2002/03/20
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 9篇中5編が昨日の岩波文庫版と重なっている短編集。
 おかしい。面白い。こんなはずじゃなかったのに。「鱗雲」「バラルダ物語」「月あかり」にはけちを付ける理由がない。
 酒見賢一の「後宮小説」では、歴史上で実際にあった出来事っぽい話をいかにも本当らしく書いていて、「これは嘘なはずなんだけど」「いやこの様子ではほんとうの」「なんだ何から何まで嘘か」という反応の流れがあった。
 牧野信一の場合、彼が出発した自然主義的な文章で書きながら、世界はまったくそのようであるはずがないというような内容のことを書いている。
 解説から


  牧野信一は、「経験などというものは途方もなくツマラナく、創作の要は、結局おのれの『ピグメリアン』を育てるより他に希望はない」と語った。


 ピグメリアンの意味がちょっと分からないが、まぎれもなく現実の経験のことを書いていた「父親小説」の作者とは思えないことを言っている。もちろんこのようなことを言っていたからといって、まったく経験を小説に反映させなかったということはあるまい。しかし、そう言い切りたいほどに、経験から遊離したものを、書きたかったのであり、書いたのであろう。そこに限界を感じて自殺したのかもしれない。
 昨日私がいいと書いた「天狗洞食客記」について梅崎春生がこう書いている。


 牧野の自殺した昭和十一年、当時大学生だった梅崎春生は、彼の日記にこう記した。「思い起す千古の傑作、牧野信一『天ぐどう食客記』」。

牧野信一「バラルダ物語」(福武文庫 在庫切れ)





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Last updated  2002/03/20 02:11:19 PM
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