潤風満帆☆ごきげん号!!

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May 22, 2006
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カテゴリ: 小栗旬くん
昨日観劇した『タイタスアンドロニカス』大阪千秋楽の感想、改めて。


さいたまの劇場では、
ロビーに衣装のハンガーラックや鎧などのせたラックがあったそうですが、
大阪の劇場は小振りで、ロビーも広くないからでしょう、
舞台の上にそれらが置かれていました。

開演前ぎりぎりまで、発声やストレッチをする役者さん達。
衣装の補着などの仕上げも舞台上でされ、
まんま舞台裏を見せていただいてる感じでした。

吉田鋼太郎さん、グレート義太夫さん、杉浦大介さん、川辺久造さん、


もしや旬君が一瞬でも舞台前のリラックス顔を覗かせやしないかと、
開演までの30分間、パンフレットを読みつつ、
舞台から目が離せませんでした。
結局拝めませんでしたが。

帝位継承権をめぐり争っている古代ローマ帝国のもとで、
武将タイタスアンドロニカスの勝戦の捕虜達が絡み、
どろどろの愛憎復習劇が連鎖を続けるわけですが、

この舞台で『悪の元凶はエアロン』と言われ、確かにそうなんだけど、
結局タイタスアンドロニカスもサターナイナスも、
タモーラもその息子達も、
関わる主要人物のほとんどがエアロンの『悪』と



エアロンの悪の根源は、生まれ事体にさかのぼり、
人種であるとか身分や階級であるとか、
そういう中での差別から発生しているのだ。
生まれながらにして悪に染まり、
生き残り生き続けるためにも重ねる悪行、


そんなエアロンを演じる旬君が捕虜として鎖に繋がれた姿で舞台にあがってから、
第一声の台詞を言うまでに、かなり時間がありました。

台詞のない空間の中の芝居は(それも状況的に直接絡んでこないシーン)、
想像以上に難しかったと思います。

タイタスになりきっているその胸の内を覗きたくて、
彼の演技をまじまじと凝視していた私。

磨かれたジャックナイフのように鋭い目つき、
そしてたまに見せる腐った魚のような眼、
いや、死んだ魚の眼って、言うのか、すみません、
表現が変ですけど、一瞬見せるその眼差しに哀れみが・・・・

あの台詞のない長い間のエアロン、
掴みはオッケー!でした。
かなりよかったです。

タモーラの生き残り息子ふたりをそそのかす時に、
からかったりする場面では、
悪のエアロンにも、ちらっと道化的っぽい表情や仕種がほどこされ、
100%悪でだけしか出来ていない人間を忘れさせる。

もっともなこと。
100%悪の人間なんていようものか。
前に生まれながらにして悪に染まり、とは表現したけれど、
厳密には物心つくまでには悪に手を染めないだろうし、
悪に染まってたって、どこか染めムラがあったりもするだろうに。

だから人間なのだと、
だからエアロンのみならず舞台の上にはあちこち悪人がいたことを、
改めて思い知らされるのでした。


突出して悪を身にまとったかのようなのはエアロンなのであって、
その並外れた悪さを表現する演技は、
小栗旬君100点満点でした。

タモーラから生まれた自身の子供を愛おしむエアロン、
悪でしか生きてこられなかった人間の乾いた心に染むような新しい命。
子供を抱くエアロンの無防備さ・・・
すっかり人間エアロンをまるごと引き受けて演じる旬君に感動。


他の配役でも、
助演格とはいえ、ルーシアスの横田栄司さんも観客を魅了していてましたし、
ラストシーンでエアロンの黒い赤ちゃんを抱き締めて天を仰ぎ泣き叫び続ける、
ルーシアスの息子役西本健太朗くんも声枯れしていたけどとてもよく、
復讐劇の幕引きを祈るような、それでいて、どこかで絶望しているような、
なんとも言えない感じが胸に迫ってきました。

舞台美術も素晴らしく、音響も素晴らしく、役者陣みな素晴らしく、
文句のつけようがありませんでした。

来月イギリスで上演されますが、
イギリスにのしつけて送り出せるってもんですよね。
当たり前ですが。


内容的には苦手な悲劇だったけど、
とても満足して充実した3時間半でした。

観客の中でところどころ涙を拭いている人、鼻をすすっているひとがいました。
私も「どこ」かは忘れましたが、何ケ所か泣きそうになりました。

信じられませんが、静かなシーンの時に、
プリプリッとオナラをしてくれた人が近くにいました。
明らかにあれはオナラでした。
ま、してしまった本人が一番恥ずかしくて辛かったと思うので、責めませんが。


でー、
流す涙はもう一滴もないからだ、と笑っている自分のことを語ったタイタスですが、
あれは本当は違うのね。
悲しみの涙は人体に水分がある限り流れ出続けるもので、
涙は枯れない、悲しみの涙は枯れないの。
でも、人間に秘められた再起本能というのか防御本能というのか、
それで涙が封印されてしまうのだね。
タイタスは立ち上がったのです。


しかし、それがまた復讐劇の幕開け、
復讐と言う言い訳の殺人が重なってゆくのです。

そんなことなら、タイタスの涙は滝のように止まることなく流れ続け、
立ち上がれないままの方がよかったのではなかったか、
とさえ思えました。

人間が人間であり本能のおもむくままであり続けたら、
そういう悲劇の連鎖はやはりどうやっても止めることはできないのか、
と古代背景の舞台に思いをはせつつ、
現代の人間達の今後の有様を憂いてみたりしてしまうわけです・・・


ううう~、それにしても私にはきつい重い内容の舞台でした。
おなかいっぱい、ごちそうさま、胃もたれしてます。


ああ、そうそう、カーテンコール、鳴り止まぬ拍手で、
何度もキャスト皆さん舞台に出て来て下さって、感無量でした。
終演直後に私は「ブラボー!」と叫んで立ち上がりたかったけど、
それが出来ない小心者・・・・
同じような思いの気の小さい遠慮がちな日本人は
他にもいっぱいいたはずです。
前列の方のお客さんが立ち上がって、
みな連鎖的にスタンディングオーベーションになりましたが、
本当は直後に感情をあらわにしてガッ!と立ち上がり頭上で拍手したかった~!
情けない日本人の私でした。





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最終更新日  May 22, 2006 11:00:13 AM
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