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【カーラ17】
魔法界王が、王の名の下、古き風習を守り通すことで、
現在の平安を維持してきたのは事実であり、
また何よりもそれを誇りとしている王であった。
ゆえに権利の象徴とも言うべき玉座崩壊は
計り知れないほど大きなダメージを王に与えていた。
あれ以来、宮殿の自室に閉じこもり、
女官に食事を運ばせるとき以外は、
誰とも会おうとはしなかった。
王は今、古きものから新しきものへと移り変わるのを予感し、
その心は騒ぎたて、
カーラの言い分をどうするべきかさえ
全く分からなくなっていたのだ。
久し振りに生じた心の迷いに、ついに耐えかねた王は、
数日ののち、回復したジイドたち三人の従者を従えると、
預言者セテのもとへ赴いたのであった。
而してそこでも、王の心に慰めはなく、
むしろ苦悩が大きくなるような答えが待っていた。
王女姫カーラは人間界の男との間に
女の子をもうける運命であると告げられた。、
しかも生まれてくる子には、
何か特別な事があるらしいともいうではないか。
その時父王は、天の御心に従って、
カーラの思うようにさせるよりほかは無いと
覚っていた。
せいぜい五年。人間界で言えば十五年以上になる計算だ。
セテの言うように、子をなし、育てれば、親の気持ちも分かってこよう。
その時迎えをやっても決して遅くは無い。
法殿から出てきた王が、そう心に決めて、
ジイドたちの準備したポーター気流に
身を任せていたときだった。
もう一つの風が、彼らの横をものすごい勢いで
すれ違っていった。
それは、同じ魔法を使えるものにしか見えない
金色の粉を後に残して、
宮殿とは反対方向へむかって行き、すぐに見えなくなった。
「うわッ!……危ないなあ、あんなに飛ばして。
誰でしょうね、全く」
年若い従者が言った。
「……あれはカーラだ……」
王は呆けたように言った。
その隣で、ジイドの顔も青ざめていた。
(つづく)
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