アガパンサス



庭のアガパンサスの蕾が開き始めた。
生け花の先生がお好きだった花。

「この花が一番好き。綺麗でしょう、この色。」と仰る時の先生の眼の中には大人の女性の不思議な魅力があった。
大切な思い出でもおありなのか、花材の中にアガパンサスを見つけると優しい眼差しを向けられる。

先生の活けられたお花はどれも素敵だったけれど、私は特に自由花が好きだった。
どの作品にも優しさと豊かさが溢れていた。
鮮やかな赤と紫、それに黄色というような、私には手に負えないような色の組み合わせでも、それぞれの個性を損なわず、さらに上品に活けられた。

私のお花は良く言えばシンプルでシャープだが、今にして思えば寂しく鋭すぎたと思う。紫の花に洗練された都会のイメージを抱くと、くすんだ赤い花は邪魔だった。
「あら、この花は?」「紫と会わなくて・・・。」
そんなやり取りはいつもの事だった。
そうすると先生は「そうですか? ここに置いてみましょうか。」
私がちょっと寂しいかな・・・と思っているあたりにススッと手が伸びる。
「あら~~~!!」
ほんの何秒か。それだけで生まれ変わったような優しさが満ちてくる。
その色合わせで、ちっとも下品でないのが不思議でたまらなかった。
見る人に安らぎを与え続ける花の存在。
奇を衒う活け手の独りよがりの主張は、安らぎからは程遠いものだと今思う。

きっと先生と私はお花に対する感性が似通っていたんだと思う。
その後、仕事が忙しくなったりして辞めてしまったけれど・・・・
先生の元で続けておかなかった事を悔いている。

先生、元気でお過ごしでしょうか?
私もアガパンサスの花の色の似合う年頃になりました。


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