2005/03/02
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カテゴリ: 詩集感想
 退屈な詩集。
 萩原朔太郎に先立ち口語象徴詩を完成させ、死後編まれた詩集の序に朔太郎と北原白秋が長文を寄せたと言われても、内容が伴っていなければ文学史の中に表れる名前以上の意味はない。特に散文詩が、気に入った詩句が現れたら発展させ並列に繰り返すという、読み飛ばせと言っているような言葉の羅列が続いて、まともに読めるものが少なかった。。
 詩を作るのに向いた言葉だけで書かれているという印象を受ける。現代では使い古された、悪い詩の手本のような詩句だらけの詩。そんな中でも幾つかチェックした詩を読み直してみると、不思議とどれもゴチック的題材を扱ったもの、全体の中から見れば異色作ばかり。




陶器製のあをい鴉
なめらかな母韻をつつんでおそひくるあおがらす、
うまれたままの暖かさでお前はよろよろする。
嘴の大きい、眼のおほきい、わるだくみのありさうな青鴉、
この日和のしづかさを食べろ。


  白面鬼

あをい顔ぢやないか、
しろつぽいくすんだ顔をしてゐるぢやないか、
どうしたのだ、
どうしたのだ、
すきとほる霊魂の塔のうへでは、
めづらしく大鴉がないてゐる。
おまへの顔はしなびてゆくぢやないか、
冬の夜のばらの花のやうに、
まつくろにしをれてゆくぢやないか、
まつしろい顔の魔鬼よ、
どうしたのだ、
なみだぐむやうなさびしいおまへの顔は。
きいてごらん、
とほくで、
ふんすゐがあがる、
黄色いうめきをたてるふんすゐがある。


  骸骨は踊る

ぺき ぺき ぺき と
うすい どうんよりとした情景につれてをどる
いつぴきの しろい骸骨が、
ぬしの知れない ながい舌がふらりと花のやうにたれさがり
蕭蕭と風をあふるのだ。
ふくらみきつた夜の胴体のまんなかに
しろい ふにやふにやした骸骨は、
蛍のやうな魂を手にぶらさげて
きやらきやらと をどりまはるのだ。



 いつになればくどい詩句から離れた作風に変わるのかと期待しながら読み進めていたのに、どこまでも大手拓次は変わらなかった。解説を読むと、拓次が生涯に残した全2378詩篇の中から、232篇を精選して収めたとのこと。選ぶ作業の長さ苦しさを想うと、気軽に読んで「退屈だった」で済ますことに罪悪感を覚える。
 ちなみに一番好きなのは次の詩。





ちろ そろ  ちろそろ
そろ そろ そろ
そる そる そる
 ちろちろちろ
され され されされされされされ
びるびるびるびる びる



 ただ、この詩を読んで生じた好感も、『昼の時』『朝の時』『煙草の時』と、同じような書き方の詩が続くうちに冷めてしまった。


岩波文庫  1991年





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Last updated  2012/04/06 06:42:48 AM
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