颯HAYATE★我儘のべる

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天は雑草に翻弄される




高天は悩んでいた。この想いは何だろう?

兄貴に相談しても何の解決にもならなかった。笑われただけムカついた。

でも兄貴には俺の気持ちが何なのかわかっているってことだよな?

「天ちゃ~ん!」

俺の悩みの種とも言えるヤツが俺に向かって走ってくる。

まさか―――俺って、なずなに惚れてる? いや、それは無い!絶対にない!!

だって小さい頃から知っているし・・・気がついたら近くにいたし・・・俺は覚えてないけど、赤ちゃんの時から俺のそばにいるんだぞ!?

「天ちゃん、どうかしたの?」

思い悩んでいる間に、なずなは隣まで来ていた。

「な、なんでもねぇよ!」

照れ隠しに冷たくするが、なずなは気にしない。照れ隠しだってことに気がついているんだろう。

なずなが生まれたときから一緒にいるのは「お互い様」ってヤツだからな。

「変なの!」

それだけ言うとなずなは黙って俺の隣に立っている。

「何か用か?」

「ううん?何もないよ。 天ちゃんの姿が見えたから。」

「そっか。お前、友達は? 次の授業は何だ?」

「天ちゃんこそ、友達は?一緒にランチしないの?・・・次は数学だよ。」

今は昼休みだ。この学校の昼休みは少し長い。ゆっくりとランチがとれるようにしてあるのだ。

今でこそ弁当を持ってくる者も多いが、やはりまだ高級レストラン風の食堂でランチをとる者も多い。

「昼飯は外でゆっくり食べることにしているんだ。」

毎日一人で食べているわけじゃないが、たまには静かに一人でいたいこともあるのさ。

「そうなの? 私は今日、お弁当だったから・・・さっき外で食べた。」

「一人でか?」

なずなが誰と弁当を食べても関係ないはずなのに、なんだかとても気になった。

「うん、今日は一人って気分だったから。」

「・・・そうか、俺もそういう気分だったんだ。」

「うん―――」

なずなはそう言うと、静かに俺の隣に腰掛けた。立ち上がっていた俺も座り、二人並んで静かに座っていた。

ここは校庭内なのだが芝生と花、樹木でまるで庭園のようだった。さすが英徳―――って雰囲気を醸し出している。

そんな中でも隅の方に特に大きな木があり、人があまり来ない一角がある。そこは高天にとって憩いの場所になっていた。

なずなは俺の姿が見えたからと言ったが、ここは簡単に見つかる場所じゃない。俺がここにいると知っていて来たのだろうということは安易に想像がついた。

―――ということは、どういうことだろう?

もしかして、『なずな』が『俺』に惚れているのか?

高天は頭を捻った。自分がなずなに惚れていることは有り得ない。アイツは妹みたいなもんだ。

じゃあ、なずなが俺に惚れることも有り得ない―――よな? だって俺は兄貴ってことになるし。

「う~ん・・・」

なずなは不思議そうに首をかしげ、高天の顔を眺めていた。

「・・・どうしたの?」

「な、なんでもねぇよ!!」

「変な天ちゃん! 悩みごとでしょ?」

「なんでもねぇって言ってるだろ!?」

「・・・変なの・・・」

なずなはそれだけ言うと黙って俺の隣に座っていた。ただ・・・座っていた。

俺はそんななずなをチラチラと見ながら―――考えていた。

だって言えるわけないじゃないか!

―――俺が、お前に惚れている・・・かもしれない、なんてさ。

もしくは―――お前が俺に惚れているかもなんて考えている、なんて!!

横目でなずなを見ると黙って空を見上げている。俺の隣にいても何も話さず、ただ黙って傍にいる。

なぜだろう、俺はなんだかそれが・・・自然でとても落ち着くんだ。

なずなが傍にいる、それだけで心がすごく落ち着く。

これって―――やっぱり惚れているってことなのかな?





―――違う!!やっぱり違う!! なずなは妹だ。妹のことが気になって仕方ないだけだ。

小さい頃から近くにいすぎたんだと思う。

兄や姉よりも歳が近いし、俺たちは本当の兄妹よりも兄妹らしく育ったからな・・・。

やっぱり、俺がなずなに惚れているなんて―――ありえない!!

うん、そうだ。ありえない。

なずなは黙って空を見上げていた。



END


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