しーくれっとらば~’S

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SERENADE 第2話 圭



SERENADE



~THE 2nd~ side KEI TOUNOIN



僕の悠希。
彼が書いた文字を見るだけで、彼の優しさや
細やかな心遣いや、そして...
あの時僕に向けられる情熱までもが浮かび上がって来る様だ。

僕--- 桐ノ院 圭--- は
愛する僕の悠季が選んだ薄紫色の日記帳を手にしたまま
しばらく固まってしまった。
文字を見ただけで、こんなに優しく、熱い気持ちになるなんて..。

「僕も...ヤキが回ったものです..。」

小さく呟いてペンを取った。
自虐的な思考はこれ以上スターップです。
今の僕自身が悠季を求めてやまないのですから。

*********************************

悠季。
昨晩は本当に苦しかった。

夜中に悠季がそっとベットに入ってくる気配で
僕はふと目を覚ましたのです。
...君は僕を起こさないように、
それは慎重な動きでしたが。

外の、木々の香りを一緒につれてきて
僕の隣でふっと満足そうな溜息をついた君が
眠りに落ちていくのを、
僕は目を閉じたままずっと感じていたのです。

昨日もM響の音合わせで、たぶんに行き違いがありまして、
神経が高ぶっていたものですから
僕の眠りの質はそれほどいいものとは言えなかったのです。

そんな折、(大げさかも知れませんが)
木々の妖精のような君が隣で安らかな寝息を立てている。
...すっと、僕の中の高ぶったモヤモヤしたものが
浄化されていくのを感じました。

ああ、悠季。
僕はなんて崇高な雰囲気をまとった人を愛したんだろう!!
願わくばその身体も、精神も、そう、全てを
今ここで僕の中に閉じ込めて置きたい!!


先日自分で書いた「英気を養う」という誓いも忘れそうになるほど
悠季の寝顔に惑わされました。
ようやく保っている自制心との戦いに
かろうじて勝利した。という所でしょうか。

今日、五十嵐君に
「コン、先輩の体労わってますかぁ?
 先輩、ソリスト公演の練習がんばっちゃってるみたいっすからね。
 いたずらしちゃ、ダメっすよ!」
なんてクギをさされたのも大いに役立ったのかも知れません。

君は...五十嵐君にそんなに疲れた顔を見せていたのですか?
...いや。僕の思い過ごしでしょう..。
勘のいい五十嵐君の事ですから。しかし!それさえも!
僕以外の誰かが悠季の身体を思いやるような素振りを見せただけでも
僕の独占欲と嫉妬心がそれを許さないのです。

ああ、悠季。
君の疲れも、感情も、熱さも
全て分かり合えるあの瞬間が待ち遠しい!
お互いがエムパスになったかのように
感情が交差するあの瞬間を。


今宵は「タンホイザー」で眠る事にしましょう。
きっとその壮大な音符の舞踏は
昨日よりもずっと良質な眠りを与えてくれるに違いありません。

おやすみ。悠季。
ぐっすり眠るんですよ。

                        圭



********************************


...読み返すのは止めておこう。
ただ、これを読み終わったあとの悠季の
恥ずかしくも嬉しそうな微笑を想像して
楽しもうではないか。

ああ、もう少しで悠季を抱ける。
「おあずけ」を喰らっている僕はどんなに凶暴だろうか。
「おあずけ」を喰らっている悠季はどんなに煽情的だろうか。

また、自制心との戦いが始まりそうで
僕は大慌てで日記を置き、ベッドにもぐりこんだ。

「セレナーデ」第3話へ行く


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