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***『魔法の真矛ちゃん』***
「 魔法の真矛ちゃん」と呼ばれる少女がいた。
頭に「魔法」付けて呼ばれて喜ぶのは
一体いくつまでだろう。
何を隠そうこの真矛
花も恥らう14歳。
―1―
あたし、実夏。よろしく。
真矛の話を聞きたいんでしょ。
彼女とは、幼稚園の頃からの友達なの。
だからって彼女の事は誰よりも知っているってわけじゃないけど、
これでも一応、彼女の一番の理解者のつもりよ。
真矛は、中学生の今でこそ変人扱いされてるけど、
前からそうだったわけじゃない。
可愛くて、勉強も出来たし、思ったことはちゃんと言えて
それが嫌味にならない、
要するにみんなの人気者だったのよ。
以前の私たちは、真矛を中心にしていつも一緒に遊んでた。
私たちが一番盛り上がってたのが魔法ごっこ。
え?その話の前に、真矛のパパやママの事?
いいわよ。そうねぇ、
真矛のパパは、外交官でいつも留守なんだけど、
何度か会ったことはあるわ。
大通りの商店街を、車で信号待ちしているところとか
前の道を車で通るところとか。
でも、それって会ったんじゃなくて、見かけた、だよね。
ママのことも、本当はあまりよく知らないの。
だって、彼女がまだ四歳のクリスマスに、
列車事故に巻き込まれて死んじゃったんだって。
でも、死体が見つからなかったって。
何人もの人が、真矛のママが
駅の改札に向ったところを見たって言うし、
一緒にお買い物に出かけたお友達は、
その事故で亡くなっていたし、
電車に乗ったのは間違いないだろうってことになったんだって。
だけど真矛のパパは今でも、
奥さんがどこかで生きているって信じてるらしいよ。
そのあと、幾つもきた再婚話、写真も見ずに全部断ったんだって。
ま、みんなうちの親から聞いた話だけどね。
あんなにハンサムなのに勿体無いって、うちのママが言ってた。
真矛のママ、美人で有名だったらしいよ。
私は写真でしか見たことないけど、
きっと道ですれ違えば、だれでも思わず振り返るわね。
真矛はママ似なのよ。
それから真矛は、次の年の春、
「リカさん」ていう若いおばあちゃんに連れられて
私たちより一年遅れて、
ナメタケ幼稚園に来るようになったの。
目立ってたなぁ、彼女。
当事は誰も着てないようなゴージャスなレースが付いた、
まるでドレスのすそだけ短くしたみたいなワンピースとか、
袖が大きく膨らんだブラウスとか。
とにかく普通の幼稚園児が着る服じゃないわよね。
今で言うゴスロリとか多分そんな感じ。
まるで生きたお人形みたいだったわ。
子どもなんて単純だから、
最初は珍しがって、彼女をお姫様扱い。
すぐに飽きたけど。
みんな子どもながらに、住む世界が違うと思ったのか、
そのうち段々彼女に近寄らなくなって。
その頃の真矛は母親が亡くなって間もなかったせいか
あまり喋らない子で、
私もおとなしいほうだったから、
あ、今笑ったでしょ。その頃は今ほどお喋りじゃなかったの!
とにかく、その「リカさん」が
私を彼女の遊び友達にちょうど良いと思ったのかな、
うちのおばあちゃんよりは若そうなリカさんに誘われるままに、
家に遊びに行くことになったの。
お姫様みたいな彼女の住む家なんて、
そりゃあもう、興味津々でしょ?
お互いの家が近かったっていうのも良かったのね。
うちの親なんて、何だか喜んじゃって、
いつもよりいい洋服着せてくれて、
その日、真矛の家に遊びに行くときは
あたしもちょっとしたお姫様気分だったわ。
迎えに来てくれたリカさんに手を引かれて、
歩いていったの。
その土地は当時のあたしにとって、
暗くて怖い森、だった。
何だか怖いところに連れて行かれそうで、
リカさんの手を振り切って逃げちゃおうかと思ったくらい。
つないだ手が、汗ばんで滑りそうだったけど、
リカさんはそんなあたしの様子に気づかないのか
どんどん進んで、
とうとう森の入り口まで来てしまった。
(つづく) ( 次のお話へ )
魔法の真矛ちゃん(16)実夏 March 20, 2009
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