PRTR(Pollutant Release and Transfer Register:化学物質排出移動量届出制度)
人の健康や生態系に有害なおそれがある化学物質について、環境中への排出量及び移動量
を、事業者が自ら把握して行政庁に報告し、さらに行政庁は事業者からの報告を集計・公表す
る制度のことです。
これによって、毎年有害性のある化学物質が、どこから発生してどこに排出されたのか、又はどこへ運び出されたのかを知ることができます。
では、このPRTR制度が 必要となった理由はなんでしょうか?
これについては環境省が作成している「PRTRインフォメーション広場の“制度が必要な理由”」を参考にまとめていきます。
【PRTR制度の必要性】
多数の化学物質が何らかの環境リスクを持っているということを考えると、限られた物質を
個別に規制
していくだけでは、人の健康や生態系の健全性を守るのに必ずしも十分とは言い切れません。
そこで個々の物質のリスク評価を進めていくことと並行して、多くの物質の環境リスクを全体
としてできるだけ低減させることが必要になります。
化学物質は事業活動の中で生産、使用、廃棄され、その過程で環境中に排出されていること
はもちろんですが、消費者(市民)による製品の使用・消費によっても、環境中に排出されてい
ます。
したがって、 化学物質の環境リスクを減らすためには、行政だけでなく事業者や市民もそれぞ
れの立場から取り組むことが大切
になります。
《事業者》
事業活動に伴い排出される化学物質の量が少なくなるように努力する必要があります。
《市民》
自らの生活を点検し、化学物質の使用量を減らしたり、再利用に心がけたりすることが
必要です。
《NGO(非政府組織)》
市民を代表して行政や事業者に対し化学物質の環境リスクの削減を働きかけることも
できます。
このように、行政、事業者、市民・NGOの各主体がそれぞれの立場から、又、お互いが協力して環境リスクを持つ化学物質の排出削減に取り組んでいくためには、その出発点として、どのような物質が、どこから出てどこへ行っているのか、それはどのくらいの量なのか、といった基本的な情報をすべての関係者で共有することが必要になります。
又、それぞれの活動・対策の効果を確かめるためには、化学物質の排出等の状況を定期的に追跡・評価する必要があります。
そこで、これらを可能にする新しい化学物質管理の手法として、PRTR制度が必要になります。
次にこの 制度の仕組みを、環境省が作成している「PRTRインフォメーション広場の“PRTRの仕組み”」より引用した図(下図)をもとに説明します。
PRTR制度は、事業者が化学物質の排出・移動量を把握し、行政によって届出データがきちんと集計され公表されることです。
これによって、事業者自らの排出量の適正な管理に役立つとともに、市民と事業者、行政との対話の共通基盤ともなり、こうしたことを通じて、化学物質の環境リスクの削減等が図られるものと期待されています。
事業者自らが対象化学物質の排出量を適正な管理をすることは当然のことですが、図中にもあるように、 我々市民も積極的に「参加」「対話」をしていく必要があります。
一見普段の生活に関係ないように感じますが、人の生活や生態系を守るためにも事業者自らの管理に任せるのではなく、我々も「知り」、そして一緒に化学物質の環境リスクの削減を図っていく必要があります。
もちろん専門家でない市民が全ての化学物質の性状などを知ることは困難ですが、日常生活の中で「このような化学物質が使用されている」、「このような化学物質がどこから排出されている」などを知っていくことは大切な事だと思います。
このように積極的に市民が参加していくことで、さらなる事業者に対する自主的な化学物質の管理の改善の促進にもなると思います。
では、PRTR制度で 一体何が分かるのでしょうか?
ここでも環境省が作成している「PRTRインフォメーション広場の“PRTRで分かること”」を参考にまとめてみます。
・全国の事業者が大気、水、土壌へ排出している化学物質とその量の集計
・全国の事業者が廃棄物として処理するために事業所の外へ移動している化学物質と
その量の集計
・全国の家庭、農業、自動車などから排出される化学物質とその量の推計値
・化学物質別の排出量及び移動量
・業種別の排出量及び移動量
・都道府県別の排出量及び移動量
※PRTR制度では環境中に排出された化学物質の名前や年間排出量を把握することは
できますが、排出量だけでは人の健康や生態系にどのような影響を及ぼすかについて
の判断はできません。
人の健康や生態系への影響については、PRTRのデータに加え、化学物質の有害性の
程度やその物質が主に環境中のどこにどれだけ存在しているか、分解・蓄積しやすいか
どうかといったさまざまな要因とあわせて考えることが必要になります。
では、PRTR制度の 対象となる化学物質はどれくらいあるのでしょうか?
対象となる化学物質は、法律上「第一種指定化学物質」として定義されています。
具体的な物質としては、人の生態系への有害性(オゾン層破壊性を含む)があり、環境中に広く存在する(暴露可能性がある)と認められる物質として、354物質が指定されています。
そのうち、発がん性のある「特定第一種指定化学物質」として12物質が指定されています。
→ 第一種指定化学物質リスト
【参考】
PRTRデータの開示請求をされる方は経済産業省が説明している「 開示請求
」をご覧ください。
関連HP
・環境省
PRTRインフォメーション広場 PRTRとは
・経済産業省
PRTR制度
シックカー症候群 2011.09.22
化学物質の危険性(リスク) 2011.09.13
毒性 2011.09.11
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