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IwasborntoloveyouⅣ
I was born to love you~Ⅳ~litten by 副魔王
司と洸一 Ⅳ
10日間に及ぶ塔馬とのミニキャンプが終了した。
司と洸一は清水オリオールズの独身寮「緑茶館」の1室の前にたたずんでいた。
「なんでや...?」
「なんでやろ?」
二人の前にはドアがひとつ。
その横には
『国東洸一』『鴻波 司』と連名で名札が入れてある。
ドアを開けると乱雑に二人の荷物が運び込まれていた。
「...だから国東をよろしく..やったのか..」
「なんやて?なんか知っとんのか?」
...........
「いや、な。キャンプ終わりにコーチが
国東は練習のしすぎだ。夜の自主トレのオーバーワークが気になる。
いいペースを保てるように頼むぞ、鴻波。って、言われたさかい、
何のことやろ?と思うってたんや。
まさか、寮でも同部屋になるとはな....」
「なんで、俺らが留守の間に引越し済んどんねん!」
「いよう!国東ぃ~vおかえり~♪」
ソコにやってきたのは万年新人のような堀田。
「ほったさ~ん(涙)俺ら部屋替わってます!」
「ああ、それね。昨日コーチから電話があって、二人を同部屋に
するように言われたんだ。
国東と鴻波、キャンプで疲れてるだろうからって、手の空いてる新人どもが
昨日総出で荷物運んでたぞ」
「...あ、ありがたいコトで...(汗)」
新入団の新人は寮でも2人部屋が普通だ。
でも、キャンプに出発するまでは、それぞれ別のヤツと同部屋だったのに..。
鴻波はドアの前に突っ立ったまま考えていた。
これじゃあ、大学の時に逆戻りだ。
また、俺に部屋で黙々と筋トレせえ言うのかい?
今は、もう...アカンで...。
「もう!仕方ないわ!入るで!」
勢い良く部屋の中に消えた洸一に続き司も足を進める。
お互いのベットは部屋の両端に備え付けてあり
寝るときまでは心を乱されずに済みそうだ。
「でもなあ、オーバーワークなら司のほうが心配やないか。
いっつも練習場最後まで使こうとるの司やし。
ほんと、お前ってコーチから信頼されてんのな。」
「それだけ洸一が大切な選手だって事やろ?
昔から良くわかってる俺がお目付け役に任命されたんや。
安心して暮らせや」
いつもの優しい微笑を浮かべながら話す司に
アホぅ..と返してみる。
洸一の胸中も複雑だった。
いつまでも隣にいたいんや。
お前、いつになったら気ィ付いてくれるんや。
あのときの司の言葉が頭をよぎる。
いくら鈍感な俺でも分かるで。
司が俺を好きな事くらい。
でも...俺は...。
だけど、同室にまでなったら、自信が無い。
司に好かれて逃げ回っている自分がやっとなんだ。
ごめん...。俺は卑怯だ。
本当は怖いんだ。
司にのめり込んで、自分がどうにかなってしまいそうで...。
司が何処まで俺の事を思ってくれているかは正直分からない。
だけど、ずっとお前を失いたくない。
...司に溺れて..嫌われる日が来るのなら...
このままでいたほうがいい。きっと...。
その日、部屋の片付けは夕方までかかった。
なんとなく、会話の少ない空間だったが...安心感もあった。
球場でいやな事があってもここにはアイツがいる。
少しだけ...コーチに感謝したい気持ちになった。
その日から2週間が過ぎた。
オープン戦が始まり、オリオールズは初日から2連敗。
大事な3戦目で国東と新人キャッチャー 辻を先発起用した。
中盤まで速球で相手球団を押さえ込んでいた国東だったが
7回にダイレクトに打球を足に受け、制球が乱れ
痛恨の1点を取られてしまった。
「アカン..。俺が何とかしないと...」
気持ちはあせる。痛がってなんていられない。俺が..俺が何とかしなければ。
『7番 辻に代わりまして、バッター鴻波』
代打に立った司はクリーンHitで出塁。
その後の波多野らにつなげ、オリオールズ逆転の足場を作った。
また、8回からキャッチャーマスクをかぶり、
プレッシャーに押しつぶされそうになっていた洸一をフォロー。
再び訪れたピンチの場面も、見事な送球で2塁で走者を差し、
オリオールズに貴重な1勝をもたらした。
部屋に戻ると2人は冷蔵庫のビールを開け密かに乾杯した。
チームの勝利と2人の評価がぐんと上がったことに対して。
「...イタっ..」
「ほら、無理して動くとまだ腫れるで」
「大丈夫やこれくらい。プロやで。俺ら」
「あのな...。
球場でいくら強がってもいい。そやけど、
ここでは...俺の前では強がらんくてエエ。
痛いもんは痛い。辛かったら辛いって言い。」
今日活躍したんは司やのに。
俺の評価が落ちなかったのは司のリードで立ち直ったからやのに。
自分かて疲れてんのに、人の心配ばっかりして....。
司 酔いにまかせて甘えてエエか?
「あ”~~!!痛かった!アホンだら!
痛くて泣きそうやったわ。シュートも落ちへんし、どないしょかと
思うてたけど....。
司のおかげや...。ありがとう。ほんま...助かった。」
洸一がこんなに素直に司を誉めるなんて。
言った本人も、言われた司もあまりの心地良い言葉の響きに
驚きと喜びを隠し切れなかった。
「なにゆうとるん。8回からの洸一の立ち直り見事やったで。
コーチもエライ誉めてたわ。」
「いや、司のHitと盗塁阻止が無かったら...俺...」
「うん。エライ上手く行きよったな。
良かった...。洸一の役に立てて。
洸一のあの不安そうな顔、すぐに消せて良かった。
洸一のエエとこ引き出せて...嬉しい。」
「司...」
ベッドに腰掛けた司が洸一の柔らかい髪を撫でながら囁く。
「俺...もうダメや」
「え?」
「...洸一が好きで好きでたまらん。そばにいたい。
欲しい..って、思うてる」
「なっ...//////」
「今日は洸一のために動けて幸せや...。kissしてエエ?」
「だっ..ダメ!だめだめだめ!!!」
「俺の昔からの気持ち、気づいたんやろ?
俺の事イヤじゃないやろ?
むっちゃ今幸せな気分やねん。ね、kissさせてえな」
「なななな...何言ってんだよ!誰も司のこと好きだなんて
言ってへん!」
「...でも、キライじゃないやろ?」
「...うん...。
でででも!これは別。べつや...。」
ドキドキドキ...鼓動が早鐘のように響く。
司にも聞こえるかの様に大きく。
そんな...突然..。
司に襲われたら俺..。逃れることはできへんよ。
体格的にハンデあり過ぎやて!!
「あ~~。今日はもう、ええわv洸一がその気があるって分かったし。
気分エエわ~♪
とりあえずよかったな!俺たちおめでとう!!ハグ!!」
大きな掛け声とともに司の広い胸に抱きとめられる洸一。
「アホゥ..ヤメろって...」
口とはうらはらに心地よい司の体温。
kiss...させてやればよかったかな?
司、そんな積極的なことあんま、言わへんのに...。
酔うてるんかな?
司は自分の胸にすっぽり収まった洸一を満足そうに眺めながら
思っていた。
残念やな...。今日こそホントのキスができると思うたのに。
そう、洸一が先に眠った夜、密かにキスをかましていた、この男。
やるときはやる! それが、鴻波 司なのだ。
二人の心はまだ開かれたばかり。
I was born to love you-Ⅴへ続く
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