颯HAYATE★我儘のべる

颯HAYATE★我儘のべる

F4とは・・・




英徳にも講堂というものが一応はある。 俺は今日、初めてそれを知った。 

今日は大企業のトップが将来のトップである俺たちに自分の体験談を話してくれるらしい。

英徳は金持ちしか通えない学校というイメージがある。

事実、私立で、他の私立高校に比べれば授業料はすっごく高い。

だが、今は奨学生制度というものがあり、学費が高すぎても学力さえあればタダで英徳に通える。

その奨学生制度も狭き門ではあるのだが・・・。その奨学生制度に出資しているのが今日のゲストたち。

企業のトップだけあって、慈善事業をしているわけじゃない。

学力は常に5位以内に入っていないと奨学金を打ち切られるし、厳しい制度なのだ。

そして、それをやり遂げたものは出資者の企業に就職する。 つまり将来まで約束されているというわけだ。

だから、出資といっても投資でもある。 未来の幹部候補を育てているのだから。




壇上に座っているのは、親父とその親友たちだった。

ここ数年の不景気で倒産する企業や傾く企業も多いなか、変わらぬ隆盛を誇っている企業のトップたち。

道明寺財閥のその中でも群を抜いている。 道明寺司、花沢類、美作あきら・・・そして西門総二郎。

なんで総二郎おじさんがここにいるのかは不明だったが、4人を紹介した司会役の教師のおかげでなんとなくわかった。

『今日はあの有名なF4にお話を伺い、仕事における秘訣というものをお聞きしたいと思います。

皆さんは将来、日本を背負っていくであろう企業のトップに立つ方が多い。

そのなかでもさらに上にいる方々の話を聞き、将来に役立ててください。』

つまり・・・話題性の問題なのか、F4を揃えたかったんだな。

『F4、つまり花の4人組。 彼らはそう呼ばれ、この英徳の一時代を築いた方々です。』

続いていく紹介に俺の耳は大きくなった。・・・今、なんて言った?

―――――花の4人組??

聞き間違いかと思った。 だって・・・花の4人組だぞ、ありえねぇネーミングだろ?

だが、確かにあの教師は『花の4人組』と言った。

俺は今まで、まわりを凍りつかせる4人ってことでFreezeからFをとって、F4だと思っていた。

FlowerのFだとは、思いもしなかったぜ・・・

俺は必死で笑いを堪えた。 あの格好つけの親父たちが『花の4人組』。笑える・・・

視線をゆっくりと椛に向けると、肩が揺れていた。 確実にアイツも笑ってるよな。

俺は俯いて涙を堪えつつ、必死で笑いを抑えていた。

チラリと壇上を見ると、親父と総二郎おじさん、あきらおじさんが俺を睨みつけていた。

類さんは・・・いつもと変わらず眠そうだった。 あの人はきっと、こんなことどうでもいいのだろうな。

俺が笑っていることに気がついているようだった。 だけど・・・これは笑うだろ?

きっと、親父たちだって自分たちのことじゃなかったら絶対に笑う。

それにしても、親父たちの視線はなんで俺一人に向かってるんだよ! 椛も笑っているだろ!

そう思って、椛に視線を向けると・・・チッ! 運のいい奴。

アイツの前にいる奴がやたらとでかい。 つまり、壇上の親父たちからは影になって見えにくいのだ。

それに引き換え、俺の前は小柄な奴で俺の姿は丸見えだった。

でも、仕方ないだろ。 睨まれたところで笑えるものは笑えるんだから。

「では、そのF4のリーダーでもありました、道明寺司さんから、お話を・・・」

F4という言葉が俺の中で自動的に変換される。

『花の4人組のリーダーでもありました、道明寺司さん・・・』

わはははは!! これはもう、確実に笑えるだろう!?

気がつくと俺は微かに声を発していた。 周りの視線が痛い・・・。

俺はもう、親父の話なんて聞けなかった。 もちろん、他の誰の話も聞いていないのだが。

それにしても・・・お袋は知っていたわけだよな。 よく笑わずに付き合えたよな・・・。

花の4人組と。


FIN



意味がねぇ~。 くだらねぇ~。



★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


●F4とは・・・2●


帰宅すると、俺と椛はすぐにお袋に聞いた。

「な、F4って花の4人組って意味だったんだな!」

「――――知らなかったの?」

お袋は当然、知っているものを思っていたようだ。 なんでだ?

「知らなかったよ~、なんか恥ずかしい~。 お父さんが花の4人組のリーダーなんて!」

椛が微かに笑いながら言った。 そうだよな、これで全校生徒にF4が花の4人組って意味だろ知られたわけだし。

「そうよね、私も初めて聞いたときはダサッ!と思った。 

F4ってさ、当時すっごくカッコいいって人気でさ、雑誌とかにもモデルみたいに載ってたの。

さすがに花の4人組とは書いてなかったけど、F4特集とか組まれて凄かったわよ。

・・・でもさ、F4の意味が花の4人組って知ると笑えない?

だからさ、アイツらにムカつくと、そういう雑誌を開いて、キザったらしくポーズを決めて立っているアイツらを見るわけ。

そしたら、上に書いてあるのよね、F4って。 頭の中で花の4人組に変換すると笑えちゃって。

そうやって、アイツらへの怒りを必死で抑えて学校生活を真っ当したのよね。 もう大変だったんだから。」

「――――ダサイって言えばよかったのに」

「アイツらにそんなこと言うと、すぐに暴力に訴えるのよね。

F4って笑えるなんて言ってごらんなさい、すぐに赤札を貼られちゃうわよ!」

・・・また初めて聞く言葉が出てきた。 赤札???

「赤札って何?」

俺と椛の疑問に、お袋はちょっとだけ固まってしまった。

「知らないの?」

「え?知るわけねぇだろ、F4の意味だって今日初めて知ったくらいだぞ。」

「私も知らないよ。」

お袋は一瞬、迷っているようだったが、仕方なさそうに肩をすくめると赤札について話はじめた。

「あの4人組は最低だったのよね。 超わがままのおぼっちゃまで、誰もアイツらに逆らわない。

先生たちも含めて誰も逆らわないし、注意すらしない。 

エネルギーをもてあましたアイツらはナンパ三昧、喧嘩三昧。 誰もが怖がってた。

だから暇つぶしなのかな、人間を人間とも思わないで、ちょっと気に入らない生徒がいるとロッカーに赤札と呼ばれる紙をはるの。

それが目印なのよね。 この人はF4に選ばれました、今日から標的になりますってね。

つまり、標的を決めて狩りをしていたの。 早い話がイジメなんだけどね・・・」

「―――お父さんたちってイジメをしてたの?」

「うわ、最低のヤツらじゃん!」

俺たちの感想にお袋は大きく頷いた。

「そう、最低のヤツらだったよ。 自分たちは手を汚さず、逃げる標的を楽しんでいたの。

高いところから見学して笑っているのがF4ってわけ。 

アイツらは小さいころから武術とか習ってるから、腕力じゃ、誰も敵わない、だからみんな怖がって逆らわない。

それに、全員が金持ちだからさ・・・甘やかされたお坊ちゃん、お嬢ちゃんで他人の痛みがわからないのよね。」

なんだ、それ。高校生にもなって、そんなことしていたのか、親父・・・。 最低だし、ガキだよな。

「だからさ、F4を恐れて歯向かう人間は一人もいなかった。 だからやりたい放題なのよ。」

「一人だけいたでしょ、歯向かった人が」

突然の背後からの声にお袋が飛び上がる。 俺たちだって驚いた。

現れたのは、噂のF4だった。 

「類さん、歯向かった人っていたの? 超最低なF4に本気で歯向かえる凄い人がいたんだ」

「いたよ。 赤紙を貼られて、学校中からイジメられても、逆に俺たちに向かってきた人が。」

「「・・・すっごい!」」

親父は凄く不機嫌な顔をして、そっぽを向いているし、総二郎おじさんとあきらおじさんは笑っている。

「そ、凄いんだよ、君たちのお母さんは。」






「・・・お袋!?」

「そ、牧野は赤紙を貼られたんだよ、司に。 そのせいで全校生徒にイジメられてね。

でも、逆に司を殴り倒して説教したんだよね。 だから司のことを嫌っていたんだ。

―――牧野、司のどこがよくて結婚したの? あんなにイジメられたのに・・・もしかしてM?」

話を振られたお袋は真っ赤になって反論している。

「親父は・・・お袋を苛めてたわけ?」

「そう。でもあれは・・・ねぇ、総二郎?」

「そうそう、あれは・・・な、あきら」

「そう、好きな子を苛めてしまう幼稚な習性だよ。」

え・・・?好きな子を苛めてしまう、そういう愛情表現は幼稚園までじゃないのか?

マジで親父は・・・わ、信じらんねぇ!!! マジだ!!!

親父の表情は真っ赤で、信じられないくらい、おじさんたちを睨みつけていた。

「親父・・・本当に最低のヤツだったんだな・・・。俺ってそんなヤツの子供なんだ」

「う、うるせぇ!!」

うるせぇって・・・それだけかよ、親父。 情けないぞ、本当に道明寺財閥のトップなのか?

「牧野、今からでも遅くないよ。司と別れて俺のとこにおいでよ」

その言葉に親父が我に帰る。 類さんの胸倉をつかみ、脅しにかかった。

「類!!てめぇ・・・まだ、つくしを狙ってやがるのか!? いい加減、諦めて結婚しやがれ!!」

「俺の結婚したい相手は牧野だけだよ。 牧野、司が結婚しろって。」

「て、てめぇ! つくしは渡さねぇ! そのへんの女と結婚しろ!」

親父・・・そのへんって、それはいくらなんでも・・・。

それにしても、かっこいいはずのF4っていったい何なのだろう。

「俺なんだか・・・親父たちに落胆したぞ。」

「―――わたしも」

俺の言葉に椛も大きく頷いた。 それはそうだろう、赤札はって、イジメをしていたって・・・

親父もおじさんたちも、どうしようもない。

「そう言うなって。 確かに俺たちが学生時代に最低の人間だったのは認めるが、考えてもみろ。

高校生のガキに先生すら逆らわない、注意もしない。 そのうえ、学ぶべきものはすべてガキの頃から叩き込まれていたんだ。

グレないほうがおかしいだろ? 司のとこは俺たちよりも凄かったからなぁ。

両親ともにNYで家にいないんだぞ。小学生の頃から姉弟だけで生活してる家庭なんてありえないだろ?

実際は使用人がいたが、親とは違うからな・・・。」

両親から愛情をもらったことはない、と親父はよく言っていた。

じいちゃんとばあちゃんは俺たちには惜しみない愛情を注いでくれるので信じられなかったが・・・マジだったのか?

「身内で愛情を注いでくれたのは椿さんだけだからな。他人に愛を注ぐって行為を知らないんだよ、司は。」

「そうそう、お前らの母さんは凄いぞ。 そんな猛獣を殴りたおし、イジメにも負けずに向かってきたんだ。

そういうヤツはいなかったからな。 気がついたら俺たち全員が牧野に惚れてたってわけだ。」

お袋って・・・いったいどんな高校生だったんだ?

超猛獣な親父とその家来を従える女子高生・・・想像するとちょっと怖い気がした。

「お袋って・・・」

「何よ?」

「親父のどこが良かったんだ? 話を聞く限り、極悪非道の奴だと思うんだけど?」

俺のその言葉におじさんたちが笑う。 親父は怒りで顔が引きつっている。

でも、事実だし、怒りを俺にぶつけることはない。

いや、俺を怒鳴りつけてもお袋に怒られるので我慢しているのかもしれない。






お袋の答えはある意味、予想通りだった。

「――――わからない。」

当然、それを聞いた親父の反応も予想通り。

「わからないって、てめぇ!! 俺の全てに惚れたんだろうが!」

「惚れる理由がない。 実際、アンタを含めてF4には散々な目に合わされたし、

アンタと付き合ってからもロクなことがない。 なのになぜ、結婚するまでになったのか・・・?」

お袋は真剣に首を捻っている。 マジで思い当たらないのか??

俺は呆れてしまった。 椛も呆気にとられた顔をしている。 そりゃ、そうだよな。

俺たちっていったい、どうやってできたんだ?とか考えてしまう。

成り行きでできたか、もしかしたら・・・親父が無理矢理!? 

いや、それはありえないな。 親父のプライドがそれはありえないと言っている。

「お、お前・・・本気でそう思ってるのか?」

親父の声に不安がにじむ。 親父がお袋にベタ惚れなのは誰が見てもわかる。

当然、子供の俺たちだって知っている。 

お袋も・・・親父に惚れているとは思う。 だが、惚れた原因は本人にもわからないらしい。

なんだ、それ!?

「牧野はさ、司の強引さに押し切られたのかも。 やっぱり俺の方がいいんじゃない?」

「類!!!」

「―――う~ん、今おもうと本当にどこに惚れたのかわからない。 類だってF4だし、同罪だよね。

私を苛めてたでしょ。 手は出さなくても傍観してたくせに。 それは共犯者と同じ。

西門さんだって、美作さんだって・・・司と一緒になって笑って見てたよね。 最悪!」

突然、話を振られたおじさんたちは固まってしまった。 首謀者は親父でもその仲間だもんな。

それにしても、お袋ってこの4人に苛められていたのか・・・? また疑問。

よく親友になれたよな・・・・

親父はお袋の言葉で真っ青になっている。 

「お、お前・・・まだ根に持ってるのか・・・?」

「―――苛めたほうは忘れても、苛められた方は忘れないものよ。」

「・・・・・」

親父の顔がどんどん青ざめていく。 

「ま、でも許しているから結婚したんだし、親友として今も付き合っているんでしょ。」

お袋はそういうと俺たちに背を向けて、どこかに行ってしまった。

たぶん、キッチンだろう。 夕食を作りに行ったに違いない。

親父は呆然と立ち尽くしていた。 おそらく、今日の親父はお袋のご機嫌とりに忙しいに違いない。






結論―――――

F4とは、とんでもないガキの集まり。

かっこよくもなんともない、情けないガキの集まりだったわけだ。

幼稚園児とかわりない行動しかできない・・・

そう考えると少し情けなかった。

俺もその血をひいているんだよな・・・ふぅぅぅぅ~ ため息がでた。

それにしても、お袋と出会わなかったら、親父ってどうなっていたのだろう。

――――野生の猛獣ほど恐ろしいものはない。

早めに猛獣使いに捕まってよかった。

あの猛獣使いがいる限り、道明寺の猛獣は大人しいに違いない。


FIN



なんだ、これ。

無理して書くなよ、って感じ?



© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: