2003/04/22
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 この場合は、殺されるときも不敵な嗤いを浮かべているというだけだけれども、僕は不敵な嗤い以上にもっと立派な言葉を言って、「宇宙よ、こうだ」と言ったら、宇宙はがっくりきて、「まいった」というわけです。


 私は「不完全な読み手」である。作者の言いたいことをうまく読みとっていたことなどほとんどない。ならば「完全な読み手」とは何か。作者が作品を通じてAということを伝えたいと思うその思いをそのまま感じ取ることの出来るのがそうか。しかし作者と読者のA=Aが正確にいつも同じであるならば様々な評論も論議もなく、味気ないものになってしまうだろう。第一作者自身がいつもいつも完全に表現したいことを表現出来るとは限らない。Aと伝えたかったはずの作品がA’になり、A’’になり、A’’’になり・・・・・・●や□になったりもする。それを読者がどう受けとるか。A’程度ならいいがB’’や△や何が何だか分からないものになってしまうこともある。しかしその誤読に何も意味がないだろうか。そうではない。はっきりとA=Aでないからこそ楽しめること、感じる多くのことがある。学ぶことすら。
・現代文学における現実への絶望について
・私自身が感じ続けてきた自同律の不快
・『死霊』読書時における空間設定
 いろいろ書こうとしたが一つもまとまらなかった。一番上は大ざっぱな推論に過ぎず、真ん中は自分話、一番下のはでたらめだ。その一例↓
 現代文学の問題という、書いただけで胸がむかつく言葉について考えてみた。かつて在って今は無いものに対して、今もあるしかつても在ったように絶望していることがそれだ。かつて戦争があった。それは多くの経験を残した。物を書くことに決めた人にとってそれは消そうにも消せない傷跡でもあり、思い出でも、書くよすがでもあった。直接戦争を知らなくても、激動する時代があった。激情した空気があった。もしくはあると信じられていた、信じこんでいた。しかし今現在の比較的若い世代にはそのような経験はない。そしてそのまま書いてもあまり面白くない現在に辟易して現実から遊離した作品が生まれることになり、そういったものは、同じような絶望を感じ続けてきた先人たちの残した作品を知っている読者には問題なく受け入れられるが、そうでない人には読みにくい、意味がないものとして映ることになる。その繰返しにより主に純文学と言われるジャンルは読者が減り続けてきた。
 しかしその現実的には意味のない作品は無価値であるかというとそうでもない。何らかの感情を読者に呼び起こし、書かれている思想に共感し、人によっては人生の指針にしたり、また学問にしてしまったりする。・・・・・・




 アンドロメダは、かつてはわれわれの銀河から一五〇万光年の距離といわれていたわけですが、いまは二一〇光年ぐらいだといわれているわけですよね。アンドロメダは双子星雲で、非常に遠くから見ると同じようなものが二つ並んでいるわけです。僕は病気が治ったときに、表に出てアンドロメダが見えるわkです。そうすると、一五〇万光年ということで、直径一〇万光年のわれわれの銀河を一五〇回くり返していけば向こうに到着するわけですよ。いまは二一回ということになったわけだ。二一回だけど、地球と月よりもこちのほうが近いんですよ。地球と月は、地球の直径を三十何回かくり返さないと到着できない。だから地球と月よりもアンドロメダと銀河のほうが近い兄弟ということで、僕の兄弟はアンドロメダにいる。「X埴谷」というのがここにいて、僕が見ているときは向こうからも見ている。僕が見ていると向こうからも同じように見ている。「宇宙の鏡」と同じで、僕が見ているということは、向こうからも見ているわけだ。「あっ、あそこの向こうの兄弟、あいつが考えている、いつか会えるかな」というようなことですよ。


 第五章の夢魔風に考えるならば「俺のことをおまえが考えた時、その思考という乗り物に乗って俺は・・・」ということだから、「埴谷雄高」と「X埴谷」とは既に出会っていてもおかしくはないのだけれど。やはりそれが実現出来るのは白い紙に創りだした宇宙の中でしかないのだけれど。


 だから、未出現宇宙、これはね、現実的な何かを使って書くということは大変だけれども、夢のまた夢で。しかし、その夢もまた夢が実際言うとほんとうなんだと読者に思わせなくちゃ駄目なんですよ、困ったことに。おまえのいま生きているこの現実の宇宙は、この夢の夢に比べたら万分の一、億分の一の価値しかないというふうに読者に思わせる。「ああ、ここに行きたいな」と思わせなくちゃだめ。思うでしょうか。僕がうまく書けば思うはずですよ。読者はふわーっと入っていって、「ああ、ここだよ。よかった。ああ、これ読んだらもう、死んでもいい」と、そこまで思わせなくちゃ、ほんとうは。



埴谷雄高「独白・死霊の世界」(NHK出版 現在取り扱い出来ません)






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Last updated  2003/04/22 12:15:59 AM
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