ですが、ただ圧倒されているだけではつまらないので、私が大連で見たもの、考えたことを何とか文章にしてみますね。
大連の海
1.大連ってどんな街?
一言でいえば、海に向かって突き出た半島の突端にある港町で、一応大都市だけれども東京みたいに巨大化しておらず、適度な規模で、住みやすそうな都市です。
日本の都市でいえば、イメージ的に近いのは福岡でしょうか。大連の街は、中心街こそすごく開けていて高層ビルが林立していますが、それでも息が詰まるような密集度ではなく、空間に余裕があります。また、中心部から15kmも離れれば市街地が終わって山か海か田舎になってしまう。タクシーに乗れば、わずか30~40分で大連市街を脱出できてしまう。その辺の規模感・距離感が、福岡とそっくりなんですね。
大連のなかで、オフィスや商業施設、官公庁が集中しているのは中山区と西崗区、いわゆる「都心二区」です。ちょうど、福岡の中枢都市機能が中央区と博多区に集中しているのと似てますね。あと、それに隣接する沙河口区の一部は、海に面してリゾートっぽい雰囲気があり、そこに新しいオフィスや大学がたくさん建ち、ちょうど福岡の「シーサイドももち」地区みたいになっています。余談ですが、私が来週から勤務することになる職場も、この沙河口区にあります。
ちなみに福岡は、私がこれまで住んだ4カ国10都市のなかで、住み心地が最高に良かった街です。人間にとって、この位の都市規模が丁度いいのかもしれませんね。ここ大連も、「ちょっと寒い福岡」みたいな感じで、住みやすそうです。
あと、気候風土でいえば大連は函館にそっくりです。どちらも、関東、関西あたりから見れば「北国」なんだけれど、大連は遼東半島の南の突端、函館は北海道の南の突端にあり、その北には、「もっと寒い」広大な大地が広がっています。また、地形もそっくりです。函館の場合、函館山に登って、そこから2つの海に面して広がる函館の町を見下ろすのが「100万ドルの夜景」といわれていますが、地図をみると大連でも、旅順地区の山に登って市街を俯瞰すれば、似たような眺望が得られそうです。そう考えると、大連は「ちょっと巨大化した函館」ってな感じでしょうか
2.着倒れの街
「京都の着倒れ」、「大坂の食い倒れ」と言いますが、大連の場合、完全に「着倒れ」の街と言ってよいでしょう。
以前シドニーに居たとき、中国人の友人から、「大連の女性は、着飾るためにはいくらでも金をかける」という話を聞いたことがありますが、どうやらそれは事実のようです。とにかく、街で見かける服飾関係の店の数は驚くほど。そして、美容院の数もすごい。気候が寒い、ということも影響しているのでしょうが、重ね着をすることが多く、特に若い女性ほど、「どうせ重ね着をするなら、美しく!」という心理が働くのでしょう。そういえばオーストラリアでも、シドニーよりもっと寒いメルボルンの方がおしゃれだったような気がする・・・
その代わり、あまり「食い倒れ」の街ではなさそうです。とはいえ、さすがに中国の都市ですから食堂の数はすごく多いし、海鮮料理が美味しいと評判の街ではありますが、私のいるエリアでは、夜9時になると食堂も閉まり、屋台も閉まって閑散とした雰囲気になります。台北、香港といった南方の都市では、夜更け、明け方まで平気で屋台が開いてて、24時間、いつでも食べられる状態でした。それと比べると、えらい違いですねえ。まあ、気候が寒いということも影響しているのでしょう。あと、食のバリエーションも、例えば台北や香港と比べてしまうと、やや見劣りすると思いました。
3.大連の中心は勝利広場
どこかのガイドブックに、「大連の中心は中山広場」と書いてありました。確かに、この界隈は東京・丸の内みたいなもんで、銀行系のオフィスビルや高級ホテルが建ち並んではいます。ですが周りに大きな商業施設がないので、人通りはあまり多くありません。
人通りだけでいえば、そこから800メートルほど行った、「勝利広場」界隈の方が断然多い。ここには「勝利商城」という、巨大商業施設があるためか、まるで新宿のように、いつでも人混み。特に若い人が多いです。この勝利広場と、隣接する青泥橋、大連駅の一帯こそ、人通りの面では「大連の中心地」といえそうです。
「勝利商城」の地下部分は、まるで名古屋の栄地区みたいに、巨大な地下街になっていて、そこにびっしり、隙間もないほど店舗が並んでいます。ここには、あらゆるジャンルの店が存在していますが、一番目立つのはやはり服飾関係の店の数々。特にここは、地下一階は韓国ファッション街、地下二階は日本ファッション街(東京小城)と、ちょっとしたテーマパークみたいになってるのが楽しい。余談ですが、「東京小城」には、「池袋門」、「新宿門」、「渋谷門」、「上野門」という4つの広場があって、大勢の若者がたむろしています。日本語ブースもあり、日本のTVドラマを日本語音声のまま(中国語字幕つき)放映しています。
大連の中心街はすごく近代的!
4.IT=ケイタイ?
勝利商城の地下に、「なんとか電子城」という、携帯電話ショップばかりがひしめくものすごい一角がありますが、ここに限らず、大連各地に、携帯屋が鬼のようにたくさんあって、いつも賑わっています。この種の店では、携帯電話本体の販売のほか、部品やアクセサリー、ネットワークカードの販売、修理、中古機の買い取りなど、幅広いサービスを行っているようです。
「携帯&モバイル」の隆盛に比べて、「PC&インターネット」の方は、あまり流行ってないなあ、という印象を受けました。私はここ数日、ノートPC用のネットワークカードやカードリーダー、USBマウスやキーボードを求めて大連各地を歩きましたが、通り一遍のものは揃っても、商品のバリエーションが日本と比べて圧倒的に少ないと思いました。とはいえ、国外ではまず手に入らないような、中国製の格安なモデルが手に入るのは嬉しい!
5.大型美女の多い街
大連など、中国北方の人たちは、日本人と比べると概して大柄で体格が良いようです。特に男性は、180cmを超える大柄で、かつ筋骨隆々のレスラーみたいなのがたくさんいます。でも、野郎のこと書いても面白くないので、女性について書きます。
ざっと見たところ、大連の街を歩く若い女性の4分の3は、日本女性と同じくらい小柄で、背は150cm台の後半といったところ。ですが日本と違うのは、残りの4分の1が、170cmを超すような長身なんですよね。大連の街を、女の子が4~5人つるんで歩いていると、その中に必ず一人は、ダイヤモンドゲームの王様みたいに、頭ひとつ分飛び出た長身の女の子が混じっています。要は人種的に、日本人より大柄なのでしょう。
長身でスタイルがいいのは、ファッションモデルに欠かせない要素。私思うに、ここ大連でファッションモデルに事欠くことは絶対にないでしょう。余談ですが、大連の郊外には「模特芸術学校」という、モデル養成学校があるそうです。ここでは、身長172cm以上が入学の最低条件だそうですが、大連なら、そんなコいくらでもいるでしょう。
加えて、ファッションやメイクに大金をかける土地柄ゆえ、確かに、「中国きっての美女の産地」と言われるに相応しい「実力」をそなえていると思います。それは、大連の街を歩けば分かります。だから遊びにきてね。
6.滅茶苦茶な交通ルール
今度は、中国に来た日本人なら、必ず一度は辟易する、交通ルールについて書きます。
大連を含め、中国のドライバーは、交通ルールというものをまず守りません。横断歩道があって、そこに歩行者が横断中であっても、止まることはおろか、スピードを緩めることもありません。逆にクラクションをガンガン鳴らして、歩行者を蹴散らすのが常。何のための横断歩道なのか分かりません。
特に大連は、道は広くて何車線もある上に、交通渋滞も少なくクルマのスピードも速いため、道路を渡るのが一苦労、なんて生易しいものではなく、命がけです。私などは、道を横断する際、コバンザメみたいに周りの人たちのケツにくっついて、一緒に渡ります。私一人では、とてもじゃないが恐くて渡れません。大連は住みやすい街だけど、道路の横断だけは、当分苦労しそうです。
7.「ゆずりあい」ってどこの話?
大連の暮らしに、「ゆずりあい」という言葉は存在しません。特に公共交通機関については、基本的に「弱肉強食」、「早いもの勝ち」の世界。おばあさんを突き飛ばしてでも自分が先に乗りこむのが、中国人民のルールです。バスで老人に席を譲る若者もまず見かけないし、また老人の側も、席を譲ってもらうことなどハナから期待していないようです。むしろ、年老いた母親がいい歳した子供に席を譲るという有様・・・
これは、「良い」、「悪い」の世界ではなくて、そういう社会習慣だから仕方ないんですよね。突き飛ばされたバーサンにしたって、突き飛ばされるのが当たり前と思っているようです。そういえば先日、バスに乗り込む際、バーサンを先に乗せようとしてモタモタしていたら、ドアを閉められてしまいました。ここ大連では、そういう行動は「乗車意志がない」と見なされるようです。だから次回は、バーサン突き飛ばしてでも乗るぞ!でも、これに慣れると、日本やオーストラリアでも同じようなことしてしまいそうで、恐い・・・
8.「謝謝」ってどこの話?
私がつい2週間前まで住んでいたオーストラリアは、Thank youをやたら連発する国でした。例えば、スーパーマーケットで買物をすると、レジ係も客もThank youと言います。たとえ心の中で「何だこの野郎」と思っていても、口先ではThank youと言うのが習慣になっています。
ところが大連に来て、オーストラリアに居た時と同じ調子で「謝謝」を連発すると、やたら不自然だということに気がつきました。例えばモノを買う際、当地ではレジ係も客も、「謝謝」なんて一言も言いません。お互い、一言も発することなく、仏頂面して淡々と取引を終えるのが、ここの社会習慣のようです。
これは日本の大都市でもそうですが、ここ大連も、とにかく人の数が多い。日々、オーストラリアとは比べ物にならない密度で、大勢の知らない人と接するわけで、その一人一人に挨拶したり、「謝謝」なんて言ってたら日が暮れてしまう、っていう事情もあるのでしょう。それに、「謝謝」を言うシチュエーションなんか他にいくらでもあるから、わざわざモノを買う時に言わなくても・・・ってことなのかもしれませんね。ここは好意的に解釈しておきましょう。
9.ツバ吐き、痰吐き問題
埃っぽい乾燥した空気、ノドにからまる痰の塊。カーッとノドを鳴らして、勢いよく道端に吐き出す・・・十数年前、私が中国を旅行した時、古都・西安では、男性のほとんどがペッペッと、道端に痰を吐き出していました。あの有名なツバ吐きカルチャーは、いまだ健在なのでしょうか?
ここ大連では、海洋性の気候で空気に湿気があるためか、ツバを吐く人間は、あまり見かけません。ざっと見たところ、ツバを吐いているのは、男性で10%、女性で2%、といったところでしょうか。中国全土で3億人がツバを吐く、という統計もある今日において、大連のツバ吐き人口の少なさは、特筆すべきかもしれません。ま、中国を代表するファッションの街を目指す大連で、きれいなお姉さんの脇でオッサンがツバ吐いて路面がヌメっていたら、サマになんないですよね。
10.大連では日本語が通じるの?
大連を含む東北地方は、中国では日本語学習が一番盛んなところだそうで、特に貿易や投資で日本との経済的なつながりの深い大連では、日本語を話す人間が結構いる、という話をよく耳にするのですが、私の体験した範囲では、ここは朝から晩まで、まるっきり中国語(北京語)の世界です。
だいたい、日本語を使うきっかけが全然ないですもの。その理由の一つは、私のこの黄色い肌。どこからどう見ても、中国人民にしか見えない私に、現地の中国人が外国語で話しかけるはずがないのです。かりに、私がフランス人でブロンドの髪をしてたら話は別なんでしょうがねえ・・・
一昔前は、中国人と日本人を服装で見分けることができたものです。ところが最近は、人民の着るものもずいぶん垢抜けてきたし、日本人の着るものからして大抵がMade in Chinaだし、そんななかで、服装に無頓着な私が差別化できるはずなどない。
私は今日も、人民の海のなかを、人民バスに揺られながら通勤する・・・そこに中国語以外の会話が成立する余地はなさそうです。もっとも会社にいけば、日本語を学びたい人はたくさんいるらしいんですけどね。
長くなったので、今回はこの辺で・・・
大連は、美味しいものがいっぱい!