親友の小説家 古森 啓二君の小説
あまり売れてないのですが、僕は取っても好きなんです。
今回は、ここで書き下ろしてくれる
『三月の嵐』って言う作品を紹介します。
僕の友人の作品なので盗作はいけませんよ。
2010年1月1日開始です。
書下ろしですから連作になるので宜しく。
良かったら、友人知人の方にも宣伝して下さいね。それでははじまりぃ～
『3月の嵐』 作 古森 啓二
私は、朝長 敬一。
世間では殺人鬼と呼ばれる狂人のようです。
45歳になった今年で37人殺しました。
捕まって死刑になるまでに後、何人殺すのでしょうか。
殺す相手は、誰でも。
そのときの状態で男女関係無しに殺します。
なぜ人殺しをするかって？
殺す相手は、恨みもなければ、会ったことも無い人です。
ただ、殺すことに依存しているんですよ。
殺すことで、気持が落ち着くんです。
殺したい。
人を殺したいって思い始めるとどうしようもなくなるんです。
それも、なぜか3月に思い感じるんです。
この歳になると、今まで誰にも知られてはいけないと思ったことが、みんなに
知ってもらいたいって思うようになってきたんです。
警察の人にも身近に感じてもらいたいって
15年前の殺人の時効がもうすぐ来ます。
それ以前の殺人と合わせて10人の殺人が時効になっている。
これから毎年時効になる殺人が増えていくんです。
私が死ぬまで、続くんですよ。
1991年 3月8日 午前5時50分
大阪市北区中ノ島公園で死体が発見された。
周辺の南側はオフィス街、北側はファッション歓楽街に近いが、市役所、大阪
中央公会堂、図書館と言った大阪文化の中心にある大阪人なら誰でも知って
いる大きな公園。
大阪の中心を走る御堂筋の大江橋の下にある公園で、朝の散歩をしている
近所の老人夫婦によって発見された。
着衣の乱れもなく、首を鋭利な刃物で半分近く切られていた。
死体の周辺は、血しぶきで染まり、発見した老夫婦は腰が抜けるほど驚いた
らしい。
犯行現場から歩いて10分くらいのところに曽根崎警察があり、直ぐに殺人課
の刑事が到着した。
被害者は25歳から35歳の男性。 殺害時刻は昨夜23時から翌日2時 刃渡り
10cm以上の鋭利な刃物で右後ろから前に向けて真横に切られている。
深さは7cm頚椎に達するほどの深さだったらしい。
被害者の身元・仕事先・友人関係等色々調査したが未解決のまま2006年に
時効で調査は終了した。
それから、昨年3月末までに同一犯人と思われる殺人事件が8件犯人逮捕に
至らず時効となっている。
大阪府警本部殺人課に調査本部が設置され延べ15000名以上の刑事が配
置されたが19年経った2010年未だに犯人は逮捕されないばかりか、それらし
い容疑者も浮かび上がらない無惨な状態であった。
そしてまた、今年3月に非常事態宣言を発令し、殺人を防ぐために1000名以
上の警察官が1ヶ月動員される。
この「3月の嵐」を防ぐために・・・・
私は数分のスピーチの話題を見つけるために、朝食前の10分を新聞の経済･
社会･3面へと目を通すのが一日の初めの仕事になっている。
我社は、国内でも有数のコンサルティング企業。
社員数2700名以上で全国に支店を持ち、様々な企業へコンサルティング業
務を展開している。
新卒から入り、チェーン展開している企業や大量販店の出店それに関わる流
通システムの構築を行ない全国を飛び回って確実に成果を上げた。
そしてその成果を認められ3年前に大阪本社のマーケティング研究室の室長
となった。
マーケティング研究室のメンバーは80名 日本の主要都市の支店に散らばっ
て仕事に取組んでいる。
クライアントからのオーダーに対して色々な角度からリサーチを行ない出店に
向けた活動を本部から各支店に指示を出す。
時には自分から出向き、リサーチを行なうこともある。
朝食といっても、妻がいるわけでもなく今まで独身貴族で通している。
ま～こんな私が結婚できるはずもないことは自覚している。
「朝長さん、今日はコーヒーと野菜サンドで良いですか？」
毎日同じコーヒーショップでモーニングを食べる。
いつの間にか、この店の常連と言う感じで名前も覚えられ親しく声を掛けられ
るようになった。
「はい、それでお願いします」
ここにいる時間はいつも35分くらい。
新聞を読みモーニングセットを食べて出社する。
8時45分から朝礼を行ない、受け持ちの仕事に入って行く。
今の仕事は、5月に大津市で大量販店のオープニングに伴う、商品の納入か
らプロモーションまでを調査分析し1ヶ月前にはシステムを完成させて実践に
入らなければならない。
その準備を進め、隣接地区などのリサーチを掛けている状態である。
このような私は、多分どこの会社にもいるサラリーマンだろう。
会社の人間たちも私のことなど、ただの中堅管理職としか思っていない。
今までは、そんな状況がとても居心地良く仕事も、殺人にも集中して行なえた
。
今までは、こんなこと絶対に知られてはいけない。
私の行なっている事は、犯罪であり捕まれば死刑になる。
精神異常でもない、欲望の赴くままに人を平気で殺す。
そのことに達成感と喜びを感じている。
悪魔のような存在だからだ。
そんな気持が、最近反対に思えるようになってきた。
こんな凶悪犯が、一般市民の中で生活をしている。
こんな事誰も知らなくて良いの？
なぜ警察は、連続殺人事件と知っておきながら、単なる単発の殺人事件とし
てしか公表していないか不満に思えてきた。
警察への非難を避けるため？
それだけの事で市民には予防の通達さえ行なわない。
マスコミにも、関連性を否定し、余計な報道をしないように抑圧さえしているの
だろう。
私の犯行や存在を知ってもらいその中でも、犯行を続けられるか。
そんなゲーム感覚に近い、犯罪がしたいように思えてきた。
警察への挑戦をしてみたくなった。
ただ、人を殺すだけでは楽しくない。
もっと、至高の優越感に浸りたい。
そんな気持になりたいのだろうか・・・
2010年1月1日
大阪府警本部殺人課宛に1通の手紙が届いた。
封筒には、新聞切抜きで宛名が貼り付けてあった。
中には、A4コピー用紙に不当と同様に切り抜きで
「3月中に3名殺す
これでちょうど40人目」
と貼り付けてあった。
「ついに来たな！」
大槻係長が 清水刑事に強い口調で言った。
「今までの殺人じゃ面白くなくなったんだろう。
まさに狂人だな」
瀬川刑事が続けた。
「これは想定内の犯人の行動ですね。人を殺した恐怖から楽しみに変ってき
たんだな」
大槻係長が瀬川刑事を睨みながら、
「そう、楽しくさせてるのは、犯人を捕まえられない私たちの責任だよ」
瀬川刑事が自分に言い聞かせるように
「完全に舐められてますね。しかし、これで一気に解決するかも知れませんよ
ね。
今までの前任者たちは、まったく手も足も出せなかった事件ですからね。
それに今回はこんな招待状までもらったし、これで逮捕できなかったら見っと
も無い話ですよ」
しかし、この手紙からは何も手がかりは掴めなかった。
指紋などはまったく無し。
特徴も無い。
市販の封筒･コピー用紙・糊など製造から販売まで調べたが特定できるような
ものはまったくなかった。
こんなことは、あるはずがないと言うくらいまったく何も手が係りのない手紙。
それが、唯一の手掛かりのようなものだった。
日本全国どこにでも売っているモノを、まさに知っているような犯人だった。
3月2日
いきなり、死体が発見された。
大阪府吹田市の地下鉄御堂筋線江坂駅近くの公園
「まさに、奴の犯行だな」
瀬川刑事が、死体を見てつぶやいた。
清水刑事も死体を見ながら
「まったく同じ殺し方ですね
今回も、首をバッサリ、深く切り裂いてます。
声も出なかったでしょう」
鑑識の担当空の報告では
「殺害時間は２日2時から4時くらい
凶器は、刃渡り15cm以上の鋭利な刃物です。
被害者は、檜山正博26歳。 回転寿司勤務
最後の仕事を終わって同僚と飲んで帰る途中にやられたようです。
今回は、前から後ろにきりつけていますね。相手の顔を見て死んだかも」
清水刑事が曽根崎警察刑事課のイスの背もたれにもたれながらの大槻警部
に報告書を提出した。
日本人というのは、外国人と比べて犯罪に対する警戒感が非常に薄い。
まさか、自分が殺されるなんて思って歩いている人はいないだろう。
これが外国人なら、暗い夜道に知らない人とすれ違う時も常に離れて間隔を
取っているだろうし防衛本能を身に付けている。
ここが日本人と外国人の違いだろう。
私は、容易に殺しやすい人に近づくことが出来るし、周りに人がいないことも
確認できる。
返り血も浴びてもそれを発見されることなく家に帰れる。
後、2人か・・・・
大阪府警本部に大阪全域の警察署から担当刑事200名が召集された。
「3月の嵐と名前を付けてこの事件を警視庁と大阪本部の2箇所で捜索していたが、本日より全国で公にマスコミにも公表し全面警戒態勢を取ることにする。
大阪で起きた昨日の事件を徹底的に調査し、この3月の嵐の全面解決に向けてここにいる全員で取組んでもらいたい。
大阪本部を「3月の嵐」の総本部とし大槻係長を中心に頑張ってもらいたい」
大阪府警本部長が首がかかっているかのように必死の形相でみんなにまさに訴えているように話した。
「これが解決できないとやばいな・・・・本部長もかなりかなり追い詰められたな・・・」
隣の席の藪池課長が大槻係長に話した。
「はい、もうこの事件で死人は出せませんからね」
大槻係長も課長に同情しながら返事を返した。
大阪の街は、緊張している・・・・
「警察官が普段の倍くらいいるかな～これじゃぁ今回の犯人も終わりだな」
私は、同僚と飲み屋街を歩きながら2件目の飲み屋を目指して歩いていた。
OBCニュース
本日、大阪府警本部より昨日起きた殺人事件、檜山正博26歳 回転寿司勤務の記者会見がありました。
その中で大阪全域に非常警戒体制の発表と市民への厳戒注意を呼びかけました。
この事件は、過去20年間同一人物による連続無差別殺人事件犯行と断定し、その殺人犯よりこの3月中に3人殺すという内容の手紙が届いていた事も合わせて報告いたしました。
これにより、いつどこで無差別殺人事件が起きるか判らない状況であり、市民の皆さんの一人歩き、夜間の外出などは控えるようにして下さい。
「マジかよ！ここは日本だよ。世界一の安全な日本だよね。
警察も今まで何してたんだ？？
20年前から今まだどうして、捕まえられなかったんだよ！」
大阪心斎橋の喫茶店のテレビを見ながら、常連客が愚痴った。
「本当よね～」 ウエイトレスも同感の表情で返事を返した。
常連客の連れが・・・
「もうすでに何件かの殺人は時効になったらしいよ。
しかも犯行は、全国規模らしい。
それにしてもどんな奴なんだろうな～？
精神異常で気持悪い奴なんだろうなきっと。
それか、普段は真面目でどこにでもいるような奴がある日突然、殺人鬼に変身するんじゃないのか？」
「おい！清水！」
大槻係長が、清水刑事に手招きをしながら昼食に誘い出した。
「捜査状況はどうだ？何か出てきたか？」
大槻が清水に尋ねた。
清水刑事は、またその話ですかって顔をしながら
「過去の犯行や状況など全て読み返しましたが、全く何も結びつくところがありませんね。
わかっているのは、刃渡り15cm以上の鋭利な刃物。これだけですよ。
後は、首を真横に一直線にズバッ！って所だけです」
大槻は不満そうな顔をしながら、清水に上着の内ポケットから封筒を渡した。
うどん屋へ入り、いすに座って、きつねうどん定食を注文して、その封筒を空けて読んだ清水は・・・
これは、過去の犯行現場・日時・の一覧表と過去の容疑者一覧じゃないですか。
全て、アリバイもあるし、死んだ人もいますよね。
これを、再調査ですか？
これなら私もやってますよ。
しかも、範囲が広すぎてとても容疑者まではたどり着けない状況ですよ。
過去の現場へ出張で行ってた人物を割り出そうと思っても、出張が多い企業何て、何万社とあるんですよ。
1人の人間がこれだけのところに出張に行ってたとしてそれをどう調べるかですよ！」
大槻が・・・・
「あのなぁ～今はマスコミが調べてくれるんだよ。
テレビで特番組んでな！
お前も、ﾁｮｯﾄアナウンサーと親しくなって、この資料を見せて一緒に捜査すりゃ良いんだよ」
お前も、テレビに出て顔でも売れ！」
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