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手相は人生の設計図。こえめです![]()
だって何となくそんな感じでしょ?
あ。なにこのギザギザ……。
でも、生き方で変わるんだってよ。よかったわねっ。私が(笑)
―真矛・告白― (14)
私は魔法をこの世界に蘇らせるために生きている……。
彩葉が魔法で液体の色を変えたその翌朝、
私は、階段のところで彼女に呼び止められた。
「あのぉ、昨日の実験の事だけど。あれ、真矛も......見た、よね?」
来た、と思った。私の中で何かが騒ぎ出し、心臓が大きく鳴りだした。
恐怖に似た気持ちが沸き起こり、その場から逃げ出したくなったが、
その時ふと、リカさんの胸に下がっている指輪が思い浮かんだ。
それに触れると不思議と落着く古い指輪だ。
気が付くといつの間にか私は、彩葉に向かってすらすらと話していた。
「じゃ、やっぱりそうだったのね? 私もビックリしたわ。
あれ、彩葉よね。すごいわ」
「えっ? まさか。わたしは真矛がやったのかと......」
「ううん、私にはあんなこと出来ないわ。あれは、彩葉よ」
違う、これは私じゃない……!
心の奥底に潜むモノが私にしゃべらせている、そう感じた。
その日山本は学校を休んでいたが、
私は彼に伝えなくてはならないことがあった。
伝える。何を?
でも私は心の奥底でそれを知っている、そう思うとまた恐怖が蘇るのだった。
放課後、私は裏に行かず下校し、
その足で山本の家へと向かった。
私の足取りは重く、足元のアスファルトが流れていくのを見ながら、
こんな役目など早く終わりにして、
リカさんの待つ家に帰りたいと思っていた。
山本病院という大きな看板の建物が見えてきた。
あの公園を曲がって建物の裏に回れば、そこに目指す山本の自宅がある。
ますます重くなった足を引きずるようにして、
人けのない公園の前を通り過ぎるとき、
突然声が聞こえたような気がして、体が凍りついた。
その声は二度三度と私の名を呼んでいた。
恐れていた頭の中の声とは違った安心感から大きなため息をついて、
声のしたあたりを見ると、
公園の木陰から山本が手招きしていた。
私たちはブランコに隣り合わせて座り、暫らく黙っていたが、
やがて痺れを切らしたかのように、山本が先に聞いてきた。
「あのさ、昨日のあれ……その、なんていうか……魔法じゃ、ないよな?」
途切れ途切れの小さな声だった。
その問いに答えられるのは私だけなんだと思ったら、
なぜか急に自分が一人ぼっちのような気がした。
「なあ……知ってるんだろ? た、頼むよ、教えてくれよ、あいつのこと」
指輪がちらつき、私は彼に向かって話していた。
「彩葉は、魔法を使ったのよ」
彼の声は、さらに小さくなった。
「まさか、そんな……ウソだろ……」
「彼女はまだ、自分が魔法を使ったことがはっきりと分かっていないの。
でも、間違いないわ、あれは彩葉がもともと持っていた力なのよ。
山本君。あなたはあれを見て、魔法だってすぐに分ったのね?」
「ウソだ! あいつが魔法……」
思わず声が大きくなって、山本は慌てて声をひそめた。
「そんな話、信じないからなっ」
そういって、走っていってしまった。
その後姿を見送りながら、
彼が魔法を信じていることは間違いないと思った。
(つづく) ( 次のお話 )
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