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こえめ
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何はさておき、このまま、お話しいきます。
【カーラ35】の2
カーラはその素肌を、オレンジ色の日差しにさらした。
「見て……」
そういう彼女の左胸、ちょうど心臓のある辺りに、
そのしるしはあった。
「……それは?!」
500ジゼル硬貨ほどの大きさの、一輪の黒いバラの花が
白く柔らかな肌の中で、
闇をたたえるがごとく、くっきりと浮かび上がっていた。
「これが、私に課された運命のしるしです。
リカム。あなたにだけは、
このことを知ってもらいたかったのです」
「姫様。私は、明日には記憶をなくす身です。
……それでも?」
カーラの声が高くなった。
「それでも!」
愁いを帯びたエメラルドの瞳が、夕焼けに染まって
不思議な色に輝いた。
「たとえ朝が来て、あなたが全てを忘れてしまっても!
せめて私の知っているリカムであるうちに、
伝えておきたい……」
その時カーラは、
ひとりの女性として、リカムの前に立っていた。
「姫様。風が出てまいりました」
リカムは床に落ちた服を拾い上げ、
カーラに着せ掛けた。
カーラはリカムに手伝ってもらい、服を着終えると
隅の作り付けのベンチに 腰掛けた。
リカムは他に場所がなかったので、
その小屋で唯一家具らしい小さな寝台に座った。
明日の朝はその上で、
新しい人間としてめざめるのだと思うと、
これが現実なのか夢なのか、
はっきりしない気持ちになった。
やがてカーラが、薄明かりの中で、静かに語り始めた。
「このあざは、三年前、お母様が亡くなった時から
徐々に色を現し始めました。
これはお母様にあったあざと、すっかり同じもの……」
「ラスティーヌ様と……」
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