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<WWWAトラコン・シリーズ1-1>
惑星ダングルは、ガリガルド星系の第五惑星で、北半球の大陸エルカと南半球の大陸タナストの二大陸を有する、陸地と海との比率ががちょうど5対5の惑星だ。両大陸ともに赤道近くにあるため気候には極めて恵まれている。
首都クルトミは大陸タナストの内陸部にあり、クルトミ宇宙港に隣接している。と言うよりも、首都に隣接して宇宙港がある。
この酒場はその首都クルトミのダウンタウンでも繁華街の少々外れにあった。内装は一目で合成木材と判る安っぽい造りで、お客はあたし以外に誰もいない。もっとも今は朝と昼のちょうど中間だから元々客の少ない時間帯だろう。だいたいこの時間に酒場が営業しているのが不思議な位だ。
あたしは、氷が溶けて少し水っぽくなりかけたバーボンのオンザロックをちびちびと舐めながら、ここを待ち合わせ場所に指定した相手を待っている。
それにしても、あたしみたいな女の子が朝っぱらから酒場だなんて、ちょっとみっともない。
ちなみにあたしは19歳。身長168cm、体重55kg。ついでに言えば、B・W・Hは86・56・88だ。漆黒のロングヘアはストレートで胸まであり、瞳の色はダークブラウンだ。
今の服装は、赤のタンクトップに黒のミニスカート、足はシルバーブーツといういで立ちだ。だが、このだっさ~いコーディネートはあたしの趣味じゃない。これは待ち合わせの目印なのだ。つまりは相手の趣味ということだ。
「ちょっと早く来過ぎたかな?」
思ったことが口に衝いて出た。
指定時間まであと5分程ある。
と、あたしの背後に誰か近づいてくる。
「イスラさんですか?」
あたしの事だ。
「ええ。キャラウェイさんですね?」
待ち合わせの相手だ。
「そうです」
その男は年の頃三十台後半、身長175cm位、体格は筋肉質、髪はブラウンで瞳はダークグリーン。この安酒場には不釣り合いな上物の背広を着ている。警察官にしては服装も中身もなかなかに渋い紳士然としたいい男だ。
「わたしにも同じものを」
キャラウェイがバーテンにそう告げる。
バーボンのオンザロックが出された。
「WWWAのトラブルコンサルタントがこんなにお若い、しかも、可愛らしい方だとは思ってもいませんでした」
いきなりお世辞からくるか。可愛らしい、よりも、美しい、とは言えないのか!
「そんな、可愛いだなんて。貴方こそ上品なスーツが良くお似合いですわ」
なんだかんだ思っても、しなを作って反応してしまう。
「さて、私は何をどうすればよろしいのかな?こんな事は初めてなので」
いけない、仕事、仕事っと。
「では、まずはWWWAへの提訴について、訴状の内容をご面倒でも直接聞かせて下さいますか?」
「わかりました。まずわたし自身の事ですが、わたしはダングル中央警察捜査一課の警部補です」
訴状の内容は次の様なものだった。
・
標準暦で約一カ月前、ダングル暦で言うと48日前の早朝3時から5時の間に、サミュエル通商の資材課の課長代理であるハマーという人物が、街の運河に転落して溺死した。サミュエル通商はグラバース重工業の生産本部の下請け会社だ。警察では、この事件を泥酔による転落事故死という事で処理した。
ハマーはグラバース重工業生産本部を担当していた。
グラバース重工業は、グラバース財団の一企業部門であるが、重工業部門では銀河系で第一位、総合部門でも第四位という超優良大手企業だ。
この大陸タナストには、そのグラバース重工業のニ本部、営業本部と生産本部のうち、研究、操業を担当する生産本部がある。
このダングルには、温暖な気候による観光業と農産業を除けば際立った二次産業はなく、従って、グラバース財団の支配下にあると言っていい位で、事実、グラバース重工業が大陸タナストに進出してから、元々は大陸エルカにあった首都を大陸タナストに遷都した程だった。
そのグラバース重工業の研究所で、ダングル暦で51日前に爆発事故があった。ハマーが溺死する三日前のことだ。
グラバース重工業研究所の爆発事故についての警察の調査結果は事故。しかし、グラバース重工業の調査機関は原因不明との結論を出しており、警察の事故という調査結果とのギャップに疑問をもったグラバース重工業上層部は、この件をWWWAに提訴しているという。
キャラウェイが疑問を持ったのは、ハマーがそのグラバース重工業研究所の爆発事故の唯一の犠牲者であるアンガロン博士と仕事以上の親交があった点と、二人の死亡時期があまりにも近い点、更に事故の当日は平日でハマーは勤務があったにもかかわらず泥酔していた点だった。そういった事もあって、キャラウェイ警部補はグラバース重工業研究所の爆発事故の線での関連捜査の必要性を訴えたが上には全く受け付けられなかったという。
・
「では」
とあたしは言った。
「キャラウェイさんはこの溺死事件を事故死じゃない、言い換えると、殺人事件だとお考えなんですの?まさかアンガロン博士の後追い自殺だと考えてる訳じゃないでしょう?」
「いや特に結論や推論を持っている訳じゃありません。ただ爆発事故との関連を全く調査しないという点が不満であり、かち、疑問なのです」
「ところで、警察の調査で何か不審な点は見つかったんですか?」
「いくつかはありました」
「どんな?」
「まず、ハマーが事件当日の深夜に出社していたこと。そして会社から問題の運河までの足取りが掴めなかったこと。従って、どこで泥酔するまで酒を飲んだのかその店とかを特定出来なかったことです。」
「ふーん。なのに警察は事故死と結論付けたんですか?」
「ええ。」
「深夜の出社ってダングルでは普通なんですか?」
「いいえ。ここの自転周期は結構早いですから、急ぎの用が出来ても大抵は翌朝で間に合います。深夜出社ははっきり言って不自然ですね」
「その点、ご家族は何か言ってましたか?」
「やはり常にないことだと、こんなことは初めてだと言ってました」
「家族構成は?」
「奥さんと娘さんとの三人暮らしでした」
「あと足取りが掴めなかったって言ってましたよね」
「そうなんです」
「目撃者も皆無なんですか?」
「ええ。ハマーの勤めているサミュエル通商はクルトミのビジネス街の中心部にあるんですが、深夜はほとんど無人なんです」
「そこから問題の運河までは?」
「距離にして5キロ程です。途中に歓楽街があります」
「でもハマーが立ち寄った店は見付からなかった、と?」
「歓楽街の酒場やコンビニなど虱潰しに当たったんですがそれらしい情報は掴めませんでしたし、ハマーらしき人物の目撃情報も得られませんでした」
「ハマー本人が元々酒を持ち歩いていた可能性はどうですか?」
「その点は奥さんに確認しましたが、ハマー自身にそういう習慣はありませんし、アルコール依存症でもありませんでした」
「となると、誰かと待ち合わせしてた可能性がありますね」
「ただ目撃者がいないんです」
「事故後のハマーの所持品には?」
「飲酒に関しては該当する物はありませんでした。周囲や運河もさらいましたがめぼしい物は見付かっていません」
うーーん、手掛りなしか。ま、だからこそWWWAへ提訴したんでしょうけどね。
「転落した運河周辺の現場検証はどうでしたか?」
「運河は両サイドを細い一方通行の通りに挟まれています。ハマーが通りから運河に落ちたのか、架かっている橋から落ちたのかすら特定出来ませんでした。欄干や手摺りにそれらしい跡は発見出来なかったのです」
「そんな状況で事故死と結論付けたんですか?」
「私は納得出来なかった。だから提訴したんですよ」
「なるほどね。大体の状況はわかりました。グラバース重工業側はハマー氏の事故を知ってるのかしら?」
「一度わたしが面会を申し込んだので、忘れてなければ知ってると思います」
ううーーん、ちょっと弱いかな。
「面会の内容は?」
「断られました」
「へ?」
あ、いかん。お間抜けな声になってしまった。
「別途捜査員が出入りしてるので、そっちに聞いてくれ、と断られました。令状があった訳ではないのでそれ以上はどうしようもありませんでした」
「で爆発事故の方の捜査は?」
「その時点ではまだ調査中でしたね。最終的には事故の線で固まりましたけど」
「そっちの捜査員とは接触しなかったんですか?」
「一応しましたが、同じ署内でも守秘義務があって情報は取れませんでしたね」
結構厳しいんだね、そういうの。
「あなたが今回WWWAに提訴した事を警察関係者やグラバース重工業側は知ってるのかしら?」
「わかりません。わたし自身は特に話していません」
「ハマー氏の溺死事件とグラバース重工業の爆発事故については、こちらの中央コンピュータにアクセスして情報を集めます。ただし、溺死事件の方は公式情報だけだから中央警察の見解しか得られないわ」
「それはそうですね」
「ですからあなた自身の見解とか意見があればいつでも教えて下さいね。連絡方法はこれに」
連絡方法を記したメモを渡す。
「わかりました」
「あと何か言っておくべき事とか聞きたい事とかありますか?」
「いえ。今はないです」
「では。また後程」
「はい」
「あ!ここの飲み代はこちらの経費で落としますからお気になさらずに」
・
さて、とりあえずサウンドスターに戻ろう。
サウンドスターは60m級円盤型外洋宇宙船で、WWWAがあたし達のために用意したあたし達の専用機だ。直径約60mの円盤型本体の下部に砲身型の推進機関がぶら下がっている。戦闘、及び、航行能力は300m級駆逐艦並みにパワーアップされていて、ワープ機関はもちろんのこと、各種移動機器(戦闘艇やエアカー、6輪駆動装甲車など)や充実した各種兵装を装備したWWWAでも屈指の宇宙船だ、と思っている。
そう、WWWA。
WWWAは銀河連合に付属する公共事業機関の一つで、正式な名称は世界福祉事業協会、WORLDS WELFARE WORK ASOCIATIONと言う。WWWAは、その略称だ。
そして銀河連合は、言わずと知れた、銀河系約三千の惑星国家が参加して2134年に設立した、汎銀河系平和協力機構だ。
2111年、ワープ機関を完成させて宇宙に飛び出した人類を待ち受けていたのは、様々な災厄(トラブル)だった。続発するトラブルは、植民地経営が安定し、惑星国家が地球連邦から独立してもなくなることはなかった。
そこで銀河連合は、国家と国家の垣根を越えてこれらのトラブルの解決に当たるための専門機関を2135年に設立させた。
それがWWWAだ。
WWWAは、人類に関して発生したあらゆるトラブルに対処し、これを自ら解決、あるいは、それに至るまで助言を与えられる能力を有した人材を確保し、養成し、派遣する事を目的とする、銀河連合内では極めて特殊な組織なの。
WWWAは、提訴によって動く。各国家の捜査機関が匙を投げた事件、あるいは、彼等が事件とすら認識していないトラブルをWWWAは扱う。
提訴が行われると、銀河連合の中央コンピュータはトラブルの内容を吟味する。加盟国政府のコンピュータ・システムと直結されている中央コンピュータはそのトラブルを徹底的にシミュレートし、当該トラブルが放置されているとどういう状況に至るかを予測する。そして、その結果、このトラブルを解決しなければ人類の繁栄に重大な障害が生じると認めた時に、WWWAは専門の係官を派遣するという訳。
トラブル・コンサルタント。略してトラコン。
係官はそう呼ばれているの。
WWWAにはその目的を遂行するために、絶大な権限が銀河連合によって与えられている。WWWAから派遣された係官は連合に加入している惑星国家においては、出入国は一切自由で、完全に独立した捜査権も認められているし、特に、あたし達みたいな犯罪担当のトラブル・コンサルタントは、武器の使用すらも無制限なのよね。
でも、WWWAは決して国家警察や特殊軍隊なんかじゃない。警察も軍隊も各惑星国家がそれぞれ独自に保有しているし、銀河連合には連合宇宙軍がある。WWWAはあくまでも人類全体の利益のために機能しており、その理念は『生命の繁栄』、即ち、福祉だ。だからこそ、WWWAの係官は捜査員ではなく、相談員、コンサルタントなのよ。
・
宇宙港でレンタルしてきたエアカーで宇宙港に戻る。オートパイロットだから飲酒してても問題はない。
離着床のサウンドスターのハッチからコックピットへ。
「ただいまー」
「おかえりー」
フェルだ。あたしの相棒。
年はあたしと同じ19歳。生まれた時からの腐れ縁で、何の因果かWWWAに揃ってスカウトされて一緒に仕事してる。
そ、あたしイスラと妹のフェルは一卵性の双子なのだ。
身長、体重、スリーサイズは全く同じなので省略。ただ髪はあたしが漆黒のロングなのに対して、フェルは紺碧に染めている。しかもショートだ。それは見かけ上二人を区別する唯一の特徴だ。性格はあたしがお淑やかなお嬢様タイプなのに対して、フェルはボーイッシュでちょいガサツかな。
「どうだった、依頼主の方?」
会話の内容は受信機で聞いていた筈だ。だからフェルが聞いたのはキャラウェイの容姿って事。
「普通のおじさんだったわよ」
「そっかなぁ。ちょっと渋い、なーんて思ってたんじゃない」
フェルが意地悪そうに言う。心の中を見透かされるのはお互い様とは言え、こういうふうに言われるとあまり気分のいいもんじゃない。
「それよりデータ収集の方は?」
あたしはフェルの嫌みを無視して聞いた。
「ばっちし、おっけぇ」
「グラバース重工業の爆発事故のWWWA提訴の件については?」
「そっちは本部の中央コンピュータからもデータをコピっといたよ」
「サンキュ」
じゃあグラバース重工業の爆発事故から見てみるとしますか。
・
<グラバース重工業の爆発事故>
標準暦で約一カ月前、ダングル暦で51日前の04:02、グラバース重工業のテッペウス博士のA―24研究所7棟全てが爆発、炎上し損失した。現場からは、何故かA―18研究所のアンガロン博士のものと鑑定された肉片が発見された。
研究所内には爆発物が保管されており、それらが連鎖的に爆発することはあり得ない事ではなかったという。
しかし、19時から翌07時まで研究所は完全閉鎖されるにもかかわらず、アンガロン博士の遺骸らしきものが発見されたこと。アンガロン博士はA―24研究所とは直接関係がないこと。アンガロン博士の身の回りの物がほとんど処分されていたこと。これらの点をグラバース重工業側の調査機関が不審な点として挙げている。
結局、中央警察は事故説で決着、グラバース重工業側の調査機関は原因不明で決着。この両者の最終報告のギャップがWWWAへの提訴に繋がったのだった。
・
「ねえ、フェル。こっちの爆発事件の方の提訴はどうなったの?」
「さあ、まだ審議中なんじゃない?」
質問を疑問で返されてしまった。
さて、何から調べようか。
・
「ここね」
と、あたしは指さして言った。
「ハマーはこの辺りから運河に落ちたのよ」
やはりまずは現場から、だわね。
運河沿いの通りだ。日中でも人通りの少ない裏通りだ。
運河との境には柵があり、橋には欄干がある。どちらも腰より少し上の高さがある。
「欄干と柵の高さが微妙ね」
流石双子、考えることは同じだ。
そう。微妙なのだ。誤って落ちない高さではない。
「ハマーの当日の足取りも曖昧だわ」
あたしが調書の疑問点を確認する。
「そうね」
フェルも調書は頭に入っている。
「どこでいつまで飲んでここに来たのか、警察はハマー足取りを掴んでいないわ」
「なのにどうして当局は事故と結論付けて捜査を打ち切ったのか?」
「だわね」
そんなことを話していたら、突然、シューッという圧縮空気の音がした。運河から目線を上げるとエアカーが突っ込んで来る!
「フェル!避けてっ!」
あたしはそう叫ぶなり、欄干を運河の方へ飛び越えた。フェルも欄干を飛び越えていた。
エアカーから数条の光があたし達に伸びてきた。
レイガンだ。
「くっ!」
そのうちの一本があたしの左肩をかすめる。
『ジュッ』
嫌な音だ。レイガンがあたしの身体に当たってその表面が蒸発した音だ。
「イスラっ!」
「大丈夫よっ!応戦して!」
携帯していた小型レイガンを撃つがエアカー相手には出力が足りない。
エアカーは散発的にレイガンを乱射するとそのまま通り過ぎていった。
「フェル、大丈夫?」
「当然。そっちは?」
「問題ないわ」
しかし何故あたし達を襲ってきたのだろう?これではまるで、ハマーの件は他殺ですよ、と言っているようなもんだ。
「今のやつって何がしたかったんだろ?」
フェルの疑問も当然だ。あんな攻撃じゃあ確実には人を殺せない。中途半端過ぎるのだ。
「だね」
「ばっかじゃないの?」
同感。
「だね」
なんだったんだろ?
でも、あたしはワクワクしている。何だか刑事ドラマみたいだもん。
「捜査らしい捜査もしてないのに手荒な歓迎」
「人違いじゃあないよね?」
「それはないっしょ。二人一緒だったんだから」
「捜査から手を引けっていう脅しかしら?」
「かもね」
エアカーはあたし達が掴まっている欄干にぶち当たってそのまま逃走した。幸いに欄干は無事であたし達も運河に落ちることはなく済んだ。
あっと言う間の出来事だ。
あたしのタンクトップの肩のところはレイガンの直撃を浴びて焼け焦げている。だが身体には何の怪我もない。
あたし達の身体は透明の極薄強化ポリマーで被われていて、レーザー光線のエネルギーはそのポリマーに吸収されポリマーの蒸発熱として大気中に発散されていたのだ。だから身体には何の影響もない。通常のレーザーなら連続直射でも30秒位の照射に耐えることが出来る仕様になっている。
タンクトップ、経費で落とすの忘れないようにしなくっちゃ。
「本当にあたし等を狙ったの?」
「さあ?」
フェルの疑問に答えを持たないあたしだった。
あたし達に対する単なる警告なのか、殺意があったのか。
やっぱり手始めは警察に当たるしかないかな。
・
ヤングール警部は全くもって不機嫌そうだった。
「WWWAの捜査官がなんでこんな些細な事故に口を出すんだ?」
「捜査官じゃないわ。コンサルタントよ」
フェルがしっかり訂正する。
「別にウチはあの事件で困ってなんかいないし、もちろんコンサルタントなんて頼んじゃいない」
「でも証拠不十分じゃないですか?確率論で結論を出していませんか?」
あたしがつつく。
「あれは立派な正真正銘の事故だ。間違いない」
「では捜査資料を見せて下さい。あたし達はあたし達でもう一度事実関係を洗い直します」
ヤングール警部の顔が真っ赤になる。
「そんな事は認められん。あってはならん」
と、訳の分からないことを言う。
「じゃあ署長に言えばいいの?」
フェルが追い打ちをかける。
「署長は今休暇中だ」
「そ。ま、どっちにしてもあたし達は勝手にやらせてもらいます」
あたしも啖呵をきった。
・
「やっぱりおかしいよ、イスラ」
「んー、おかしいって、何が?」
「ハマーの足取りだよ」
すったもんだしたけど、あたし達は中央警察の署内に部屋を貰って捜査資料と格闘している。資料の中にはコンピュータに入力されていないデータもあるから、紙の資料を目で読むことも重要なのよね。フェルはそうでもないみたいだけど、あたしはこういった捜査は大っ嫌いだ。
「どうなってるの?」
「21:23退社、22:50頃帰宅。02:43出社、03:32退社。」
「いったん家帰ってまた出社したんだぁ」
「そうなんだよね」
「家族は?」
「奥さんに娘さん一人」
「で調書は?」
「特段何も。自殺、他殺ともに思い当たる要因はなし、と」
「そっか。でも不自然だよね。翌日が休日ならまだしも、なんでまた出社なんてする必要があったんだろう?」
「それが判かれば解決なんじゃない?」
フェルの言う通り。
警察の資料を写真に取ったり端末に読み込ませたりしてサウンドスターのコンピュータに入力する。
・
フェルはサウンドスターに戻った。
今まで調査した結果をWWWA本部の中央コンピュータに送信して分析させるのだ。
あたしはハマーの自宅に向かっている。
亡くなった人の家族を訪問するのは苦手だけど、仕事だからしょうがない。
ハマーの家は首都クルトミの郊外、エアカーで10分程の住宅地の中にあった。
『ピンポーーーーン』
・・・。
「はい。どちら様ですか?」
奥さんの方みたいだ。
「WWWAのコンサルタントです。ご主人の事故の件を担当しています」
・・・。
『シュン』
ドアが開いた。
「どうぞ。お入り下さい」
「ありがとうございます」
・
ブラックコーヒーとクッキーが目の前にある。
「でもまたなんでわざわざWWWAの方が内の主人の捜査なんかを」
「この事件をWWWAに提訴された方がいるんです。そしてWWWAの中央コンピュータはこの件を調査、解明すべしと判断したんです」
「警察では事故として処理されました」
「ええ。知ってます」
「WWWAが調査するという事は事故ではなかったという事なんでですか?」
「それはなんとも言えません。調査の結果、やはり事故だった、という事になる可能性はあります」
「では何が問題なんですか?」
「事故だという証拠が不十分なんです。奥様ご自身はどうお考えでしたか?」
「自殺はない、と思いました」
きっぱりと断言された。
「それは何故ですか?」
「自分で言うのもなんですが、家族を置いて自殺するような無責任な人じゃあありませんでしたから」
「なるほど。では他殺は?」
「それもないと思いました。他人から恨まれるような性格じゃあありませんもの」
調書通りね。
「あの日、ご主人はいったん帰宅なさってからまた会社に行かれてますが、そういう事は結構あったんですか?」
「いいえ、ありませんでした。初めての事だと思います」
「で、退社後にお酒を飲まれて事故に会われた」
「・・・」
「お酒は良く召し上がる方でしたか?」
「まあ人並みだったと思います」
「翌日、というよりも後数時間後にまた出社しなければならないのにお酒を飲まれてますが、この点はどう思われましたか?」
「はあ。その点は確かに主人らしからぬ行動だと思いました」
「・・・」
「でも絶対にないか、というと、何とも言えません。いえ、だからこそ事故が起きたと思いました」
そうくる、か。
その他、家庭環境とか職場環境とかについても聞いたが、大した収穫はなかった。
「もし何か思い出した事ががあればいつでも教えて下さい。連絡方法はここになります」
連絡方法を記したメモを渡す。
「わかりました。何かあればすぐにご連絡致します」
「ありがとうございます。では失礼しました」
「お役に立てずに申し訳ありません」
「いえ」
役に立たなきゃいけないのは、あたし達なんだよね。
・
サウンドスターに戻った。
「ただいまー」
「おかえりー」
フェルだ。
「収穫は?」
「微妙ね」
決定打がない。このままでは原因不明としか言えない。
「やっぱり事故とは思いにくい?」
「フェルはどう思うの?」
質問を質問で返す。
「他殺っぽいよね。夜中の出社が怪しいよ」
「だよね」
「明日一番会社に行こう。アポは入れとくから」
「オッケィ」
「あとさ、言い難いんだけど・・・」
フェルが言いよどむなんて珍しい。
「何よ」
「グラバース重工業の爆発事故の提訴、受理されたよ」
「へえ。で担当は?」
「それがね」
「まさかあたし達?」
「いや、まだあたし等の方が良かったかも・・・」
いやにもったぶるわね。
「誰なのよ?」
「・・・ラブリーエンゼル」
!
「な、に?」
「だから、ラブリーエンゼルだってば!」
暫し茫然自失。あの超々有名なコンビが担当だってぇ!
「うそぅ、ダーティペアが?」
「そ」
「「超絶最悪ぅ!」」
なんだかなぁ。
「晩ご飯どうしようか?」
フェルに聞く。
「聞き込みも兼ねて街に出よう」
うーん、そんなに何件も行けないと思うけどな。
ま、外食自体は大賛成だわ。
・
ダングルは陸と海が半々というだけあって海洋資源が豊富な惑星だ。従って、料理の方も新鮮な魚介類をふんだんに使ったものがお薦めと言って良い。
暫く街をブラブラする。
フェルはあんな事言ってたけど、聞き込みなんてちっともしやしない。単なる口実だったんだね。
あたしも敢えて突っ込んだりしない。
「この店にしよっか?」
フェルが指差した店は典型的な海鮮料理店だった。
「いいんじゃない」
「じゃ入ろう」
「うん」
漁網や銛、浮きなんかが飾ってあっていかにも海鮮料理店です、って感じだ。
「あたしは魚介類の盛り合わせにする~」
魚介類の生の活け造り、あたしの大っ大好物だ。
「じゃああたしはとりあえず海草サラダとパエリャにするかな」
「取り替えっこするんだよ~」
「わあーってるって」
いつもの事なのでフェルも動じない。
ウェイターの薦めでダングル名物のという魚の煮付けも追加した。注文し終わってフェルが言った。
「ところでハマーは深夜の出社の件だけどさ。ハマーはその後、誰かと待ち合わせしてたんじゃないのかな?」
「だから出掛けざるを得なかった、と?」
「ああ。ついでに会社に立ち寄って何かした。あるいは、何かを持ち出したのかも知れない、その待ち合わせ相手に渡すために」
「何を?」
「それは明日サミュエル通商に行って調べるんだよ」
「そっか」
「そいう事~」
料理がきたので話しは中断した。
活け造りは最高だった!
蛤や田螺、亀の手みたいなのなどなど、見てくれは悪いが味は最上だ。
「旨~い」
「だね」
食事に取り掛かるとフェルは無口になる。
仕方がないのであたしも食事に専念した。
・
「ふゃ~い。食った食った!」
なんか意味不明な感嘆符を発してフェルの食事は終了した。
結局都合3品追加していた。
あたしの倍位食べる癖に体型はあたしと変わり無いフェルって、一体どういう身体構造をしているのだろう?
「じゃあ明日は朝一番でサミュエル通商だね」
あたしが確認する。
「あいよ~」
フェルが答えた。
・
<続く>
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