Last Esperanzars

Last Esperanzars

楽園のサジタリウス3 九



 ……どこからか、電車が走るような音がした。
 少年は不思議に思った。ここは室内だ。近くに電車など通っていない。しかしレールの走る音はする。しかも異様に小さい。
 となると――と少年は音の元と思われる部屋の前に立ち、ふすまを開いた。果たしてあったのは予想通りの光景。
 十畳はあろうかという畳の部屋に、一面埋めつくさんとレールが敷いてあった。その上を軽快に走る電車……無論、鉄道模型だけど。
 そしてレールの前には、鉄道模型を操る老人が少年に背を向け座り込んでいた。こちらに気付いているだろうに振り返りもせず、ただカチカチ模型を操作して楽しんでいる。
 はあ、と少年は老人の背中に呆れたため息をかけた。もう真っ白でかなり後退した髪の毛が揺れる。
『……今度は鉄道模型かよ。また数日で飽きるのが目に見えるな。ちゃんと自分で片付けろよ』
 冷やかな視線をものともせず、老人は背を向けたまま反論する。
『うるさいわい。わしが飽きっぽいみたいに言うな。この鉄道模型だって昔からたしなんどるわ』
『数年ぶりに始めた趣味をたしなんでるとは言わねーんだよ。ったく、どの趣味も広くて浅くなんだから困るぜ。いっそ完全に飽きてくれたら助かるのに、置き場がいくらあっても足りん』
 そんな少年の苦言もどこ吹く風、老人はまだ鉄道模型を楽しんでいる。今のところは。
 そう、この頭髪が後退しきったいい歳の老人はかなりの趣味人間だった。
 切手、昆虫、乗馬、落語、流鏑馬、サーフィン、盆栽、サボテン、アリの巣研究……趣味としてポピュラーなものやおかしなものまで、ありとあらゆるものに手をつける生粋の趣味人間、あるいは趣味マニア。
 しかし、あらゆるものに手をつけるかわりに飽きるのも早い。
 そのくせ思い出したかのようにやり始めるだからたちが悪い。少年もこの老人の趣味には散々付き合わされてウンザリしてる。猟銃の資格が取れたからと熊狩りに連れられて熊と誤認され撃たれた時は本当に縁を切ろうと思った。
 ――まあ切れるわけがないか。俺には他に居場所がないんだから……
『ところで、飯はまだか? 結構いい時間じゃぞ』
『あらやださっき食べたじゃないですかおじいさん』
『お前はわしのばあさんか! もうろくしとるからってボケとらんわまだ!』
『それを言いに来たんだよ……ったく、もう食卓に並べてるからこいや』
『あーそうかそうか。もうわしゃ腹ペコじゃ』
『そうだろうなもう夕方五時だ』
『朝飯七時からもう十五時間か。お前わしを餓死させる気か』
『てめえが「朝何にする?」「んー足テビチ」なんてほざくからだろうが! 十時間もかかるの要求しやがって、こっちだって腹と背中くっつくわ!』
『マジでやる方もやる方と思うが……しかし、それだけか?』
『あーはいはいちゃんと鯛の塩釜焼も作りましたよ。どっかのパーティ会場かここは。無駄に手間かかるもんばっか要求しやがって』
『年寄りがそんな重たいもの食えるわけないだろ、馬鹿かお前』
『自分で言ったんだから自分で責任持ちやがれ! 俺は知らん!』
 なんてのを捨て台詞にして少年は部屋から出て行った。老人ももうすぐやってくるだろう。
 実際この少年はこの二人しか住んでいない家で炊事洗濯掃除その他もろもろ全て行っていた。老人も料理好きだからできるはずだが、めんどくさがって生活は少年に依存している。そして少年も悪態をつきながら、この生活を悪いとは思っていなかった。
 少なくとも、数年前のあらゆるものを持っていたがあらゆることが窮屈だった生活よりは。たまにこんな無茶を言うこともあったが。
 ――それも、いつまで続くかわからんがね。
 視線だけ老人がいる部屋へ向ける。見た目には十分カクシャクしているが、あまり体調がよくないことは少年も知っていた。実際身体を動かす趣味はここのところ敬遠している。自分でも自覚はあるだろう。
『まあ、高校行かずに介護生活も悪くないか。お前の手をわずらわせたくないとかじいさんは反対するかもしれんが……どうせ高校なんか言ってもしょうがないし』
『んー、なんか言ったか一機?』
『なんでもねーよ、さっさと来いよじいさん』

 ……しかし、老人が少年を、一機の祖父が一機の手をわずらわせることはなかった。
 それから少しして、祖父はあまりに呆気なくこの世を去ったのだから。

 その数日後、葬式も済ませた後一機は突然高校進学することにした。
 進学しろと口がすっぱくなるまで言っていたのに聞かなかった一機の心変わりに担任も驚いていたが、本人は『暇になったから』としか語らなかった。
 しかし進学すると決めた時期も遅く、勉強嫌いの一機は偏差値も低かったためあまりいい高校へは行けなかった。その高校で一機はのちに鉄伝でのパートナーとなる麻紀と出会った。
 ちなみに、一機が鉄伝を始めたのも祖父が亡くなった頃だった。というか、知人から貰ってきたと言って一機に鉄伝を与えたのがこの祖父なのだ。
 ……そして、一機自身は自覚していないが、あの別の世界に迷い込んだ少女の物語に異様に魅せられていくのも、この頃からになる――

    ***

「う……っ」
 ひどくまぶたが重く感じられ、一機はうっすらとしか開けなかった。
 まぶたと言うより、全身がだるく、重い。例えるならヘレナに着せられた鎧を着けたまま寝ている様な感覚で、起きているはずなのに身体は起き上がってくれなかった。手足も動いてくれない。
「う……うん?」
 目を開けた先には、パチパチと燃える焚き火があった。揺れる光に照らされ、向こうに見える岩肌が蠢いているようだ。時折シャッシャと何かをこするような音もする。
 焚き火を揺らしている風はこころなしか冷たく感じられる。もう日は落ちたのかもしれない。横になっている布の下も硬い地面で――
「――!」
 そこでぼやけていた頭が一気に覚醒する。ヘレナから麻紀の目について聞かされたこと。『魔神』を一人で取ってくると決意したこと。その途中で毒にやられ気絶したこと。
「っ! だっ!」
 あわてて起きようとしたが、手足が思い通り動かずその場で素っ転びしたたか顔を地面に打ち付ける。
「いてて……ってなんだこ」
「あ、起きた?」
 自分の状況を確認しようとしたところ、突然声をかけられビクリとする。恐る恐るそちらへ顔を向けてみると……
「あーあんた無事? 身体の方はまあ怪我はしてなかったみたいだけど、まだどこか痺れるとかある?」
「……いや、別に」
 明るくけらけらと笑う声の主に、思わず一機はそう答えてしまった。
 横になったまま視線だけ動かした一機の目の前にいたのは、同年代くらいの少女だった。
 少し褐色がかった肌の色に、小さい顔に大きめの瞳はサファイヤのように青く輝いている。髪は瞳のサファイヤを薄く溶かしたような空色……なのだが、ショートカットでボサボサ頭のため魅力を削いでおり、第一バンダナを巻いていて見える部分が少ない。
 服はシャツとジーンズのようなズボンだが、かなり汚れていて親衛隊で着られているものより質が低く見える。腰に巻かれたベルトには、何故かペンチやドライバーなど工具が引っかけられていた。どこかの整備士のようだ。
 整備士と思いついてMNをメンテナンスしてた親衛隊員を頭に浮かべてみたが、少なくともこんな女はいなかったはず。ということは……
「……ちょっと、聞いてる?」
「え? ああすまん、何?」
「だから大丈夫かって聞いてるの。まだボケてるの?」
「ボケてるって酷いなおい。まあボーッとしてたのは認めるけどさ」
 どうもハッキリしない頭を押さえながら周囲を確認してみる。
 場所は、両脇に切り立った岩肌があり崖のように狭い。天井は開いてるがやはり暗くなっていた。近くに鍋や包丁など調理器具が揃えてあってキャンプ場のよう。その他には衣類の端がはみ出ている木箱なとがある。奥には木の根状に続いているらしい。どこだか一機には見当もつかなかった。
「はは、寝ぼけてるんだったらいいけどさ。ほら、これ飲んで」
 そういってその女が差しだしたのは、木のコップに入れられた何かの液体だった。な、なんかもわっと匂うのだが。
「なに引いてるんだよ、いいからこれ飲みなって」
「いやだよ! なんだその緑か茶色かわかんない色してる液体! 築百年の校舎の古漬けみたいな香り醸し出しやがって! 言ってる俺でもわけわからん!」
「こっちはアンタ以上にわけわかんないって。ほら、さっさと飲んで」
 ずいと突きだされ、抵抗できず受け取ってしまう。考えてみれば俺って気の強い女に弱い気がする……と一機は泣きたくなった。
 ええい、ままよと一気に飲み込む。ぐえぇ、これ絶対木の皮とかだ。図画工作の味がする。
「ちょ、これ何なんだよ?」
「ん、毒消し」
「ぶばっ!」
 瞬間、一機は新開発の超大型ジェット霧吹き(特許未取得)となった。
「きゃ! なにすんの汚いわね!」
「ど、どどど、毒!?」
「違うわよ毒消しよ毒消し! よりによって逆の意味で捉えてんじゃないって!」
「毒消しぃ?」
 とりあえず毒じゃないのはわかって安心したが、一機はまた疑問を作ってしまった。何故毒消しなんぞ自分が飲まなければならないのだろうかと。
「そ。あんた《トゲモグラ》に刺されたんでしょ? 馬鹿ねーあいつらおとなしいから滅多に針出さないのに。どうせ触ってみたりしたんでしょ?」
「とげもぐら……? なんじゃそれ、そんな生き物聞いたことも……あ!」
 呆然としてた一機はそこでやっと思い出した。倒れる直前、土から出てきたおかしな生物を。
「そういや俺あいつに刺されたんだったな……え、大丈夫なのか俺?」
「んー? 毒消し飲んだし、見たとこ他に怪我してないから大丈夫じゃない?」
「いやいやいや、だって毒だぞ? その――死んだりとか」
 不安げに聞いてみると、少女はキョトンとした顔をし、数秒後笑いだした。
 それも大爆笑。腹を抱えて笑い転げる姿は、生死が関わっている一機からすると冗談じゃない。誰でも憤慨するであろう。
「何笑ってるんだよ! こちとら毒が体に回って死にそう……!」
「あはははは、《トゲモグラ》の毒で死んだ奴なんか聞いたこと無いわよ。せいぜいちょっと体が痺れる程度だって。あんな弱い毒で死んでたらあんた末代までの恥よ、あはは!」
「……え、えー……」
 情けない声を出してしまう。一機はズーンと漫画だったら顔に線が入って黒くオーラが描かれてそうな表情になった。
 あれだけ死ぬとか終わりだとか心の中でネガティブなことになっていたのに、全然大したことないなんて恥ずかし過ぎた。いっそまた《トゲモグラ》とやらに刺されて今度こそ毒で死ぬ、いやだから死ねない毒なんだってと馬鹿な問答していると、少女が笑いながら話しかけてきた。
「あっはっは、おっかしな奴。変なかっこしてるし、妙なもの持ってるし。ま、これは美味いけど。なんか味わったことのない香りと甘さとサクサクしててさ」
「何がサクサク……ってあー! お前いつの間に人のチョコスティック喰ってんだよ!」
 気がつけば一機が持ってきたリュックはガサ入れ済みで、チョコスティックのみならずポテチとか色々既に喰われていた。キャンプ場を襲った熊やらのニュースを思い出す一機。
「えーいいじゃん助けてあげたんだから。なんか見たこと無い食べ物で変な袋入ってたからびっくりしたけど、美味しいからいいや。そ・れ・よ・り・も♪」
 いきなりずいと顔を近づけられて一機は思わず後ずさる。なんかふはーふはーと鼻息が荒く顔も上気している。盛りのついたサルだろこの女。
「これ、なんなのさ。なんかピカーって光ってタラリンリンって音が鳴って見たこともない文字が表示されるんだけど」
 と言って突き出してきたのは、なんと一機の携帯であった。
「あーっ! お前人のもの勝手に……て待て! なんかバラバラになってないか!?」
「失礼ね、バラバラになんかしてないわよ、ちょっと分解しただけ」
「一緒だ! 液晶とかどうやって外したお前! こんな中身飛び出して直るのかよ!」
「なによこんなの、ちょっとネジ回しただけでしょ。ほら、貸してみなさい」
 ちょっとムカついた様子で一機から携帯をひったくると、止める間もなく背を向けてかちゃかちゃと妙な音をたてはじめた。
 ネジ一本まで分解されもはや携帯だった名残が何一つない様(そこまで分解できるわけないが)想像し「ちょっ……!」と止めようと肩に手をかけようとしたら、それより早く女の子が「んっ」と振り返ってきた。
「ほら、これで満足?」
「え……え、あ、え?」
 一機の目の前に再び突き出された携帯は、コードも電子版も出ておらず元通り。分解された姿を見ていなければ一旦バラバラになったことすら想像できない完璧さだった。あわてて携帯を操作してみるが、何の問題も無く起動している。ボロだが特に故障もない一機の携帯だった。
「うわ、すげっ。あんだけバラバラにしたのに!」
「何よ、見たことのないパーツあったけどあんなもん大した構造じゃないわよ。ドライバーさえあれば朝飯前だって」
「おいおい、日本の技術者を泣かせるようなこと言うなって」
 とはいえ実際この女はあれほど簡単に分解しそして組み直した。一機からすると何がなんやらチンプンカンプンな代物を別世界の人間がこうも簡単にできるわけがない。こいつひょっとしたら天才という奴では……別世界?
「あーっ!」
「きゃっ! な、なによ今度は!」
 またしても寝起きで(正確には気絶だが)でボケていたらしい。この状況にいち早く気付かねばならなかったというのに。
「お前、誰だよ!」
「へ? ああごめん、名前言ってなかったわね。あたしマリー・エニス。あんたは?」
「はい? ああ、的場一機……じゃなくて!」
 あまりに普通に返されてしまったのでこちらもつい転校初日のクラスメイトへの挨拶のように答えてしまった。アホか俺。
「だからさ、ここどこなんだよ!」
「ここ? ドルトネル峡谷に決まってんじゃん? あんた知らないで来たの?」
「いやそれは知ってるけど。親衛隊の連中と来たんだし」
「親衛隊? ……あーっ!」
 今度はマリーとやらが叫ぶ番だった。峡谷の合間で幅が狭いので、声が反響され一機は耳をふさぐ。
「思い出した! どっかで見た顔だなあと思ったけど、あんたあの時崖下で温泉のぞこうとした変態でしょ!」
「いやあれはのぞこうとしたんじゃなくて隠し撮りしようと……似たようなもんか。って違う、なんでそれを……! お前か、あん時石ケン投げつけてきた奴は! なんてことすんだ、危うく死ぬとこだったぞ!」
「うっさいわね! あんたたちが悪いんじゃない! 人の温泉ぶっ壊して自分たちで楽しんじゃってさ!」
「んなもん俺は関係ない! だいたいなんであんなとこに温泉なんか作ったんだ! わざわざ入り口近くに! しかも崖上で! 崩れてもしゃーないだろ!」
「好きで作ったんじゃないわよ! 罠作ってたら温泉が噴き出しちゃったのよ!」
「ああ、偶然の産物だったのね……どおりで」
 別に『グレタが殴ったショックで噴き出した』でも構わなかったようだ。内心頭を抱えつつ、今の言い争いで分かったことをまとめてみる。
 ここがドルトネル峡谷から移動してない場所で、周りの状況から察するにこいつ、マリーと名乗った女はここに最低でも数日は滞在している。
 そしてさっきの「罠作ってたら」という発言と一応この国の防衛を受け持つ騎士団を「あんたたち」呼ばわりしている点からして――
「……お前か、例の墓守ってのは?」
 そう聞くとマリーは一瞬キョトンとした顔をしたが、すぐニヤリと笑みを浮かべた。
「そうよ、あたしが墓守……じゃない、『守護の民』の一族。四十五年前からシルヴィア軍の魔の手から秘宝を守り続けた英雄たちの末裔よ」
 誇り高く、声を上げて言ったその言葉は、
「――ところで、あんた」
「ん?」
「カズキ、とかだっけ? あんたさっき――親衛隊から来たって言わなかった?」
「……ああ、言った」
 二人が敵対する関係であると、宣言したものだった。
 ウラーと奇声を上げたマリーに、一機は縛られてしまった。もう、慣れたものである。

「――あのー、ほどいてくれませんかねえ」
「お断りよ、何度も言わせないで。今晩御飯作ってるんだから」
 そう一機の懇願を流しながらマリーは木箱をまさぐっている。どうも食料入れらしく、出てきたのはでっかい干し肉の塊と壺だった。なんか、あの壺から酸っぱいような妙な匂いがしているのは気のせいか。
「おい、その魔王か何か召喚されそうな壺なんなんだよ」
「何よ魔王って。これはただのコーヤの酢漬けよ、ほら」
 そう壺の中から取り出したのはキュウリみたいな緑色の野菜だった。なるほどピクルスみたいなものかと一機は納得する。しかし、この世界は干し肉とか臓物から作る調味料とか乾燥や発酵食品が実に多いとどうでもいい感想を抱いた。
「しっかしよりによって親衛隊の人間助けちゃうとはね……まあ行商も来ないところだからシルヴィア軍かもしれないとは思ってたけど」
「だったら助けなきゃよかったんじゃ……いや助けてもらわないと困ったけど。つーかそれじゃどうして助けたんすか?」
「えー、だってあんたアマデミアンでしょ?」
「え……いや、そうだけどさ」
「でしょうね、そんな変なカッコしてるし」
「ちょっ、変ってなんだ変て!」
 一機自身別にこの制服に思い入れがあるわけじゃないが、なんか己を馬鹿にされてるようで腹が立った。足も縛られているので足は立たないけど。
「あっはっは、いいからいいから、あたしら『守護の民』はシルヴィアの鬼畜どもと違って優しいからね。捕虜にもちゃんとご飯上げるから」
「はあ……」
 ヘレナたちを鬼畜発言したのはムッとしたが、文字通り手も足も出ない状況で反感買う訳にもいかないので相槌を打っておいた。とりあえずこのまま縛られたままなのも癪なので、情報収集でもしておくかと一機は決めた。
「あのー、見たところお前以外ないみたいだけど、一人暮らししてるの?」
「まさか、いっぱいいるわよ。今日はちょっとみんな出かけてるだけ。なんせ人多いから買い出し大変なのよね~」
 ふんふんと何故か鼻歌を歌いながら食材や調理器具をそろえるマリー。なんだろう、妙にテンションが高いぞこの女。
「『守護の民』とか言ってたけど、それって四十五年前シルヴィア軍に包囲されたグリード軍の残党のことだろ? お前その末裔なのか」
「だからそうだって言ってるでしょ。悪逆非道なシルヴィア王国のケダモノたちに勇敢に立ち向かった戦士たちの血を引く……あ、塩もう残り少ないわね。買いに行かないと」
 ところどころ偏見を見え隠れしつつ家庭的な呟きをするのがものすごく違和感があった。まあ戦争している相手同士なんてこんなものだろうと一機は思った。ヘレナたちだって『蛮族』呼ばわりだし。
 やけに気分よく鍋や包丁やまな板を取り出し、かまどに火打ち石で火をつける姿は野蛮な反乱勢力の生き残りでも英雄の末裔でも無く、普通の女子にしか見えなかった。高校の時友達と仲良く服や好きなアイドルのことを話していた女生徒と、親衛隊で意気揚々と働いていた隊員たち。彼女たちとどれくらい違いがあるのだろうか? こんな狭いところで……
「それで、その捕虜にも御飯を与えてくれるお優しい英雄さんたちはいつメシくれるんだよ?」
「あんた、自分の立場わかってる? 言われなくてもすぐ作ってあげるから……あれ、この、ふんぬっ……」
 包丁で干し肉を切ろうとしたようだが、どうも切れなくて悪戦苦闘しているようだ。
「おら、んんっ……ああもう、また切れなくなっちゃって、どうしてこう包丁ってダメになるのが早いのか……」
「――ああもう、見てらんない。おいちょっと、貸してみ」
「は?」
「貸せってその包丁。俺が作ってやるから」
 こう、メガラに同じ表現があるかどうかわからないが、狐につままれた顔をマリーはした。一機は内心ほくそ笑む。
「あんたさ、本当に自分の立場わかってる? 捕虜だって知っててその台詞?」
「だってお前に任せると餓死するどころか骨になって風化してテンハンドレッドの風になるか埋まって化石になるまでかかりそうなんだもん」
「そこまでかかるわけないでしょ! 第一、あんたそんな縛られて料理なんてできるわけないじゃん!」
「だからさ、これ外してって言ってるの」
「はぁ!? どこに料理作らせるために敵の縄ほどく馬鹿がいるのよ!」
「安心しろ、自由があろうがなかろうがあんたに勝てる気しないから俺」
「……言ってて自分で情けなくないの?」
 恥ずかしくないと言えば嘘になるが、事実なので一機は臆面もなく言い切った。その様子に呆れたのが気が抜けたのか、マリーはあっさり縄をほどいてくれた。
「ふっはっはっはっは、ひっかかかったなアホが! この俺様がそんな軟弱モヤシ野郎と本気で思ったか! 最初からお前をだますための芝居だったのさ! よくも今まで散々馬鹿にしやがったな! お礼に貴様を永久に婚姻届を出せぬ体にしてやろうと思ったがそんなことはなかったぜ! あべーん!!」
 なんてことを言うわけもなく、一機は普通にマリーから包丁を受け取った。
「あ、やっぱり。すっかり丸っ刃じゃないか。こんなんで切れるか」
「は? マルッパ?」
「刃が尖ってないことだよ。砥石……なんてあるわけないか。水ってこのカメの中にあるのでいいんだよな。ちょっと借りるぞ」
 了解も得ずに一機は、その辺の岩肌に水をかけ、包丁を横にして刃を研いだ。『刃を研ぐ』という概念がわからないマリーには謎の光景であろう。
「んーまあこんなもんか。一応刃は立てたしな。さてと、久々だけど大丈夫かな」
 と自信なさげに肉を切り出すが、トントンと問題無くいとも簡単に角切りにしていく。刃を入れるだけで苦労していたマリーには魔法のようにしか見えない。同じく固いコーヤもあっさり切ってしまうので「はええ……」となんとも情けない声を上げる。
「あーちょっと、水沸かしてくんない? 俺かまどほとんど使ったことないから火加減できないし」
「う、うん」
「それとさ、いくらなんでもこの二つだけって寂しいから他に材料ない?」
「えーと、あ、そういや野菜もう一つあったっけ」
「うん? うわ、何これどう見てもキャベツじゃん。まあキャベツならダシ出るしいいか……あ、水はあんまし沸騰させず弱火な」
「は、はいっ」
 いつの間にかマリーは一機のアシスタントと化している。完全に呑まれていた。
「――あんた、料理得意なの?」
「んー? うちのじいさんが好きでさ、色々仕込まれたんだよ。それ以前に家事は俺担当だったからな。ま、ここ二年くらいやってなかったけど」
「? やってなかった? 得意なのに?」
「まあ、できるんだけどやるわけにいかなくなったというか……ん? やべ、この水硬水だ。レシピ考えなきゃな……」
 そんなわけで、マリーをビビらせていることにも気付かず一機はあっという間に戻した干し肉と野菜のスープを作ってしまった。
「……美味しい」
「んー、材料もないし調味料も初めてだからこんなもんか。もうちょっと余裕があれば……ま、しょうがないか」
 正反対の評価をしつつ二人はテーブルに向かい合わせに座って食事タイム。と言ってもパン(親衛隊のより質が劣る固くて味が薄い物)とスープだけという質素なものだったが。
「あんた、親衛隊で料理担当でもしてるの?」
「まさか、数日前に入った新米だよ。つーか、俺って親衛隊雑用見習い補佐もどきだし」
「はぁ? 何それ?」
 思いっきり変な顔をされた一機は、こちらの世界に来てからのことをだいたい話した。無論、親衛隊が『魔神』を狙ってこちらへ来たなどは隠して。
「ふーん、あんたやっぱり来たばっかのアマデミアンだったんだ。雰囲気からして同類かなとは思ってたけど」
「同類って、もしかしてお前も?」
「あ、いや私はお母さんがなんだけど……」
 五十年前シルヴィア王国に反旗を翻しグリード皇国を名乗ったのは蛮族、つまり地方の少数民族やアマデミアンだったはず。その生き残りならアマデミアンだろうが、マリーの場合母親もあっちの世界から来た人間らしい。たしかに同類ではある。
「それにしてもあんた大変だったわねー。絶望の国(ナイトメアワールド)から来ちゃったと思えばよりによって親衛隊なんかに拾われるなんて最悪よねー」
「――あん? ナイト、なんだって?」
「あれ、聞いてない? 絶望の国(ナイトメアワールド)、あんたの世界のことよ」
 聞いたことが無い。カケラすらも。
「えー、なに、俺たちの世界そんな風に呼ばれてるのか?」
「誰が言い出したかは知らないけど、昔からある呼び名だって。なんでも、来た人々が「あちらは地獄だ、それに比べてここは楽園だ」なんて言ってたのが由来らしいけど。ねえ、あっちの世界ってそんな悪い国なの?」
「いやそんなそこまで……」
 否定しかけて、一機は黙ってしまった。
 未来も何もかも明るく決まっていると思っていた幼い頃。
 一瞬で奪われてしまった絶望、その悔しさ。
 怠惰な日々を過ごしながら、ただ別の世界へ連れてってくれる何かを待ちわびた自分――

 ――現実に飽きてはいませんか?
   くだらないと思っていませんか?
   どこかもっと楽しい、自分の才能が生かせる場所に行きたいと思いませんか?
   貴方を、楽園にご招待――

「――たしかに、絶望の国だったかもしれんな」
 はあとため息をついて、一機はスープを飲み干した。
 ――なるほど、たしかに俺はアマデミアンたちと同類なのかもしれんな。
 呆れ混じりの納得をすると、その場にあお向けに倒れる。牛になるかもしれんが知ったことではない。
「お母さんも自分とこよりよっぽどマシとか言ってたわねえ。昔のこと話すの嫌いだったからあんまし聞いてなかったけど」
「――お前のお母さんて、どこら辺の人とか言ってた?」
「えーと、あ、ふり――なんだっけ。忘れたけど、あたしの肌もちょっとお母さん譲りなんだって」
 アフリカ、だとすれば紛争地帯にでもいたのかと憶測する。なるほど、それならばここを楽園と語った気持ちはわからなくもない。一機も当初喜んでいた一人だった。
 しかし――
「ところでさ、なんで親衛隊がこんなとこにいたか、聞いてる?」
「え? い、いや、聞いてないな……」
 不意打ちだったので、思わずどもってしまった。怪しむように半目で睨まれ「やばい」と焦る。
「ふうん……ちょっと待ってて」
 すっと立ち上がったマリーは、食材入れの木箱から素焼きのビンと木製のコップを持ってきた。
「ささ、まずは一杯」
「え、何これ?」
「酒」
「酒!?」
 目の前に置かれたコップになみなみと注がれる液体は、白くてどこか濁っていて発酵臭のする――
「ってこれポン酒じゃん!」
「何ポン酒って。これはライズって酒よ。最近仕入れてきたばかりなんだから」
「あの、ライズって、原料は?」
「えーと、米だったっけ?」
 だから日本酒だろ、というツッコミは無意味なのでやめておいた。日本人である自分たちが来ているのだから、同じ日本人がこちらの世界に来て米があれば作っても不自然ではないが、全体的にヨーロッパ的な雰囲気が漂うこのメガラで日本酒はアンバランスにも程がある。しかもこれどぶろくだし。
「いや、でも俺まだ十七だし……」
「だから何?」
「……だよな」
 それがどうしたとあっさり返されたので一機も受け取る。二十歳(はたち)にならないと飲酒禁止は日本くらい、他は十八歳とかそもそも年齢制限なしの国の方が多いそうだし、シルヴィアも別に飲んでOKなのだろうと一機は『郷に入れば郷に従え』の精神で受け取った。
 まあ、飲酒なんて一機はもっと幼い時からしていたりする。主に祖父の晩酌の相手として散々付き合わされたものだが。二日酔いを経験したのは小学校出る前だったと一機はおぼろげに思いだす。
 それというのも一機の父が「酒なんてものは人間を堕落させる忌むべき代物。あるだけでも許しがたいのにそれを飲むなんてあり得ん。酒に狂うということは人として狂うと同じ事で――」などと誰も聞いてないのに熱く語っていたが、単に一滴も飲めない体なのを理論武装しているだけである。変なところで見栄っ張りなのは的場家男の伝統だ。
 それだから、息子と酒盛りしたいという夢を果たせなかった祖父は孫に求めたわけで、小学校高学年の頃祖父の家に転がり込んだ時から相手をさせられていた。さすがに最初は飲ませ過ぎないよう気をつけていたが、一機がいくらか慣れると歯止めは無くなり大抵の種類の酒は飲んでしまった。
 しかしまあ、付き合いで飲んでいただけで一機自身はそんなに酒好きでもなかったので、祖父が死んだあとは一滴も口にしていなかった。だから一杯目でちょっとクラクラする。
「酒なんかよくあるな。自分で作ったのか?」
「まさか。街に知り合いの酒屋がいるのよ。そこから物々交換してもらった」
「物々交換? 何を交換したのさ?」
「んーと、ここら辺に自生してるキノコとか獣とか、あと金」
「金!?」
 思わずスープをむせそうになった。へんなところに入り咳をする一機。
「ちょっ、何よそんな驚いて」
「いや金って、金っておい、金を物々交換て、そんな簡単にあげちゃっていいの?」
「簡単にって別に珍しいものでもないし――ほら、そこにも埋まってるけど」
「ええっ!?」
 指差された地面に飛びついて手で掘ると、あっさりとピカピカしたものが現れた。
「うっわ、これ黄鉄鉱とかじゃなくて本物の金だよ……すげえな。お前こんなとこで暮らさないでこの金持って街繰り出せばあっという間に億万長者だぞ?」
「はあ? さっきから言ってることさっぱりなんだけど。金なんかで金持ちになれるわけないじゃん」
「へ? いやいやちょっと待て、金だぞゴールドだぞ? 一番高い貨幣だって金だろ、それがこんだけありゃ何でも手に入るわ」
「――? あんた、銀貨と間違えてない? 銀や銅より圧倒的に多く採れる金がそんな価値あるわけないでしょ。酒屋のは娘さんが金細工作るの趣味だから交換してもらってるだけ。ほら、そこのやかんだって金製よ」
 言われて振り返るとたしかに黄金のやかんが転がっていた。秀吉が作った純金の茶釜を思い出させるが、やかん型だとこうもけばけばしくなるものかと逆に感心させられてしまう。ちょっと手に持ってみた。
「ペロ……これは純金!」
「え、あんた舐めただけで金属の素質わかるの?」
「わかるわけないだろ、言ってみたかっただけだ」
「なんなのよ!」
 とまあそんな軽いボケは置いといて、二人は夕食から移行して酒盛りを始めてしまった。マリーは干し肉やら木の実をいくつか持ってくる。
「それで、実のところ親衛隊が何したか知ってるんじゃないのあんた?」
「だから知らないって。ちょっと近くに来ただけなんじゃないの? こんなへんぴなところに、わざわざ親衛隊が来るような理由があるのか?」
 そう笑うと、マリーはちょっとムッとした様子で酒をあおった。
「んくっ、んくっ……ぷはぁ! 言ってくれるじゃない、どこがへんぴな場所だって?」
「え? だってここ、こんな谷の中で……」
「かーっ! 笑わせるわねえ。なんも知らない奴ってのはこれだから困るわ。ちょっと付いてきなさい、いいもの見せてあげる」
 アルコールのせいでテンションが上がっているマリーは、すくっと立つと意気揚々と奥へ歩いていった。あわてて追う一機は、気付かれないよう心の中でにやりと笑う。
 とりあえず接触することには成功。はなから親衛隊の一員とバレてしまったのは失敗だったが、大して気に止めてないのは好都合。元々アマデミアンとして警戒心を与えず近づく作戦だったが、今のところさしたる問題はない。
 それに――どうやらこの様子だと一機の推測も正解だったようだ。周囲をうかがってさらに確信へとたどり着いたが、そう思うと目の前でやたらルンルン気分のマリーが哀れに思えてくる。
 ――誇り高き『守護の民』の末裔、ねえ。
 ふっと笑いそうになると、先行していたマリーがいきなり立ち止まり少し驚く。
「な、なんだどうした?」
「いっけない、今日の分忘れてた」
「ちょっと待ってて」と一機に告げ戻っていく。かと思えば、荷車に何かを乗せてやってきた。見てみると、何かの肉片や骨、野菜くずなど生ごみが積まれていた。
「な、なんだそりゃ?」
「お供え」
「お供え!?」
 一機は目を丸くした。こんなものをお供えなんてしたら確実に天罰が下るだろう。落雷ならいいが崖崩れとかだと巻き込まれる可能性があるから勘弁してほしい。
 しかもマリーはあろうことかそのお供えの名を借りた廃棄物をだばだばとそこらにあった穴にぶち込んでいく。
「おい、それのどこがお供えなんだ。ただのゴミ捨て場だろ」
「失礼ね、この穴の中に毎日供物を捧げるって決まってるのよ。ゴミ捨て場扱いしないで」
「えー何のために?」
「知らないわよ、そう教えられて四十五年間やってきてるんだから」
 理由もわからずに意味不明なことを淡々と続けるなんて無神論者の一機には馬鹿馬鹿しいと失笑するだけのことだった。が、そんな一機の呆れを見逃すほど神仏は愚かではなかった。
 ウオオオオオオオオオォ……と突然亡者の呻きのような声が辺りに響いた。思わずビビる。
「うわあ! ってなんだ、前にも聞いたやつか」
 峡谷の入り口で聞いた声(多分風の反響か何か)につい油断していたので驚いてしまった。恥ずかしさを覚える一機。
「ああ気にしないで、お供え落とした時とかたまに聞こえてくるのだから。下に落ちた音が反響とかしてるのかなあ」
「――お前も、信じてないんじゃないの? で、どこ行くんだだから」
「せっかちなこと言わないで、すぐだから」
 そう抜かしておきながらちょっと距離があるようだ。ただ歩くのも退屈なので、一機はいくつか質問することにした。
「なあ、ここってお前以外何人いるんだ? 十人くらい?」
「はぁ? 十人なわけないでしょ。千人以上いるわよ」
「千人だぁ? おいちょっと待て、いくらなんでもサバ読み過ぎだろ。そんな千人もこんなとこで寝泊まりできるか」
「ここだけじゃないわよ、あたしらの一族はこの峡谷中に散らばって守ってるの。普通考えればわかるでしょ。ちなみにここは五十人くらい」
 なるほどそれならばわかる。ドルトネル峡谷はかなり広いようだし、そこを防衛するならば人は多ければ多いほどいい。千人という数も全然おかしくない――普通ならば。
 一機が思案していると、ふと大きなところに出た。視界の端に何かおかしなものが映り、なんだろうと思って視線を動かすと、
「うわあ!」
 この世界に来て何度目かわからない悲鳴を上げた。慣れたつもりだが無理だったらしい。
 何しろ、眼前に巨大な顔が横たわっていたのだから。
「な、なんだよこ……ってこれ、ひょっとして……」
 落ちついて良く見てみると、それは巨大な顔ではなく、何度も凝視し整備も手伝ったMNであった。
 しかし、親衛隊が運んできた《ヴァルキリー》とも《エンジェル》とも違う。全体的に流線型だった《エンジェル》とは違い、こちらは角ばっていて古いアニメに出てくる四角パーツが主体のロボットを思わせる。山吹色の装甲は貼り付けたような簡素なもので古臭いというか安っぽい印象を一機に与えた。
「これは――MNか?」
「そ、《ゴーレム》っていう最初期のMNよ。五十年前にグリード皇国が開発したの」
「え、最初期というと、まさかFMNか?」
「なわけないでしょ。それは量産型MNよ。当時はこれでシルヴィア軍と戦ってたんだから」
 なるほど、グリード侵攻で使われたのはFMNだけではないのは知っていたが、それがこの《ゴーレム》か。――どうしてMNの名前は俺たちの世界にある言葉なのだろうと一機は内心首をかしげた。
「しかしこんなポンコツ何に使うんだ?」
「失礼ね、そりゃ旧式だけど、整備はきちんとしてるから余裕で動くわよ。これで穴掘ったり、上から岩落とすトラップ作ったりと頑張ってるんだから」
「あ、あの巨大トラップ群お前が作ってたんか! まあたしかにあんな深い穴人力じゃ無理だろうが……しかし大変だろ」
「なんてことないわよ、MNの扱いは慣れてるし、道具だって揃ってるから余裕で作れるわよ」
「――余裕で、ねえ。まあいいか。で、その見せたいものってのはどこにあるんだよ」
「もう着いたわよ、ほら」
「え?」
 そう一機はマリーの指が示す方向へ視線を向け、
「――っ!」
 思わず息を呑んだ。


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