨て、ルークは軽マシンガンを構える。
マックスはかなり大きめのマシンガンを構えている。
次の瞬間、扉が突き破られ、大柄なリッカーが姿を現した。
「逃げろ!」
マックスが部屋奥の扉まで駆け寄り、そこの扉を開けた。
リッカーは入り口から奥の扉まですごいスピードで駆け寄り、扉めがけて体当たりをした。
その衝撃で、最後に扉を閉めたスパンが吹き飛ばされる。
「わ!」
飛ばされたスパンが着地したところは、心なしか水でぬれていた。
スパンは水で濡れた頭を起こし、確認をした。
「スパン、大丈夫か?」
G.E.が駆け寄ってくる。
スパンは頭に手を当て、濡れていると確認し、その手を目の前に持ってきた。
すると、水にしては妙に青いではないか。
「これは・・・?」
右手が震えだすと同時にスパンが呟いた。
マックスは確認をした。
「それは・・・恐らく・・・」
マックスが返答に困っていたところをルークが口を挟んだ。
「書いてあるけどそれはリッカーの元となるLウイルスだ・・・でも、大丈夫だろう。
直接からだの内部に入らないと感染は・・・」
ルークが言い終わらないうちにスパンは叫びだした。
「わぁぁぁぁ!!!」
パニックである。
スパンはパニックを起こし、右手をぐるぐる回しながら、子供の如く駆け回った。
「落ち着けスパン・・・」
マックスが押さえ込むが、スパンにはじかれ倒れこんだ。
そしてパニックで自分自身を忘れたスパンはなんと、部屋の扉に手をかけた。
「待て!落ち着け!そこはダメだ!!」
マックスが叫ぶが遅かった。
なんてことかスパンは扉を開けてしまったのである。
もちろんそこにはリッカーが待ち受けていた。
スパンはパニックながら、リッカーに突っ込んでいった。
リッカーはそれをものともせず、背中から咥えるとスパンを持ち上げた。
ルークとG.E.は同時に扉に駆け寄り閉めると、二重鍵をかけた。
「・・・あの馬鹿やろう」
起き上がり、口元をさすりながらマックスは言った。
「で、どうする・・・?リッカーはいつか扉を突き破るぜ」
G.E.が二人にきく。
ルークはガムを口の中に含んで、考えた。
すると、天井を見て良い案が浮かんだ。
「ほら、映画とかだと天井の通気孔とかを通って脱出できるだろ。俺達だって・・・」
近くの机を持ってきてそれに乗る。
「やれないことも無いぜ」
ルークは天井のパネルを剥ぎ取った。
「映画俳優が出来るなら・・・」
マックスとG.E.を見直す。
「俺達にだって出来る」
ルークは自信たっぷりに語った。


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