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2005年03月31日
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テーマ: 法律(494)
カテゴリ: 憲法




政教分離の事件で、変わった事件があります。
(最判平成8年3月8日)
原告も被告も互いに政教分離違反を理由にしたのです。
何のこっちゃとお考えでしょう。以下のような事件だったのです。

ある公立の高専生がいましたが、エホバの証人という武道全般を禁じている宗教の信者だったため武道の時の体育は全欠席扱いとなり、結果体育の単位がとれず、留年を繰り返し、ついには退学処分となってしまいました。

これに対して、高専生は武道の代替手段を認めずに留年させたことはエホバの証人の信者であることを理由とした宗教弾圧であり、政教分離違反であるとして、高専を訴えました。
逆に高専の校長は、もし代替手段を認めればエホバの証人の信者を特別扱いしたことになり、却って政教分離に反してしまうから代替手段を認めないのは当然であると主張しました。

さて、双方とも政教分離を主張したこの事件はどうなったのでしょうか。
双方の主張を検討しましょう。
目的が宗教的意義を持ち、その効果として宗教に対する援助・助長、または圧迫干渉になるような行為の場合には政教分離違反となるのでしたね。
まず、高専の校長の主張から見ていきましょう。
エホバの証人に代替手段を認めることは政教分離違反でしょうか。
エホバの証人は武道のみを禁じただけですから、他の体育の行為は出来るわけです。
例えば、皆が剣道をやっている時に、剣道の代わりとしてグラウンドを走らせることは政教分離違反となるのでしょうか。
まず目的としては、単位を認めてあげるためのやむない措置ですから、宗教的意義は何らありません。
また、皆が剣道をやっている時にグラウンドを走らせるのはエホバの証人の信者を優遇したわけでもないし、冷遇したわけでもありませんから、効果として宗教に対する援助・助長、圧迫・干渉にはなりません。
よって、高専の校長の言う政教分離違反の主張は誤りと言うことになります。

では、高専生の言うように、代替措置を認めないことが政教分離違反とまでいえるでしょうか。
宗教上の理由で代替措置を求めているのに、代替措置を認めないと言うことは、その宗教の教えを認めないことになり、目的として宗教的意義を持ちます。
そして、その結果として高専を退学させるというのは宗教を信じたことに対する著しい不利益であり、エホバの証人を圧迫したことになります。

ここまででお分かりの通り、高専の校長の行為は違憲とされ、退学は撤回されました。

ちなみに、この高専生は真摯な宗教心を持っていたから認められたのです。
例えば、数学が嫌いだからと言って、ある日突然「自分は数学をしてはならない宗教に参加した。よって数学に代わる手段を自分に用意してくれ」と言っても、それは通りません。勘違いしないで下さいね。
ちなみに、この高専生は剣道の時間中ずっと正座で見学をし、見学レポートを毎時間提出していたそうです。そこまでの宗教心があるからこそ、高専生の主張が認められたのかも知れません。





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最終更新日  2005年03月31日 01時41分41秒


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