くんちゃんの・・・

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病が私に教えてくれたこと

病が私に教えてくれたこと


 乳癌という病を通して、失ったものは確かに女性にとってはとても大きくシビアな問題だったといえる。しかし、失ってばかりかというと決してそうではない。むしろ私にとっては、癌という病を通して得たものも大きかったことも事実である。

 ‘失うもの’の大きさに直面すると、何を残すべきか?何が大事なのか?そういうものが見えてくる。切り捨てなければならない現実に、反対に何を残すのか考えさせられた。そうすると自分にとって大切なのはなんなのか・自分はどう生きたいのか…忘れかけていた一番大事なことをこの病に教えられた。

 女として生きてきて、結婚・出産・育児と言うかけがえのない経験を与えられた。‘人として生きること’を両親から教えられ、‘愛すること’を夫から教えられ、‘育てるということ同時に自分自身も成長していくこと’を子供達に教えられた。かけがえのない存在である。守るべきはこの大切な愛おしい存在以外の何者でもない。私にとって大切なのは、この愛しき存在たちとともに生きることにほかならないのだ。笑うときも、泣くときも、嬉しいときも、辛いときも…いつも一緒にいること、生きていくことなんだ…。

 そして、人として優しくありたい。弱い私はその弱さが嫌いで‘強くなりたい’と願ってきた。確かに生きていくことにおいて強さは必要なのかもしれない。けれど逆に言うと、弱いから困難に立ち向かっていける訳だし、弱さを知っているから人に対して優しくできるのではないだろうか…。どんな困難も受容できるだけの、心の大きさ・柔らかさ・優しさを私は持ちたい…。

 日々の生活に追われ、そんなごく当たり前のことを忘れかけていた私に、これは天から与えられた贈り物だったような気もする…。『そんなの当たり前じゃ~~ん!?』が‘当たり前すぎて見失っていたのだ。大波が押し寄せてきて、私の危うい生活は一気に飲み込まれてしまいそうだった。でも、その大波をまわりの人たちに支えられつつ乗り越えて、今は何とかさざ波の中にたどり着いた。

 そんな経験を越えて、今の私は実感として‘乗り越えられない困難は決して与えられないモンなんだな~!’と、そう思う。乗り越えた…と言うとちょっと違うのかも…!?私はまだゆらゆら揺れているし、決して乗り越えているわけではない。今は‘穏やかなさざ波にたどり着いた’と言う方がふさわしいのかもしれない。だからこれから先大切な何かを忘れそうになったとき、またその警鐘として大きな津波が押し寄せてくることがあるかもしれない…。躓きながら、よろけながら…その波に上手に乗って生きていけたらと思う。きっと、生きていけると思う。私には‘最強の身方’がいるのだから…。


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