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楽園のサジタリウス3 十四
――現実に飽きてはいませんか?
――どこかもっと楽しい、自分の才能が生かせる場所に行きたいと思いませんか?
――貴方を、楽園にご招待しましょうか?
「……え?」
ふと、脳裏に何の脈絡もなくどこかで聞いたような言葉が浮かび上がった。
疲れ切った頭ではそれを理解することができず、何の言葉だったか思い出そうとした刹那、
(右斜め後方!)
通信機から声が飛び出してきた。
「!」
誰の声かと判断することもせず、完全に肉体が反射でその場で回転、振り返りざまに砲撃した。
砲弾はかなり至近距離に迫っていた《ウサギ》の胸元を豆腐のように突き抜けていき、撃たれた魔獣はその場に倒れこんだ。
「あっぶね……いかん気抜けすぎてた。接近警報なんてものもないのに油断しすぎだ俺……で」
ギロリとある一点を睨みつけた。視線の先は、機体からそう離れていない場所にあるまだ健在の崖の上。反転した時見つけたのだ。
十数メートル以上ある崖の上には、人が一人立っている。炎が照らすその姿は、遠目でも結構酷いものだった。
髪はボサボサで、服はところどころ汚れており戦場を走ってよじ登ってきたのがわかる。右目と左腕が塞がれている状態でそんなことすればああもなるだろう。手に握った黄土色の石らしきものを口元に当てているが、あれが『ジスタ』とかいう石だと一機は推測した。
「って麻紀、なんでこんなとこいるんだ! 危ないだろうが戦場だぞここ!」
(その戦場を更に危なくしている方に文句言われる筋合いありません。それに、私の仕事は策敵と情報収集のはずでしょフレークさん?)
フレーク、と呼ばれて奇妙な懐かしさを覚えたが、すぐ正気に戻って叫ぶ。
「何がフレークだ、鉄伝じゃないんだから! 死んじまうかもしれないんだから引っ込めよ!」
(そうですね、死んじまうかもしれませんね貴方が)
「なんだと!?」
(トリガーハッピーって人種は一旦銃持つと周り見ないで暴れ回るんですから、危なくて放っとけませんよ。今だって私が通信しなきゃやばかったでしょ?)
うぐ、と口ごもる。全く察知できていなかったのだからそう言われると立つ瀬がない。調子づくと暴れるとは麻紀から飽きるくらい聞かされたことだ。
「だからって、今のお前には《クリティエ》もないんだぞ! そんなところで襲われたら終わりだろ、さっさと逃げろ!」
(おや、心配してくれるんですか? 今までそんなこと一度もなかったのに)
「からかうな、それとこれとは別だ! おとなしく……!」
(左前方!)
「っと!」
声に合わせ大砲を向け発射する。三匹ほど固まって迫っていた《ウサギ》がその中心に撃ちこまれ、上半身の半分を千切られてしまう。身に襲った悲劇に苦痛の叫びを上げることも許されず、爆発に巻き込まれ全身がバラバラになった。
(ほら、私がいないとまともに戦えない。伝説のFMNだからなんだか知りませんが、乗ってるのがこんなのじゃねえ)
「だあぁ、今のはお前と言い合ってたからだ! 余計な心配せんでいいから、おとなしく下がって……!」
一機が言いかけた時、突然地面が盛り上がった。
「……! こいつは!」
気付いた時には遅く、地面から《ウサギ》が何匹も這い出してきた。野生の勘でそのまま近づくのはまずいと判断したか、潜って襲うつもりなのだ。
(一機さん!)
「……なら!」
一瞬で対応を構築した一機の頭脳は、鋼鉄の右腕に命令を伝達し、《サジタリウス》の真下に砲弾をぶち込んだ。
地に潜った砲弾は発射した親とも言うべきあいてにも構わず爆風を叩きつける。地中にその身を伏せて今まさに突撃しようとしていた《ウサギ》は自爆同然の爆発に道づれとなって岩と鉄(分解された砲弾)の散弾銃を喰らって穴だらけになる。《サジタリウス》も直撃を喰らったが、元が重装甲が売りの金属性なためそれほどの損傷を得ず後方に吹き飛ばされる程度であった。
元の重量が重量なのでそれほど飛ぶこともなかったが、尻持ちと地面に落ちて激震したコクピットに一機はクラクラした。
「あたたたた……とっさに思いついたにしては上手くいったな。真っ白毛むくじゃらもだいぶやれたし、好成績好成績」
(何が好成績ですか! 自分ごと爆破って、自殺志願者ですか貴方は!)
「えー、鉄伝ではよくやった手じゃん。囲まれた時とか。第一、大砲ってのは同じ威力の砲弾喰らっても自分が破壊されないよう設計されてるもんさ」
(それは軍艦の装甲の話でしょうが! MNまでそんな設計されてるかわからないでしょ! 砲弾に誘爆する可能性もあるし、もうちょっと考えて行動してください!)
「うるさいなあ、世話女房みたいに小言言うな」
(っ! せ、世話にょ……な、何馬鹿なことほざいてるんです! 左斜め前、三匹来ましたよ!)
妙に声を上ずらせながらも伝達は忘れない。一機も即反応し、大砲を構えた。
「ふん、何匹まとめて来ようが無……駄……?」
慣れた仕草で、敵集団に一発喰らわせてやろうとした途端、突如力が抜け、身体にのしかかってた重みが消失する。操縦席で座ったまま前のめりに倒れる。
(か、一機さん!?)
「やば……こんなに早いだなんて……」
一機にはすぐ何が起こったかわかった。《サジタリウス》との同調が切れたのだ。
理由は考えるまでもなく、体力不足。全神経を集中させ必死に維持していたその時間は、十分にも満たない微々たるものだった。もう一度念じても、ウンともスンとも言わない。シリア・L・レッドナウの時間は終わったのだ。
だとしてもここはゲーム世界ではない。動きが止まった敵に躊躇することなく《ウサギ》は襲いかかってくる。もう脱出も何もできない。出ようとする体力すらなかった。
(一機さぁん!!)
麻紀の悲鳴のような叫びが聞こえてくる。そんな中、一機は唇を噛んだ。
死ねるか、こんなところで。これだけで死ねるか。まだ何も果たしてない。あいつらを救うことだってできてないのに、死ぬだなんて――
残る力を振り絞り、視力を尽くして《サジタリウス》を動かそうとするが、もはや伝説の魔神もそれに応えようとはしなかった。
そんなことをしていると、《ウサギ》が眼前に迫ってきた。大きく口を開け、その牙でこちらを砕こうとする様に戦慄すると、爪が振り下ろされ……
(――だから言ったんだ)
その瞬間、横から光が飛び込んできて《ウサギ》を突き飛ばした。
崖に叩きつけられた《ウサギ》は剣を突き立てられていて、断末魔をしばし上げると絶命した。
「あ……?」
消耗が激しく視界もぼやけた一機が理解できていないと、剣を魔獣の肉体から引き抜いた巨人が言葉を続けた。
(素人は引っ込んでろ、とな)
一機の前に、真紅のマントをはためかせた銀色の巨人、《ヴァルキリー》が颯爽と立ち上がっていた。
「ヘレ、ナ……?」
仲間を殺された二匹の《ウサギ》が激情を露わにして《ヴァルキリー》に突撃するが、それは叶わなかった。
何故なら、横から飛来した無数の矢が、その身に刺さり命を奪っていたからだ。
(ヘレナ様、ご無事ですか!)
(ああ、こっちは構わん、周辺を制圧しろ!)
(了解しました!)
《エンジェル》の弓兵に指示を出しつつ、向かってくる《ウサギ》を一太刀で切り捨て、まだ息のあるものがいれば止めをさしていた。銀色の鎧はさすがに地や砂で汚れてはいたが、大きな損傷は見当たらないので余裕で倒していったのだとわかる。
「……すげえ」
一機はそう呟くしかなかった。ピンチだと心配して《サジタリウス》に乗って大暴れしたが、実はそんな必要なかったのではないか? と思わせるほどの強さだ。そう気付いてあたりを見回すと、親衛隊のMNが《ウサギ》と戦っている。が、それはもはや小規模なもので、戦闘は終息に近づいているのだとわかった。
「俺、余計なお世話だったかなあ……」
(いや、一応敵のかく乱と数を減らすのには役立ったぞ。――混乱したのはこっちも一緒だがな)
独り言のつもりが、聞かれていたらしくヘレナより返事をいただいた。恐ろしく冷たい声で。
(ええ、幸いこちらに人的被害はありませんでしたが、砲弾の雨で危うく死にかけましたね。さて、こんなメチャクチャなことになったのは誰が原因でしょう?)
今度はグレタから一層冷たい刃のような言葉をかけられた。紅潮していた顔が一気に寒冷化していく。
「……とにかく、色々言いたいことはあるでしょうが、一つ言わせて。――助かったよ。ありがと」
それだけ告げると気絶する気で操縦席にもたれかかった。力を抜いていると、うん、とひるんだような声が聞こえてきた。
(ふ、ふん。隊の混乱を収めるため右往左往していて遅れたんだ、礼を言われる筋合いはない)
(……別に助けなくてもよかったのに。私が……)
「? 麻紀何か言った?」
(な、なんでも!)
何か機嫌が悪そうに麻紀が喋ったような気がしたが、意識がもうろうとしている一機にはどんな内容か理解できなかった。
考えるのもおっくうで、改めて寝ようとしたところ、ドンドン叩く音が耳に入ってきた。
「んー……うわっ!」
目を開けたら、コクピットの前にマリーが張り付いていた。ラッタルでここまで登ってきたようだ。
「な、何してんだお前!」
ハッチを開け、コクピットに押し入るマリーはやはり戦闘に巻き込まれたのか服はところどころボロボロでちょっと怪我もしているらしい。でもにししと嬉しそうなのがちょっと気持ち悪い。
「何って、決まってんじゃん。見てたのよあたしたちがずーっと守ってきた『炎の魔神』……《サジタリウス》だっけ? まあいいか。その戦いをよ。ホントすごかったわねえバンバン撃ってぶっとばしてさ。近くで見てて爽快だったわよ。耳キンキン言ってるけど」
「ああ耳鳴りだな。言われてみると俺もキンキン言ってるな。イヤーカットないときついなこれ操縦するの」
「いやあ楽しかったわよあんたの戦い。『魔神』の名に偽りはなかったのね。あんなすごいもの守ってたんだなあって思うと、今までの苦労は無駄じゃなかったって嬉しくて……」
「……だな」
楽しそうな理由が一機にも分かった。先ほど一機は『魔神』なんて無駄なものと言って中傷した。何の役にも立たない木偶の坊だと。それはマリーも思っていたのだろう。しかしそれがこうして一騎当千の活躍をしてみれば、自分たち一族の行いは間違いではなかったと確信が持てる。それが嬉しくて泣きそうなのだ。
「ああ、こうしてその力がわかってみると、惚れ惚れするわね……結構汚れちゃったけど安心して、あたしが完璧に整備してみせるから。そしたらまた戦ってね」
「え、また乗れっての? 勘弁してよ俺もうバテバテで……」
(話の途中悪いが――お前たち動くな)
と、そんなくだらない会話をしていると、突然横やりが入った。
ギョッとして二人が外を見る。そうしたら、《ヴァルキリー》を含んだMN数機がこちらを囲んでいた。
「しまっ……」
そこで一機は自分の愚かさを悟った。マリーは親衛隊の、シルヴィア王国の敵であるグリード皇国の残党。しかも『炎の魔神』を守ってここで防衛線を繰り広げた一族の生き残り。狙われている身なのに敵陣の真ん中でだべっていていいわけがなかった。
やばい、マリーを逃がさないと。一機は焦りつつ言い訳を並べ立てようとする。
「あ、あの、ヘレナ、こいつはたまたまここに来た通りすがりで、俺を……」
(一機、そこにいるのが、マリーという唯一の生き残りで間違いないな?)
「……え?」
一機だけでなく、名前を呼ばれたマリー自身凍りついた。何故自分の名前を知っているのか。自分以外『守護の民』が存在しないことをどうして知っているのか。
そこで思い出した。《サジタリウス》でこちらの戦場に到着して今まで、何度もヘレナや麻紀たちと会話していたが、不自然な発言がいくつもあったではないか。マリーという名前もっと前から知ってなかったか? 大砲持ちだと既に知っていなかったか? 酒を飲んだとどうしてわかっていた? どうして……
(――悪いな。私もまさか、こんな風になるとは思っていなかったんだ)
疑問を投げかける前に、返答がきた。理解できない一機に、突然マリーが胸元に喰らいついてきた。
「うわっ! ど、どうしたんだよ!」
驚くと、マリーは抱きつくようにあるものを握っていた。胸元にぶら下がっている、ヘレナから貰った銀のネックレス。
「……『ジスタ』だ」
「え?」
目を見開いているマリーの視線は、シルヴィア王国の証たる王冠が刺さった剣のマーク、その王冠に付けられているパチンコ玉ほどの石だった。
「この石、小さいけど『ジスタ』だ、間違いない」
「なっ――!」
『ジスタ』。先ほど聞いたばかりの、通信機の役割を果たす奇妙な石。麻紀が握っていたのも同じ黄土色の石であった。一機も驚愕する。
「な……そんな小さい石、使えるのか?」
「……会話は無理。小さくてあっちからの音聞こえない。でも……」
「でも?」
「……こっちの声を聞くだけなら、可能かも」
「んなっ……!?」
言葉を失った。つまりは一方通行の盗聴器ということだ。これで疑問は氷解した。どこからかはわからないが、だいぶ前から一機とマリーの会話は聞かれていたのだ。
しかし、どうしてこんなものをヘレナは持っていたのだろう。そこで昨夜のヘレナとグレタの言い争いを思い出した。肝試しの最中飛び出して迷子になったヘレナに、母親が次にこういったことがある場合に備えて持たせたのではないか。それを知っていてヘレナが一機にネックレスを渡したとしたら、一機の行動を予測してスパイ役をやらせたのか?
それはない。ヘレナの性格上察していて止めないのはおかしい。ヘレナも一機の無鉄砲な真似はわからなかったが、ただならぬ様子から嫌な予感を覚え本当にお守り代わりにあげたのが真実だろう。スパイみたいなことになったのはヘレナでも想定外に違いない。
そして、一機が図らずも情報を流す羽目になったことも。
「ちがっ、俺は……!」
そうじゃない、こんなことするつもりはなかった。などと言い訳じみた口を開こうとしたが、止められてしまう。
「…………」
マリーは何も言わなかった。
裏切り者に対して非難も罵倒もせず、ただこちらを見つめていた。
わかってる、と優しい瞳で語りながら。
「マ、リー……」
この女は全てを理解してくれた。
一機は悪くない、一機のせいじゃない、一機は自分を救おうと頑張ってくれた。そう信じてくれたことが嬉しくはあったが、同時に恥ずかしくもあった。一機がした行為は、救うどころか全てが裏目に出て、結果的にマリーは親衛隊に包囲される羽目に陥っている。
馬鹿、そんな目するな。俺は何の役にも立たなかったのだから――そう告げたかったが、そこで意識がまた薄れる。今度はもう限界らしい。正気を維持できない。
(とりあえず、二人とも降りてきてください。乱暴な真似はしたくありませんので)
グレタの冷徹な声が耳に入ってくる。やばい、まずい。この後のことが容易に想像できるだけになんとかしたかったが、もうMNどころか己の身を動かす力もなかった。自分の無力さに一機は憎悪すら覚える。
マリーは何も言わず、指示に従ってハッチを開けようとする。止めようとしたが、手を伸ばすことも不可能だった。だけどそれに気付いたのが、マリーが背中を向けつつ呟いた。
「……一機」
伸ばそうとしていた手を止めると、マリーは振り返って一言だけ、
「ありがとね」
そうどこか悲しそうな、しかし笑顔で述べた。
「……っ!!」
感謝の言葉に、より悔しさと不甲斐なさがあふれ、「ま……!」と引き止めようとしたが、そこでついに力尽き、前のめりに倒れる。
――ど畜生。
そう口に出すこともできず、一機は意識を失った。
こうして、愚かな男の一世一代の大博打は、だれにとっても最悪な形で幕を閉じた。
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