颯HAYATE★我儘のべる

颯HAYATE★我儘のべる

アラフォーの純愛 3



驚きの声をあげたのは何故か総二郎とあきら、桜子だけだった。

「お前ら、ここでコソコソと何をしていやがるんだ!?」

「・・・コソコソってお前、客の部屋に勝手に入ってくるなよ・・・
鍵がかかってただろ?」

ここはホテルの一室、当然、オートロックで鍵がかかる。

ホテルの支配人とかオーナーは鍵くらい開けられるだろうけど、普通はノックも何も無しに入ってはこないだろう。

「俺様に内緒でコソコソとしているお前らが悪い。ここは俺のホテルだぞ?
自由に入って何が悪い!」

「・・・悪いに決まってるじゃん・・・」

つくしは、つぶやいていた。相変わらずの横暴さ、わがままさに呆れて。

変わらないという懐かしさはあっても、20年・・・20年成長していない司に呆れていた。

「ああ?」

つくしのことが視界に入っていなかったのか、司は自分に反したつくしにやっと視線を移した

「誰だ、てめぇ」

20年たっても、やはり傷つく。完全に忘れられている自分がかわいそうになってきた。

・・・というか、20年前にも誰とはわからず会ってるじゃない?という怒りも。

こいつの頭の中、かち割りたい・・・微かな殺意。

つくしは過去の自分とは違う感情に心の中で苦笑した。

あの頃はショックで司の前から消えることしか考えられなかったけど・・・今は呆れと殺意と苦笑?

「初対面の人間に『てめえ』は無い。しつけがなっていないわね。」

「ああ!?」

司はまるで値踏みするかのようにつくしを見、そしてニヤリと笑った。

「その服装は庶民だろ。どうみても既製服の中でも超安物って感じだ。庶民が俺に口答えとは驚きだ。俺が誰かわかっているのか?」

「・・・道明寺司」

「・・・し、知っていてその態度かよ」

F4 と滋、桜子は状況を見守っていた。しかしこの先の展開は目に見えていると思ったのかあきらが口をはさんだ。

「司、庶民でも牧野は俺たちの友人なんだ。それなりの礼儀を持ってくれ」

「そうだぞ、牧野は俺たち全員の友人だ。」

総二郎もあきらの言葉に同意する。

「・・・お前ら、いつのまに庶民なんかと付き合うようになった?庶民が俺らと付き合うのは金目当てだぞ」

司の言葉につくしの緊張が切れ、溜めていた思いが噴出した。

「は?ばかばかしい。道明寺財閥の企業で働く人々は庶民だっつうの!!そのトップが庶民は金目当てなんて差別しているんじゃ、道明寺財閥もアンタの代で終わりだね。

それにしても20年たっても成長しない人間が存在するなんて信じられない!!

どこまで俺様で我儘で傲慢なバカなの?こんな奴のために20年も無駄に・・・」

つくしはそこで言葉を切った。

そう20年だ。司の記憶が戻ることを夢みて20年も黙って待っていた。私も成長していないのかもしれない。

そう思って、つくしは盛大にため息をついた。

「20年?お前なにを言っているんだ?」

「なんでもないわよ。類、みんな今日は久々に会えてうれしかった。でもこの状況じゃもうお開きよね。私は失礼するから、あとは道明寺さんを加えて話してちょうだい」

そう言うとつくしはさっさと荷物を手に部屋を出て行った。





「司・・・お前、いい加減にしろよ」

ため息をついて言ったのはあきらだった。

「なんだよ」

「俺たちは久しぶりに牧野にあって近況とかイロイロと聞きたいことがあったんだよ。それをお前がぶち壊したんだ。」

「お、お前らが俺に黙ってコソコソしているからだろ!」

「いや、コソコソしてないし。牧野の事をお前は覚えていないし、会っても仕方ないだろ。だから黙っていただけだ。言ったところでお前は俺に関係ないって言うだけだ。

それに・・・俺らが友人に会うのをイチイチお前に報告しないといけないのか?」

総二郎も司の子供っぷりに呆れていた。

「牧野のことは司だって知っているんだけどね、本当は。まだ思いだせない?」

そう言ったのは類。

「あの女を俺が?俺は庶民なんて知らねぇぞ。」

「俺たちもお前の言う庶民との付き合いはほとんどない。でも俺たちは牧野と出会った。お前も牧野と出会って変わり始めていたんだけどね。」

「・・・・」

司は考えこむように黙って類の話を聞いていた。

「野生の勘で何か感じるものってないの?司」

類はそう言って少し笑った。

「・・・ねぇよ。でも・・・俺に向かってあんな口のきき方をする奴は初めてだ」

その言葉にみんな顔を見合わせた。

もしかしたら・・・・・





いまだに何も思いださないことに苛立ちを感じつつも、全くと言っていいほど変わっていない司につくしは呆れと懐かしさを感じていた。

「私も20年・・・何も変わっていないなぁ。もう道明寺以外の男に目を向けるべきかもね」

そう言うとつくしは自嘲した。何度かそう思ったのに出来なかったくせに・・・

「なんであんな俺様男が良いんだろう?私って趣味悪いよな」

つくしは苦笑し、帰路を急いだ。もう暗い。サッサと帰って寝て今日の事を思い出にしてしまうんだ!!!




アイツは誰だ?

司は必死で思いだそうとしていた。

「・・・・・・あ~思いだせねぇ!!!本当に俺はあの女を知っているのか?」

広い自室で大声を張り上げるが、記憶は戻るはずもなく・・・

「うるさいわよ!!!」

突然、隣室の戸が開いた。

「うわっ!!!ね、ねぇちゃん」

「何を大声張り上げているのよ!迷惑な奴ね」

「か、勝手に俺の部屋に入るなよ。びっくりするじゃねぇか」

LAにいるはずの姉の椿の姿があった。

「姉が弟の部屋に入って何が悪いの? 久々に帰ってきたんだから喜びなさい」

「喜べって・・・旦那とケンカでもしたのかよ」

「するわけないでしょ。日本で商談と会議があるのよ。それでしばらく戻ったの。」

「ふうん・・・」

「で?何を大声出していたの?またお母さんに叱られたわけ?」

「俺を誰だと思っているんだよ。ババアの小言なんて無視だよ、無視」

それを聞いて椿は盛大にため息をついた。

「あんたね・・・・冗談で言ったのよ。本当にまだ叱られているわけ?アンタ38でしょ?恥ずかしいわね。

普通はもう道明寺財閥後継者としてある程度は認められていなければならないはずでしょうが!」

「う、うるせぇな。ちゃんとやってるじゃねぇか」

確かに性格に問題があるにしろ、道明寺司は財閥を立派に守っている。

椿にはそれが少し不思議だった。野生の勘ってヤツかしらね・・・・

「あ、そうだ。今日、アイツらと会ってさ」

「類たち? みんな元気してるの?」

「ああ。俺をのけ者にして会ってやがったから部屋に押し掛けたら変な女も一緒でよ」

「変な女?」

椿はもしかしたらと思ったが黙っていた。

「ああ、この俺に生意気な口をききやがるんだ。俺も会ったことあるらしいんだが思い出せねぇ。牧野って女だけど」

「つくしちゃん!?」

やっぱり!!!椿は歓喜の声をあげた。

「良かった、元気だったのね。どうしているのかと心配はしていたんだけど。

私が探して会いに行ってもツライだけかと思うと探せなかったのよね。良かったわ」

「・・・・姉貴も知っているヤツなのかよ」


© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: