外・内毒素


◎細菌についての常識
a. グラム陽性菌
  強毒菌:連鎖球菌、肺炎球菌、ブドウ球菌、炭疽菌、破傷風菌、ガス壊疽菌結核菌、ジフテリア菌、放線菌

b. グラム陰性菌
  強毒菌:大腸菌、赤痢菌、サルモネラ菌、ペスト菌、コレラ菌、百日咳菌 腸炎ビブリオ菌、軟性下疳菌、インフルエンザ菌、淋菌

※注意:以上強毒菌は腸管内においては病原性大腸菌を除いて無害だが、全ての大腸菌は腸管外では強毒菌となる。また MRSA は腸管に有害となりうる。

※注意:インフルエンザ菌・百日咳菌を除き、グラム陰性強毒菌は腸管及び泌尿生殖器への病原菌が多く、ペスト菌は全身感染するが、現在日本に存在しない。




◎細菌性食中毒
A. 食中毒起因菌
   腸炎ビブリオ・サルモネラ・病原大腸菌・ブドウ球菌・ボツリヌス菌・
   ウェルシュ菌・セレウス菌・Campylobacter jejuni/coli・Yersinia
   enterocolitica・NAG ビブリオ・Viblio mimicus・Viblio flu-
   vialis・Aeromonas hydrophlia・Aeromonas sobria・Plesio-
   monas shigelloides
 サルモネラ:患者数;48.2% (件数 : 28.9%)
 腸炎ビブリオ:患者数;19.6% (件数 : 31.6%)
 病原大腸菌:患者数;10.8% (件数 : 4.7%)
 ブドウ球菌:患者数; 6.1% (件数 : 10.2%)

B. 症状
 1. 感染型:食品や体内で大量の細菌が増殖し消化管に作用、通常発熱あり。

  潜伏期 原 因 食 症  状
a. 腸炎ビブリオ 8 ~ 20時間 魚介類とその加工品 熱・★腹痛・嘔吐・下痢
☆時に粘血便
b. サルモネラ 12時間前後
(6 ~ 48時間) 肉・卵・サラダ
小動物汚染食品 ★熱・腹痛・嘔吐・下痢
☆時に粘血便
c. 病原大腸菌

 O-157 腸管感染症 1 ~ 3日 特定の物はない
(かき・上水等) 熱・腹痛・下痢
☆水様便
☆時に粘血便
d. Campylobacter 2 ~ 10日 鶏肉
ペット汚染食品
上水 (寒地に多い) 熱・腹痛・下痢
☆時に粘血便
e. エルシニア   動物汚染食品 熱・腹痛・下痢・嘔吐
☆水様便
f. エロモナス   淡水魚 熱・腹痛・下痢
g. プレジオモナス   淡水魚・河川水 熱・腹痛・下痢
h. セレウス菌   ごはん・加熱食品 下痢型・嘔吐型
熱 (少ない)
☆水様便
i. ウエルシュ菌   加熱食品 熱・腹痛・下痢
☆水様便



 2. 毒素型:細菌が産生した毒素が消化管に作用、通常発熱なし。

  潜伏期 原因 (食) 症  状
a. ブドウ球菌 30分 ~ 6時間 乳製品・カマボコ
調理人の傷
瓶詰・真空パック 腹痛・悪心・嘔吐・下痢
★無熱
b. ボツリヌス 数 ~ 36時間 いずし・キャビア 頭痛・眩暈・悪心・嘔吐
眼筋麻痺・末梢神経麻痺
★複視



 3. 追加
  a. 法定伝染病
   ・コレラ:水様便、無熱、輸液・化学療法
   ・腸チフス:泥状便、持続性高熱、徐脈、クロラムフェニコール
   ・細菌性赤痢:発熱、輸液・化学療法

  b. ウイルス
   ・ロタウイルス:水様便、冬に乳幼児に多い、輸液
   ・小型円形ウイルス:水様便、感冒様症状

  c. 原虫
   ・クリプトスポリジウム:水様便、塩素に強い、日和見感染、輸液のみ




◎ツツガムシ病
 刺咬部位は頭髪部、腋窩、腰部などに多い. 刺口は、刺咬 2 ~ 3日後に発赤腫脹、4 ~ 5 日後水疱、その後潰瘍となり、10日目頃には紅暈を伴う陥没
 した黒い痂皮を形成する。
 全身症状は刺咬 10日目前後から、全身倦怠感・四肢痛・頭痛を伴う発熱で
 始まる. 高熱は 1 ~ 2 週間稽留する. 発症 2 ~ 4 日後には顔面・体幹に不定型の小紅斑状発疹 (麻疹 ~ 薬疹様) が出現し、次第に四肢に広がる。
高熱に不相応な遅脈、圧痛を伴う局所リンパ節腫脹、末梢白血球数減少
  (好中球の相対的増加、異型リンパ球出現)、CRP 強陽性が通常みられる。




◎オウム病
 a. 発熱、全身倦怠感、筋肉痛、関節痛などのインフルエンザ様症状をもって
   発症する。
 b. 乾性咳嗽を自覚し、胸部X線写真で異型肺炎類似の陰影を呈する。
 c. 赤沈亢進、CRP 増加などの炎症所見を示すが、白血球数は上昇しない。
 d. 発症前に鳥との接触歴を有することが多い。

※参考:C. pneumoniae TWAR 株による肺炎
 a. 感冒様症状が主でオウム病に比べ軽症である。
 b. 臨床症状や胸部X線所見は異型肺炎に類似している。
 c. 時に集団発生を見る。

1. 症候の診かた
 a. 発熱は急激で高熱とともに悪寒戦慄を来すが、比較的徐脈が見られる。
 b. 全身症状が強く、激しい頭痛、筋肉痛、全身倦怠感を強く訴える。
 c. 激しい咳を訴えるが、痰は少ない。

2. 検査
 a. 赤沈、CRP などの炎症所見の亢進。
 b. 末梢白血球数は減少ないし正常値を示す。
 c. 胸部X線像は、本症に特異的なものはないが、異型肺炎と類似しており淡
   いすりガラス様陰影である。
 d. 喀痰から有意の起炎菌が検出できない。
 e. ウイルス、マイコプラズマに対する血清抗体価の上昇を見ない。



◎小児結核
 初期肺結核症の胸部X線所見のうち、一番多いのは、肺門リンパ節腫脹のみ
 を認めるものである。
 次に多いのは、双極性初期変化群 (肺内の初感原発巣と肺門リンパ節腫脹) を示すもの。
 初感原発巣のみのものは最も少ない慢性肺結核症では、我々の経験では、空洞を有するものが約半数に存在し、病巣の広がりは一側肺野面積を越えないものが多い。
 胸部正面像だけでは、肺門リンパ節腫脹や空洞影の診断が困難なことがあり側面像や断層撮影を必要とすることが稀でない。

※注意:結核菌検査:肺結核では喀痰からの結核菌の検出が重要であるが、喀痰が得られない症例では早朝空腹時の胃液検査を積極的に行う。
治療開始前 3日間の連続採取が必要である。さらに、薬剤感受性検査も必ず行う必要がある。




◎マイコプラズマ感染症
 a. 胸部 X 線写真
   臨床症状や理学的所見が軽いわりには異常陰影をはっきりと認めることが多い。淡い強さを感じさせない肺陰影で下葉に多い。

 b. 喀痰
   グラム染色で単核球、好中球が見られるわりには、細菌が見られない。

c. 白血球数
   11,000/mm 鰌以下のことが多い。

d. CRP:陽性、赤沈値:亢進。

e. 寒冷凝集反応
   特異反応ではないが、本症では 50 ~ 90% に陽性を示す。特異抗体よ
   りも早期から上昇するので有用である。

f. マイコプラズマ補体結合反応 (CF) 、間接赤血球凝集反応 (IHA)
   急性期と回復期のペア血清で抗体価が 4倍以上上昇していれば診断根拠となる.単一血清の場合は CF で 64 倍以上、IHA で 320 倍以上あれば陽性の可能性が強い。抗体価が上昇するまでには発症後数週を必要とするので事後診断となる。

g. 肺炎マイコプラズマの分離
   咽頭ぬぐい液、喀痰、胸水などを用いて分離を試みる。
   1 ~ 数週を要するが分離できれば確診となる。

※参考 1 : 確定診断のポイント
 a. 炎症症状、炎症所見の存在が明白。
 b. 胸部 X 線写真で肺炎像を確認。
 c. 抗体価の有意な上昇、肺炎マイコプラズマの分離。
 d. DNA プローブによる迅速診断が最近開発された。

※参考 2 : 鑑別すべき疾患と鑑別のポイント
 a. ウイルス性肺炎
  ・ウイルスの分離・ウイルス抗原の証明。
  ・抗体価の上昇。
  ・はしか、水痘、サイトメガロウイルス感染症など、系統的ウイルス感染
   症の一部分症状としての肺炎に注意。
 b. クラミジア肺炎
 c. 細菌性肺炎
 d. 肺結核


◎EB ウイルスの補遺
AEB ウイルス
 IMN・CAEBVI・ウイルス関連赤血球貪食症 (VAHS)
 伴性劣性リンパ球増殖症候群 (XLP)
 顆粒リンパ球 (LGL) 増多症
 悪性腫瘍 (バーキットリンパ腫・上咽頭癌・胃癌等)

 a. 検査
  イ. 蛍光抗体法にて VCA (ウイルスキャプシド抗原)、EBNA (特異的核内
    抗原)、EA-DR (早期抗原) に対する抗体を測定
  ロ. EBV リコンビナント蛋白を抗原とする EIA (酵素免疫抗体法) による EA・IgM 抗体と EBNA・IgG 抗体の測定。特異性、感度ともに優れる。

 b. 検体の採取
   IMN の様に急性のものはできるだけ早期に血清を採取、慢性経過のものは定期的に経過を追う。末梢血中の EBNA 陽性細胞の検出目的にはヘパ
リン採血後の buffy coat を検体とする。

 c. 結果の解釈
  イ. VCA・IgG 抗体、VCA・IgM 抗体、EA 抗体陽性で EBNA 抗体陰性は
    初感染パターン。但しVCA・IgM 抗体の陽性は IM で 37 - 86%
  ロ. 急性期 IgM 抗体が陰性でも EBNA 抗体が陰性で VCA・IgG 抗体陽
    性、EA-DR 抗体陽性の場合には初感染。
  ハ. 慢性感染では VCA・IgG 抗体価が高値、VCA・IgM 抗体陰性、EBNA
    抗体陽性。EA-DR・IgG 抗体価も高値のことが多い。
  ニ. リンパ球増殖症候群等重症感染症の一部で抗体反応が不完全の場合は
    末梢血中の EBNA 陽性細胞や EBV 核酸の検出

※EB ウイルス関連腫瘍
 a. 上皮性腫瘍
   鼻咽頭癌、リンパ上皮腫類似癌 (唾液腺癌・胸腺腫瘍・肺癌・食道癌・
   胃癌)、胃癌 (日本人の胃癌の10% 程度)

 b. リンパ腫
   Burkitt 、日和見リンパ腫、血管中心性ホジキン病、鼻腔リンパ腫、膿
   胸関連リンパ腫、VHAS

 c. 非上皮性腫瘍
   平滑筋肉腫




◎インフルエンザで、このような状態になったらヤバイ
1). やばい、というのが「死ぬかも知れない」、ということであれば、明らかに「意識障害」。
 a. とにかく進行が早い。朝高熱が下がらない、午後にはもう意識不明、たち
   まち呼吸麻痺。
 b. 表情がなくなっている患者はやばい (髄膜炎などよくあるよう)
 c. 痙攣発熱を主訴に来院した患者を、引っ張るな。
 d. encepharitis Reye Syndrome なんか恐いですねぇ。
  ※注意
   アスピリンは何かと、後でもし不運にもライ症候群なんかに遭遇したときもしかして わたしのせいか? なんて思うのはいやだから避ける。

2). インフルエンザ筋炎も侮り難い。CPK6000 とかいうのもある。
  この場合、急性尿細管壊死に至る。

3). あとは別の意味の「インフルエンザ」で急性喉頭蓋炎。
  インフルエンザ菌、パラインフルエンザ菌で起きる重病。

4). Coxakie B ウイルスによる、ウイルス性心筋炎。これも恐い。

5). お腹にくる風邪が続いたときも、その他の胃腸疾患と誤診しやすい。
  (まじめにやらないと虫垂炎だったり、クローン病だったりする)

6). もちろん、下がらない高熱と食欲不振には厳重注意。



◎インフルエンザの補遺
イ. ABC と三つの型があり病原性は A が一番強い。 (以下 A について)

ロ. さらに細かい型分類で、13 種類の H 亜型と 9 種類の N 亜型が区別されている。 (H・N はウイルス表面抗原)

ハ. スペイン風邪 (1918年) 、ソ連風邪 (1977年) は H1N1 であった。

ニ. 1997年に有名になった香港風邪は H5N1。その他過去には H2N2(1957
  年、アジア風邪) 、H3N2 (1968年、香港風邪) がある。

ホ. インフルエンザはトリやブタを介してヒトに伝染し、更にヒトからヒトに写る。


◎口角炎の診断と治療
口角炎は口唇炎の限局型とみなされる。口角の交連部の性質として唾液が貯留し易く、その中の微生物や物質の影響を受け易いことが原因だろう。

1. 感染性口角炎
 1). カンジダ性口角炎 (candidial perleche;Candida albicans による)
  a. 鳶口瘡 (thrush)
    T細胞機能の弱い乳児に発症
  b. カンジダ性口角炎
    年長の幼児や小児に発症し自覚症状はない。成人では基礎疾患としての糖尿病やステロイド・抗生剤の長期服用中の患者に発症。局所治療は抗真菌剤のクリームや液剤を塗布。

 2). ヘルペス性口角炎 (HSV-I 型が多い)
   局所的にはアラセナ軟膏やゾビラックス眼軟膏 (粘膜に) が有効。

2. 非感染性口角炎:長期に亘るが、アズノール軟膏の頻回塗布が有効。
 1). 口囲炎を伴った口角炎
  a. 口囲の舌なめや唾液による口囲炎に伴い口角炎を発症
  b. 口唇の不快感による舌なめの原因に注意:時には歯磨き粉やガムが原因
    のことがある。注意深い問診が必要。

 2). 栄養障害による口角炎
   ビタミンB群、亜鉛不足、胃切除後の鉄蛋白などの不足の際に発症。

 3). 手術後、神経麻痺後の口角炎
   口唇部手術後、入れ歯の刺激 なども原因となる。



◎耐性菌感染症
A. MRSA (methicillin resistant Staphylococcus aureus) 感染症
 ※PCase 産生黄色ブドウ球菌 (1941年頃) 、多剤耐性黄色ブドウ球菌
   (1955年頃) 、MRSA (1980年頃)など黄色ブドウ球菌は耐性になりやす
  い菌である。
 ※エンテロトキシンや TSST-1 (toxic shoc ksyndrome toxin-1) 産生株
  は重症になり易い。

 1. MRSA の変遷
  a. コアグラーゼ IV 型・エンテロトキシン A 型・TSST-1(-)
    FOM 、CMZ に感受性あり。創感染、カテーテル敗血症、肺炎、腹腔
    内感染。

  b. コアグラーゼ II 型・エンテロトキシン B 型・TSST-1(-)
    カルバペネムに感受性あり。殆ど腹腔内感染。

  c. コアグラーゼ II 型・エンテロトキシン C 型・TSST-1(+)
    MINO に感受性あり。70% は腹腔内感染。30% は腹腔内感染。
    僅かに MRSA 腸炎。

  d. コアグラーゼII型・エンテロトキシンAC型・TSST-1(+)
    ABK (abekacin) に感受性あり。MRSA 腸炎・腹腔内感染。25% が
    創感染、カテーテル敗血症、肺炎。

  e. コアグラーゼ VII 型・エンテロトキシン(-)・TSST-1(-)
    ABK に耐性。大部分創感染、カテーテル敗血症、肺炎。

 2. 臨床
  a. 背景因子
    年齢、糖尿病、肝硬変、ステロイドなど。
   ※病院という交叉感染しやすい環境で第三世代以降のセフェムなど抗菌
    スペクトルの広い抗菌剤を予防的投与した、大きな侵襲を受けた患者

  b. 早期診断
    PCR 法は有用、しかし材料を鏡検して MRSA を疑うのが実際的。

  c. 感染症
    MRSA 腸炎、創感染、カテーテル敗血症、肺炎、腹腔内感染。
   イ. MRSA 肺炎:膿性痰、粘液膿性痰。発生頻度は低い。
   ロ. 重症 MRSA 腸炎
   ・コアグラーゼ II 型・エンテロトキシン A 型 or AC 型・TSST-1(+)
   ・突然の高熱、血圧低下、腹部膨満、下痢、意識障害、白血球減少、血
    小板減少、腎機能障害、肝機能障害などTSS様症状。
   ・バンコマイシン (VCM) とともにステロイドや免疫グロブリン投与は
    有効。

 3. 予防
   手洗い、抗菌薬の使用規制、感染患者の隔離。易感染患者の逆隔離。

B. PRSP (penicillin resistant Streptococcus pneumoniae) 感染症
 ※肺炎球菌は病原性が高く、感染防御機構の弱い乳幼児、老人、免疫不全宿
  主で重症化。
 ※鼻腔、咽頭等の常在菌。呼吸器感染症、化膿性髄膜炎、化膿性中耳炎。

 a. ペニシリン G の MIC が 0.12μg/ml 以上のもので 2.0μg/ml 以上のも
   のは高度耐性。

 b. 細胞壁合成に関与する酵素のペニシリン結合蛋白 (PBP)への薬剤の親和性
   の低下が耐性獲得の原因とされる。β-ラクタム系抗菌剤に多剤耐性化。

 c. 通常の感受性菌 (PSSP) と比較して、菌体外毒素や酵素の産生能は低下せず、病原性は同等と考えられる。

 d. 1967年に初めて分離、現在肺炎球菌の 30 ~ 50% が PRSP だろう。
   但し MIC が 0.12μg/ml 以上の高度耐性株はまだ少ない。

 e. 容易にヒト-ヒト伝播。多剤耐性化しているので難治、重症化しやすい。

 f. 莢膜血清型での型別でいえば、19 型と 23 型が多く、小児では全身感染を起こすことで知られている。

 g. 感染防御機構の弱い宿主に発症して急速に症状が進展、悪化する。

 h. カルバペネム系抗菌薬が PRSP 感染への第一選択剤。

 i. 成人ではニューキノロンも効果があるが、中でも SPFX 、TFLX が効果。
   (妊婦や授乳中には禁忌)

 j. 予防
   ヒト-ヒト伝播に注意。ワクチン接種。

C. バンコマイシン耐性グラム陽性球菌
 a. バンコマイシン耐性 MRSA
 b. バンコマイシン耐性腸球菌

D. ESBL (extended-spectrum β-lacutamase) 産生菌感染症
 a. オキシム型セフェムやモノバクタムを加水分解するβ-lacutamase を有
   する。

 b. ESBL 産生菌の多くは肺炎桿菌や大腸菌より検出される。
   肺炎桿菌や大腸菌の 15% くらいが ESBL 産生菌。

 c. 我が国では、院内感染として長期入院の患者で、気管カテーテルや尿道カ
   テーテルを施された患者に多い。

 d. ABPC をはじめ、CTX・CAZ・AZT・CFPM にも耐性を示す。

 e. LMOX (ラタモキセフ) 、IPM (イミペネム) には感受性あり。
   CVA (クラブラン酸) 添加で ABPC 、CTX に感受性が回復する。

 f. ESBL には多くのタイプがあり、通常の MIC 測定やディスク試験だけで
   ESBL 産生菌と判定するのが難しい場合がある。

 g. ESBL 産生菌は薬剤感受性試験で広域ペニシリン、広域セファロスポリン
   モノバクタムなどに感受性ありと判定されたとしても、これらには耐性を示すと考えた方がいい。

 h. 肺炎桿菌や大腸菌で広域βラクタム剤に低感受性 (MIC >= 1μg/ml) の菌
   株が検出されたら、まず ESBL 産生菌の存在を疑って、適切な治療薬を選択。

 i. ESBL 産生遺伝子の殆どがプラスミド上にあり、これは菌と菌の接触によ
   り簡単に伝達されるため、一旦検出されると急速に広がる危険性がある。

 j. 緑膿菌にも ESBL 産生遺伝子が見つかったという報告もある。

E. カルバペネム耐性菌感染症
 ※カルバペネム系抗生剤はグラム陰性桿菌の産生するβ-lacutamase よっ
  て分解されないし、PCase や CSase を産生するβ-ラクタム耐性菌にも
  有効でグラム陰性桿菌感染症への切り札。

 a. メタロ-β-lacutamase (IMP-1 など) や Sme-1型-β-lacutamase を
   産生して耐性を獲得。さらに外膜蛋白のD2ポリン蛋白 (D2ポリン孔)の減少も原因。

 b. IMP-1 産生菌は消耗性疾患や術後患者で、感染予防などの為に長期間、
   カルバペネムやセファマイシン、第三世代 β-ラクタム薬を点滴されてい
   る患者の尿 (42%) 、喀啖 (22%) 、胆汁 (5%) 、膿 (22%) 、滲出液などから検出。

 c. 感染なのか定着なのかは判断困難な場合が多いが、S.marcesens や
   P.aeruginosa より IMP-1 産生菌が分離されている。

 d. IMP-1 産生菌は CAZ (セフタジジム) とスルペラゾン (CPZ + SBT) の双方に高度耐性を示す。

 e. IMP-1 産生菌の早期発見には、尿路感染の有無に関わらず、定期的な尿
   の細菌検査と感受性検査が重要。

 f. 耐性菌の増加を防ぐためには安易にカルバペネム系抗生剤 (チエナム・カ
   ルベニン・メロペン) を使わず、ペニシリンやセフェム系β-ラクタム剤
   やマクロライド剤を効果的に使い分けることが肝要。

F. 多剤耐性結核菌感染症
 1. 結核化学療法の最近の知見
  a. 空洞や乾酪巣中の増殖の早い菌で細胞外にあるものは INH が最も効果
    あり、殺菌的に働く。
  b. 緩やかに増殖する半休止期の菌は RFP により効果的に殺菌される。
  c. マクロファージ内の酸性環境下では PZA が最も効果的。
  d. 一次抗結核剤:INH・RPF・PZA・EB・SM
    二次抗結核剤:CPM・KM・EVM・TH・PAS
  e. 現在は INH・RPF・PZA・SM を中心とする多剤併用療法が中心
    INH:殺菌的 (滅菌的)、0.2 ~ 0.5g/日
    RPF:殺菌的、滅菌的、0.45g/日
    PZA:滅菌的 (酸性環境下、細胞内)、1.5 ~ 2.0g/日
    SM :0.5 ~ 0.75g (連日) または 1.0g (2回/週)

 2. 結核菌の薬剤耐性は染色体上の突然変異によるものと思われている。
   今のところ多剤耐性結核菌の集団発生は HIV 感染者に主にみられてい
   る。

 3. 多剤耐性非定型好酸菌症の問題 (詳細は略す):MAC 症では抗結核薬の適
   用や感受性の決定が困難で多くの問題が残る。

 4. 多剤耐性結核の治療
  a. 感受性を確認して、少なくとも二剤を投与。
  b. INH・RPF の両方に耐性の場合、EB・SM にも耐性のことが多い。
    この時は、感受性のある新しい三剤を菌が陰性になるまで継続し、その
    後、少なくとも二剤を 12か月投与。治療は 2年に及ぶ。
  c. キノロンやアミカシンも試みられている。
  d. 多剤耐性結核でも初回未治療例は治癒の可能性があるが既治療例は難治である。




◎伝染性紅斑・手足口病の登校 (園)停止に関する見解
A. 伝染性紅斑
 伝染性紅斑はヒトパルボウイルス B19 の感染症である。顔面の蝶型の紅斑
 に続いて四肢に綱目状 (レース状) の紅斑の出現で診断される。通常感染後
 17 ~ 18日後に発疹が出現する。ウイルスは感染後 5 ~ 10日に血清及ぴ気
 道分泌液中に陽牲となるが、発疹出現の時ではウイルスの排泄はほとんどな
 い。その他附記に記したような問題点はあるが、すでに発疹出現前に他への
 感染は拡大しており、発疹出現後の出席停止が本症の学校での蔓廷防止に意
 味があるとは思えない。
 したがって発疹期にある患児を他への感染を理由にして登校 (園) を停止させ
 る必要はないと考える。ただし、本症には合併症もみられることがあり、
 個々の症例の最終判断は主治医が決めることになる。以上の考えに基づいて
 地域の学校医 (または医師会) で見解を統一しておくことが望ましい。

※附記
 1. 四肢、躯幹の発疹の消失には約1週間を要する。
   また顔面の紅斑は 7 ~ 10日ぐらい持続し、日光に当たると再燃してひど
   くなることもある。

 2. 発疹出現後 1週間以内にウイルス DNA が血中に証明された報告がある
   (この DNA は PCR 増幅でなくフルサイズ DNA である)。
   したがって、発疹発現後数日間は感染性はあるものと考えられる。

 3. 伝染性紅斑の合併症として、関節痛、関節炎、脳症、溶血性貧血等が知ら
   れている。

 4. ヒトパルボウイルス B19 は、骨髄中の赤芽球系細胞へ感染するので、遺
   伝性球状赤血球症、鎌型赤血球症などでは無形成発作 (aplastic crisis)
   をおこすことがある。
   また先天性及び続発性免疫不全患者では、持続感染を起こし重症の貧血を
   誘発することもある。

 5. 妊婦が罹患すると、流産、死産、胎児水腫などをおこすことがある。

B. 手足口病
 手足口病はエンテロウイルスの感染であり、コクサッキーウイルス A16型、
 エンテロウイルス 71 型による報告がほとんどである。コクサッキーウイル
 ス A4 、5 、6 、l0 型の報告もある。口腔内の粘膜疹 (アフタ様) と手のひ
 ら、足の裏、膝、臀部の米粒大の水疱が特徴である。特記すべきは中枢神経
 系合併症で、髄膜炎が主であるが、きわめてまれに弛緩性麻痺をおこす。ウ
 イルスは口腔内、便中に排泄され、飛沫感染、経口感染をおこす。不顕性感
 染が多い。潜伏期間は 3 ~ 6日でウイルスの排泄期間は長く、咽頭から 1
 ~ 2週間、便から 3 ~ 5週間排泄される。本症の場合は、発症後のウイルス
 排泄期間が長く、実質的に登校停止で感染を予防することは困難である。
 また全体的にみて不顕牲感染も多く症状も軽徴のため、本症をもって他のエ
 ンテロウイルスと分けた特別の扱いは不要である。したがって本症の発疹期
 にある患児でも、他への感染のみを理由にして登校 (園) を停止する積極的意
 味はないと考える。
 ただし、本症には合併症も見られることがあり、個々の症例の最終判断は主
 治医が決めることになる。以上の考えに基づいて地域の学校医 (または医師
 会) で見解を統一しておくことが望ましい。

※附記
 1. 発熱があっても1日程度の軽症例が多い。
   口内疹による痛みで食べ物がとれず脱水症をおこすことがある。
 2. 髄膜炎を中心とした中枢神経合併症があるので、臨床症状と経過に注意し
   個々の症例については主治医の判断にまかせる。






◎性感染症(STD)と病原微生物
  病 原 体 疾  患
a.ウイルス
  Herpes simplex virus1型、2型 性器ヘルペス
Human Papillomavirus 6型、11型 尖圭コンジローマ
Molluscum contagiosum virus 陰部伝染性軟属腫
HIV AIDS
Hepatitis B virus B型肝炎
HTLV-1 成人T細胞性白血病
Cytomegalovirus サイトメガロウイルス感染症
Epstein-Barr virus IMN
b.マイコプラズマ
  Ureaplasma urealyticum 尿道炎
Mycoplasma hominis 膣炎・骨盤内感染症
c.クラミジア
  Chramydia trachomatis (L1~3) 鼠徑リンパ肉芽腫症
Chramydia trachomatis (B~K) 尿道炎・子宮頚管炎・
d.細菌
  Treponema pallidum 梅毒
Neisseria gonorrhoeae 淋菌感染症
Haemophilus ducreyi 軟性下疳
Calymmatobacterium granulomatis 鼠徑肉芽腫症
Gardnerella vaginalis 膣炎
Group B streptococcus 膣炎
Shigella,Salmonella 腸管感染症
Campylobacter 腸管感染症
e.原虫
  Trichomonas vaginalis 膣炎
Entamoeba Histlytica アメーバ赤痢
Giardia lamblia ランブル鞭毛虫症
f.真菌
  Candida albicans 膣炎、亀頭包皮炎




◎ペットからうつる主な病気
病 名 動 物 病原体 感染方法 ヒトでの症状
ネコひっかき病 ネコ   引っ掻き傷、咬傷
ノミによる刺傷 発熱、リンパ節腫脹、髄膜炎、脳炎
パスツレラ症 イヌ、ネコ等 G (-) 短桿菌 引っ掻き傷、咬傷、エサの口移し、空気感染 リンパ節腫脹、sepsis、
骨髄炎、髄膜炎
トキソプラスマ ネコ Toxoplasma
gondii 糞で汚れた砂中や、体毛に付着した虫卵を経口で 流産、死産、リンパ節炎、網脈絡膜炎
イヌ・ネコ回虫症 イヌ、ネコ等 Toxocara canis,cati 糞で汚れた砂中や、体毛に付着した虫卵を経口で 肝脾腫、発熱、視力低下、飛蚊症、網膜芽細胞腫
イヌ糸状虫症 イヌ Dirofilaria
immitis 蚊の刺傷 肺にコイン陰影
皮膚糸状菌症 イヌ、ネコ   直接接触 発疹、皮膚炎
レプトスピラ症 イヌ、
ネズミ等  
下水、泥を介して四肢傷口より感染 発熱、全身倦怠、筋肉痛、黄疸、出血経口、腎障害
Q 熱 ウシ、ヒツジ、
イヌ、ネコ等 Coxiella
burunetii 汚染された粉塵より経気道的に 急激な発熱
エルシニア症 イヌ、ネコ、ネズミ等 Yersinia sp. 排出物の汚染物より経口で 食中毒、胃腸炎
カンピロバクター症 イヌ、ネコ小鳥 Campyrobacter 排出物の汚染物より経口で 食中毒、胃腸炎
オウム病 小鳥 Clamydia
psittasi 乾燥した糞の吸入エサの口移し 発熱、咳、肺炎
クリプトコックス症 ハト、小鳥   乾燥した糞の吸入 髄膜脳炎、肺炎
サルモネラ症 ハ虫類(ミドリガメetc)
イヌ、ネコ   排出物の汚染物より経口で 下痢、食中毒
アメーバ赤痢 ハ虫類(ミドリガメetc)
サル(100%)   排出物の汚染物より経口で 血便、肝膿瘍




◎ボツリヌス感染症(Clostridium botulinum感染症)の比較
  食餌性ボツリヌス症
(ボツリヌス中毒) 創傷ボツリヌス症 乳児ボツリヌス症
発症様式 生体外毒素型 生体内毒素型 生体内毒素型
年 齢 全ての年代 小児、薬物中毒者etc. 生後3週~8か月
性 別 男=女 男>女 男=女
毒素型 A、B、E A、Bが多い AB(C、E*、F*)
毒素吸収部位 小腸上部 創傷箇所 大 腸
原因食品 いずし、キャビア
からしレンコンetc. ─── ハチミツ、ほか
潜伏期間 12~36時間(~14日) 不 明 3~30日
臨床症状
 発 熱 な し あ り 通常なし
 重要症状 球麻痺、神経麻痺 同左(発熱の有無のみ)
floppy infant 便秘、神経麻痺
SIDSとの関連 な し 不 明 深い関連がありそう
致死率 約10~20% 約15% 1.3~2.9%以下
予防法 摂食直前の加熱 な し 一歳未満の幼児には
ハチミツを与えない
抗毒素血清療法 可及的早期に必須 可及的早期に必須 勧められない**

 ※注意
 (*) :それぞれE型毒素産生菌(Cl. butyricum)、F型毒素産生菌(Cl.baratii)によるもの
 (**):抗毒素血清が乳児ボツリヌス症の経過や予後に好影響があるかどうか不明。
    さらにアナフィラキシーや血清病をおこす可能性もある。




◎acute human immunodeficiency virus type-1感染の症状
 ヒト免疫不全ウイルス-I型(HIV-I型)感染症の症状
 発熱(80~90%以上)> 倦怠感(70~90%以上)> 皮疹(40~80%以
 上)> 頭痛(32~70%)> リンパ腺症状(40~70%)> 咽頭炎(50~
 70%)> 筋肉痛または関節痛(50~70%)> 吐き気・嘔吐または下痢
 (30~60%)> 盗汗(50%)> 無菌性髄膜炎(24%)> 口腔内潰瘍(10
 ~20%)> 陰部潰瘍(5-15%)> 血小板減少症(45%)> 白血球減少
 (40%)> 肝酵素増加(21%)




◎EBウイルス関連疾患と抗ウイルス抗体価
VCA抗体 EA抗体 EBNA抗体
IgM IgG IgA IgG IgA IgG
未感染者 (-) (-) (-) (-) (-) (-)
既感染者 (-) (+) (-) (-) (-) (+)
IMN
 急性期 (++) (+) (-) (+) (-) (-)
 回復期 (-) (++) (-) (+) (-) (-)
 回復後 (-) (+) (-) (-) (-) (+)
VAHS (+)~(-) (++) (-) (++) (-) (-)~(+)
慢性EBV感染 (+)~(-) (++) (-) (++) (-) (-)~(+)
Burkitt (-) (++) (-) (++) (-) (++)
上咽頭癌 (-) (++) (+) (++) (+) (++)
日和見リンパ腫 (+) (+++) (-) (+++) (-) (-)~(+)
Hodgkin病 (-) (++) (-) (++) (-) (+)




◎重症熱帯熱マラリアの基準(WHO、1990)
 ○脳性マラリア
  熱性痙攣、髄膜炎、脳炎と区別する

 ○高度の貧血
  Ht<15%、Hb<5g/dl(正球性貧血)

 ○腎不全
  尿量<400ml/24h

 ○肺水腫またはARDS

 ○低血糖
  血糖値<40mg/dl

 ○循環虚脱
  収縮期血圧<70mmHg

 ○自然出血
  歯肉、鼻、消化管からの自然出血あるいはDICの基準に合致

 ○反復性全身痙攣
  熱性痙攣と区別する

 ○アシドーシス
  動脈血PH<7.25、血清HCO3<15mmol/l

 ○ヘモグロビン尿症・黒水熱

 ※脳性マラリアに勧められない薬剤
  ステロイド、抗炎症薬、低分子デキストラン抗浮腫薬(マニトールな
  ど)、アドレナリン、ヘパリン、プロスタサイクリン、トレンタール、高
  圧酸素療法、サイクロスポリンA、免疫血清



◎風邪症候群、風邪様症状と嘔吐・下痢など胃腸症状の関係
 a.風邪の原因が下痢を起こす場合
  特に乳幼児はかぜに伴って嘔吐、下痢、腹痛、食欲不振など消化器症状を
  合併を認めることが多い。インフルエンザではウイルス型、年齢、流行
  年、報告者によって差がある。小児に多く成人では少ない。小児の報告で
  は下痢の合併は2~21%となっている。

 b.下痢の原因が風邪症状をおこす場合
  1.ロタウイルス感染症
   ・小児の冬季の代表的な消化器疾患
   ・6か月~3歳の乳幼児を中心に流行。年長児や成人の場合もある。
   ・嘔吐(90%以上)、下痢(ほぼ100%)、発熱が主症状
   ・約1週間で軽快
   ・咳、鼻水などの呼吸器症状を30~40%に認める。

  2.小型球形ウイルス(SRSV)感染症
   ・年間を通じてみられるが、晩秋から冬季に多い。
   ・成人のカキ関連非細菌性食中毒の大半、および学童・生徒のインフル
    エンザ様疾患の集団発生例の一部からSRSVが検出された。
   ・小児を中心に、散発または集団発生。
   ・嘔吐、下痢、腹痛が主症状。発熱はないか、あっても軽度。症状のあ
    る期間は3日以内。
   ・「集団かぜ」例では、発熱・頭痛・咳・咽頭痛はインフルエンザ群に
    多く嘔吐・下痢はSRSV群に効率だった。しかしSRSV群でも前記呼吸
    器症状は25%に認められる。

  3.腸管アデノウイルス感染症
   ・アデノウイルスには49の血清型あり。40と41型(F群、enteric
    adenovirus)は消化器症状を主に起こす。
   ・年間を通じてみられ季節はない。
   ・乳幼児の疾患で、殆どロタウイルス感染症の症状と同じだが、発熱が
    少ない。
   ・上気道症状を約30%に認める。
   ・(非腸管アデノウイルス感染症では発熱、上気道症状が強く、下痢・
    嘔吐は少ない)

 c.風邪と関係ないはずだが風邪と診断される場合
  ・軽症細菌性赤痢:ソンネ菌による
秋から冬の小児赤痢で、集団発生し、下痢・腹痛・嘔吐を伴う風邪と診
断され易い。
  ・腸管出血性大腸菌感染症(O-157など)でも病初期は風邪と診断される
   こともある。

 d.風邪と下痢の原因が別である場合
  呼吸器症状と消化器症状が同時期に起こっても原因が一つとは限らない。
  例えばロタウイルス感染時に同時にRSウイルスやアデノウイルスなどの呼
  吸器ウイルス感染が起こっている場合もある。

 e.風邪の治療薬が下痢を起こす場合
  抗菌薬使用時は偽膜性腸炎や薬剤関連出血性腸炎などの重篤な疾患を見逃
  さないことが大切。特に小児例では困難が予想される。





◎インフルエンザ脳症
 1.インフルエンザ脳炎
  ・一次性脳炎
   急性期に発症、CSFや脳組織よりウイルス検出、A(H1N1、スペイン)
   がパーキンソニズムを後遺症として残した
  ・二次性脳炎:自己免疫、アレルギーによる

 2.インフルエンザ脳症
  a.ライ症候群
   主に小児期、インフルエンザと水痘に多い、意識障害、CSF中にの細胞
   数8/mm^3 以下、肝機能障害、血中アンモニア上昇、低血糖出血傾向。
   ・二つのタイプがある
    1).5歳以上の年長児、インフルエンザと関連、発熱が治まったあと発
      症アスピリンとの関連あり。
    2).2歳以下の乳幼児、インフルエンザとの関連は弱い、解熱前に発
      症、アスピリンとの関連が薄い。我が国に多い。様々な先天性代謝
      異常の集合体か?。

  b.小児急性壊死性脳症
   インフルエンザ脳症の中で比較的多い。両側対称性に、視床、脳幹被蓋
   、大脳小脳の髄質に浮腫、点状出血。1歳前後の乳幼児、先行感染は高
   熱を伴うウイルス感染でインフルエンザと突発性発疹に多い。日本・台
   湾・東アジアに多い。発熱中、意識障害・痙攣・昏睡・除脳硬直。肝機
   能障害あるもアンモニアの上昇を認めない。CSF中蛋白増加あり。死亡
   率30%、原因不明。

  c.Hemorrhagic shock and encephalopathy(HSE)症候群
   乳幼児、hypovolemic shock、意識障害、痙攣、出血傾向(ないし
   DIC)、乏尿。高熱、下痢、代謝性アシドーシス、肝機能・腎機能異
   常。原因不明、予後不良。





◎肺結核の初回標準治療法
標準治療法(A):初期2カ月間はINH、RFP、PZA、SM(またはEB)の
         4剤併用。
         その後INH、RFP(EBを加えてもよい)の2~3剤併用
         4カ月間。
         合計6カ月間。
標準治療法(B):INH、RFP、SM(またはEB)の3剤併用6カ月間。
         その後INH、RFPの2剤併用3~6カ月間。合計9~12カ月
         間(ただしSMは初めの2~3カ月間は毎日、以後週2目)。
標準治療法(C):INH、RFPの2剤併用を6~9カ月間。


〔適応基準〕喀啖塗抹陽性例には標準治療法(A)または(B)。
 その他(喀啖塗抹陽性・培養陽性あるいは陰性、気管支内視鏡下塗抹陽性、
 その他の症例)は、病状により(A)、(B)、(C)の中から適切なもの
 を選択。




◎肺結核の再治療法
患者の化学療法歴を考慮して、原則として未使用抗結核薬の三剤併用で開始し、
耐性結果が判明した時点で変更する。多剤耐性菌に対して、やむを得ず不完全
耐性を示す薬剤を使用する場合もある。既往にINH、RFPやSM、EBの投与歴が
あっても、耐性でなければこの四剤を使用することも可能である。アミノグリ
コシド系薬剤は副作用のため一剤しか使用するべきではない。
  再治療の場合は初回治療より長い期間の治療が必要となる。INHやRFPのい
ずれかを欠いた多剤併用治療の場合には、二~三年の治療期間が目安となる。
耐性と判定するための濃度が1999年11月に改正された。INHは0.2μg/ml、
RFPは40μg/mlとなっている。





◎熱帯性感染症の潜伏期

10日未満
・Lassa fever
・Leptospirois---7~12 days
・Dengue fever
・Typhoid fever---7~14 days
・Typhus
・Relapsing fever(Borrelia recurrens)
・Yellow fever
・Plague(Yersinia pestis)
・Trench fever(Bartonella quintana)
・Meningococcal disease(Neisseria meningitidis)
・Rocky Mountain spotted fever
10~30日
・Amebiasis(Entamoeba histlytica)
・HepatitisA---2~4 week
・Trypanosomiasis
・Malaria
・Lassa fever(鳥越注:上記10日未満という場合もある)
・Epidemic hemorrhagic fever(hantavirus)---1~3 week
・Brucellosis
・Schistosomiasis
・Typhoid fever(鳥越注:上記10日未満という場合もある)
・Babesiosis
3か月より長い
・Liver abscess(Entamoeba histlytica)
・Malaria(鳥越注:上記10~30日という場合もある)
・Bartonella bacilliformis
・Trypanosomiasis(鳥越注:上記10~30日という場合もある)
・Tuberculosis
・Hepatitis C
・Babesiosis(鳥越注:上記10~30日という場合もある)
・Hepatitis B
・Visceral larva migrans(toxocara)
・Acute infection with the human immunoceficiency virus
 →6 week

☆なおこのリストは単なる参考程度である(parenthesis)



◎症状からみた輸入感染症
症 状 潜 伏 期 間 主 な 疾 患
1. 下痢 短い(1W以内) 細菌性赤痢、コレラ、旅行者下痢症(病原性大腸菌、サルモネラ、キャンピロバクターなど)
比較的長い~ アメーバ赤痢、ランブル鞭毛虫症(ジアルジア症)、長い(1W以上)回虫症、鈎虫症、糞線虫症、条虫症、住血吸虫症
2.発熱 短い(1W以内) デング熱、黄熱、紅斑熱、ペスト、非チフス性サルモネラ症
比較的長い ウイルス性出血熱(ラッサ熱、エボラ出血熱 マールブルグ病など)、日本脳炎、急性灰白髄炎(ポリオ)、ツツガ虫病,腸チフス、パラチフス、ブルセラ症、マラリア、トリパノソーマ症、シャーガス病
長い(2W以上) 各種肝炎、マラリア(熱帯熱マラリア以外)、アメーバ性肝膿瘍、カラアザール(内蔵リーシュマニア症)
3.発疹 短い(1W以内) デング熱、紅斑熱
比較的短い ウイルス性出血熱、ツツガ虫病、腸チフス、パラチフス
(皮膚炎/移動性皮膚腫瘤) 皮膚リーシュマニア症、オンコセルカ症(ブユが媒介)鈎虫症、顎鈎虫症、旋毛虫症



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