颯HAYATE★我儘のべる

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この世は天と雑草で盛り上がる




「ねえ、牧野・・・思うんだけどさ、なずなと高天が結婚したら俺と牧野の関係って何になるの?」

それは久しぶりにF4が道明寺家に集まって歓談していた時だった。

いつものようになんの脈絡もなく、類が言った。一瞬みんなキョトンとしたが意味がわかるとニヤニヤし始めた。

「それは何と言うかはわからないけど、なずなちゃんにとって私は義母になるわけだし、高天にとっても類は義父でしょ。
私たちも親戚にはなるのよね。」

「そうだよね」

「そうね。」

「―――ちょっと待て! なんでお前らは簡単に納得しているんだ?」

苦虫を噛み潰したような顔をしているのは司だ。

「何?何か間違っている?」

「司、どうしたのよ。」

「なんで高天の父親が類になるんだ!? 高天の父親は俺だ!!」

司が大声でつくしの前言を否定する。総二郎とあきらは「ぷっ」と噴出してそっぽを向いている。

「・・・当たり前じゃない。」

「じゃあ、なんで類が父親なんて言うんだ!?」

司は凄い形相で妻であるつくしを睨んでいた。その姿を見ても類は平然と紅茶を飲んでいる。とても優雅に―――

「仮定の話でしょ。だって高天となずなちゃんが結婚したら司、アンタはなずなちゃんの義理の父になるのよ。当然だけど類は高天の義理の父になるじゃない!」

「ギリとか関係ねぇ! 高天の父親は俺だけだ!」

「アンタ・・・何、言っているの? 私の言っていることわかっているわけ?」

「わかっているぞ! なずなと高天が結婚したら類が高天の父親になるって言っているんだろう? なずなが俺の子になるってことだろう?」

腕を組んで、さも偉そうに堂々と宣言した。

―――間違っていない。間違っていないんだけど・・・なんだか司の言い方は変だった。

「はっきりとわからないけど・・・司、お前何か勘違いしているんじゃないか?」

総二郎が笑いを堪えながら聞いた。

「俺が勘違いなんてするわけねぇだろうが! つくしも言っているじゃねぇか! あの二人が結婚したら類が高天の父親になるって! 俺はあの二人が結婚するなんて許さねぇぞ!!!」

「―――だから仮定だって言っているじゃない。そもそも二人ともまだ高校生よ、結婚なんて・・・。先のことはわからないけど、結婚じたいがまだまだ先の話よ。」

「この先も結婚なんて許すか! ふざけんな!」

類は静かにカップを置いた。しかし司を完全に無視し、つくしに話しかける。

「牧野、本当にあの二人が結婚したら・・・嬉しいな。牧野と親戚になれるんだよね? 切っても切れない関係ってやつ?」

「・・・類、アンタわざとそういう言い方しているでしょ?」

呆れたように類をみながら、つくしは盛大にため息をついた。類が司を煽っているのは一目瞭然だ。

「・・・本心だけど?」

「類・・・」

その二人の姿を見て、司は怒りを爆発させた!

「二人で勝手に話を進めるんじゃねぇ!!!!!」

「おい、司・・・あくまでも仮の話なんだから、そんなに怒る必要はないだろう?」

F4で一番の常識人である、あきらがやはり呆れたように司をとりなすが簡単におさまるはずもなく・・・

「うるさい! 俺は高天となずなの結婚は断固反対だ! 絶対に許さない!」

「「「「・・・・・」」」」」

つくしと総二郎、あきらは唖然としながら司の顔を見ていたが、類だけはテーブルに出していたお菓子をおいしそうに摘んでいた。

完全に何か誤解があるのは間違いないのだが・・・つくしはまたため息をついた。司の頭の中ではとんでもない考えが渦巻いているに違いないのだから。

「司、義理って意味を知っている?」

お菓子を食べ、紅茶を飲み・・・我関せずの態度を崩さなかった類が突然言った。

「そこで終わりってことだろ?区切りって意味だ!!」

「「「「「・・・・・」」」」」

「それって・・・義理じゃなくて、切りじゃね?」

総二郎が呆れたように突っ込んだ。

「司、切りだとして・・・だけど、切りの父って意味は何?」

「・・・俺との親子関係が切れて類が父親になるってことじゃねぇのか?」

「「「「「・・・・・」」」」」

しばらく誰も口を利けなかった。

「司・・・アンタってどこまでバカなのよ!?」

「バッ・・・バカとは何だよ・・・」

つくしに呆れたように言われ、司は語気を弱めた。

「バカだからバカと言っているの! まさかアンタが義理の父って言葉も知らないとはね」

「だから・・・」

「「司、切りじゃないって・・・」」

総二郎とあきらが高校時代と変わらない突っ込みを入れる。類は・・・相変わらずだ。

「あのね、アンタと私の父みたいな関係を義理の親子って言うのよ。つまり牧野の父はアンタにとって義理の父ってわけよ。結婚すれば縁戚ってもんが増えるわけ。

だから進はアンタにとっては義理の弟。義弟ってわけ。同じ意味で私にとってアンタの両親は義理の親で、椿お姉さんは義理の姉よ。義理っていうのは・・・結婚とか養子縁組とかでなる血縁関係同様の関係のことよ!!!」

「・・・本当の父親ってことじゃないのか?」

「どこをどうしたら、本当の父親が変更されるっていうのよ!!!バカっ!!!」

「お、親に・・・義理も本当もあるか! 親は親だ!!!」

それは間違っていないし、良いことなのだが・・・今言っていることはそういうことじゃない。

司は自分の勘違いを認めたくないだけなのだが、その理屈はつくしには通用しない。そもそも彼女も鷹宮家の養女なのだから。

「そんなのは当たり前よ! 養父母だろうが実父母だろうが親は親だし、義理でも同じことよ!! だけどアンタのはただの勘違いでしょうが!」

「お前らが紛らわしい言い方をするからじゃねぇか!」

「誰が紛らわしい言い方をしたのよ!」





二人が仲むつまじく言い合っている横でF3が呆れながら紅茶を飲んでいた。

「二人とも論点がずれてないか?」

「ずれているね。」

「そもそもは高天となずなが結婚したら類が高天の義父になるってことで・・・つまり牧野と親戚になるってことだったよな?」

「いつのまにか、類が高天の父親になるって話になってないか?」

「なってるな」

「俺は関係ないから」

類がおいしそうに紅茶を口に運ぶ。

「「おまえね・・・」」

総二郎とあきらは呆れたように類を見た。悠然と紅茶を口に運ぶ類は微笑んでいた。

「お前、司が誤解するのわかっていて話をしただろう?」

「誤解するとは思ったけど、司がどう考えるかまではわからないよ。」

それはそうだが、類には予想が出来ていたはずだ。つまりイジワルをしただけなのだ。

「で、なんでそんな話をしたんだよ?類。」

「ん?・・・なずながさ、家で天ちゃん、天ちゃんってうるさいから・・・嫉妬かな? 司にとって高天が可愛いように俺にとってもなずなはとても大事な可愛い娘だからね。」

「へぇ、お前でも親らしい感情があったんだな。」

「総二郎、失礼だね。俺にだって親としての感情くらいあるよ。なずなは一人娘だし、花沢物産の跡取りだよ。変な虫がついたら困るじゃない?」

道明寺高天を変な虫と言っているようなものだ。これを聞いたら司だけでなく牧野も怒るんじゃないか?と総二郎は思ったが、何も言わず黙っていた。

「道明寺家の御曹司を変な虫というのはお前くらいじゃないか? でも・・・類、お前マジで牧野と親戚になるのは嬉しいと思っているだろう?」

「それは当然でしょ」

表情を全く変えずに言ってのける類に呆れながら、総二郎とあきらは頭を振りつつも何も言わなかった。

ただ心の中で二人とも同じことを思っていた―――『相変わらずだな』





部屋の隅で話を聞いていた榊は盛大なため息をついて部屋を後にした。

ちょうど仕事がひと段落し、家に戻ってみると両親の親友たちが来ているというので挨拶をしようと部屋に入ると面白い話が聞こえてきて・・・言葉を掛けそびれた。

「高天もなずなもまだ高校生だぜ? 何を言っているんだ? まだ付き合ってもいないようなネンネちゃんたちが結婚まで行き着くには何年かかるか・・・

俺にはアイツらが親父たちソックリに見えるけどね。お互いに好きあっていても気がついてないんじゃないか? 鈍感だからな・・・」

ブツブツと独り言を言いながら、榊は自分の部屋に戻った。

榊が後にした部屋では、いまだに司とつくしが言い合っていた。それを聞きながら優雅にお茶を飲んでいる3人。

学生時代と何も変わらない光景がそこにあった―――――。

FIN


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