≪最終話≫
本来ならば
倫理上でも法律上でも
兄妹同士の子供は産んではならないタブーである
然しながら我胎児は堕胎手術が許されない5ヶ月を経過してた
それも有って父親の居ない私生児と言う事で
暗黙の了解を密かに産院に取り付けた
そうこうして臨月が遣って来て
あれだけ衰弱した母で有ったが
段々孫が生まれる時が近づくにつれて
不安が一杯だがやはり可愛い初孫
其の腕で抱いてみたい願望から
だいぶ元気になってきた
父と言えば仕事に忙殺されて
感傷に浸る余裕が全然無い状況で
毎日駆け回っている
私も仕事と胎児の成長が
悲しみから少なからず開放してくれた
いよいよ出産の日が遣って来た
今までの心労が重なってか
相当陣痛が来ているにも関らず
なかなか産まれて来ない
かなりの出産の苦しみを得て
漸くあかちゃんの産声が聞こえた
私は段々意識が薄れて僅かな消え行く残りの力で
五体満足な姿の我子をこの目で確認して
この手で抱きかかえ様と手を伸ばし
微かに乳飲み子の指に触れて
大きな安堵感を胸に
そのまま動かぬ人となった
死ぬほんの一瞬前に
分娩室のドアに幻を見た気がした
それは正しく死んだと思ってた
愛しい彼！最愛の兄の姿であった
実は交通事故で頭を打ったが
奇跡的に一命を取り留めた
しかもそのショックで目の神経が治り
今では何とか物が見える所まで回復した
その事実を何故私に隠したと言うと
これ以上兄と妹がセックスする事になっては
許されない事で
両親と兄とで相談し私だけに真実を隠し通す事になったのです
それで密かに母が兄に出産するかもしれなと
連絡し私に気付かれないように見守ってたと言う訳です
そして兄が駆けつけた時は
既に私は事切れてた
死んだ私を両手一杯に抱きかかえ
慟哭に臥した
暫くして我子を片腕に抱え
母の姿を脳裏に焼き付けようと
動かない母の顔に我子の顔を擦り付け
『これがお前の母親だよ！』と
何度も言い聞かせた
それから歩けるまで回復した母親が
遣って来て
我娘の遺体に駆け寄り泣き崩れた
兄は子供を抱きながら
母の背中を優しく撫でて
孫を母に抱かせた
産まれたばかりの孫を
頬ずりするように愛しい我孫を抱え
丁度23年前に抱いた我娘にそっくりな
生まれ変わりのような可愛い女の子
兄に向かって
この子の名前は『愛可（あいか）』にしよう
愛らしく可愛い子と言う意味で・・・・
すぐに決まった
それから赤子を看護婦に渡し
やはり心配なので一通りの検査をして貰った
幸いどこも身体障害は見当たらない
後は血液検査だけだった
そしたら
驚きの結果が出てしまった
私と兄は2人とも同じB型で
両親は父がO型、母がB型
それなのに
生まれたあかちゃんはAB型で有った
念の為にDNA検査もして貰う事にした
それから一週間後検査結果を聞く為に
兄が病院を訪ねたら
明らかに父親は兄では無かった
この衝撃は・・・
あれ程悩んだ事だったのに・・・・
一体誰がこの子の父親なのか
母親の私が話す事が叶わない今となっては
この乳飲み子が死んでも事実は分からず
永遠の謎となってしまった
兄は親近相姦の子で無かった安心感よりも
自分以外に愛する妹が身体を許してた事実に
相当ショックであった
しかしそんな両親の柵とは関係無く
産まれてすぐに両親の存在を消された
憐れな乳飲み子を自分の子供として
妹の生まれ変わりとして
育てて行く決心を固めた
独身の男で一つで乳飲み子を育てるのは
並大抵の苦労では無かった
しかし日々成長する愛可は
段々私に似てきて
本当に私の生まれ変わりの様だった
この姪いえ娘に対する愛情とは別の
恋慕にも似た感情を抱いていた
しかし兄の人生を真っ当するまで
その気持ちはずっと隠し通した
それにしても余りにも儚い辛い
人生を送る事になった
早すぎる生涯を閉じた私の人生
此処に一つのドラマは終わりを迎える事となった
この悲劇はこの娘；愛可には語る事は永遠に無かった
兄の強い愛情に包まれ幸せな生涯を送る事が出来た
それがこの物語のせめてもの救いであった
・・・・・・・・・・・・・・・・
あれから23年の年月が流れ
愛する妹の死んだ時の年齢まで成長した
そして今日はこの娘の結婚式
みんなの願いを一心に集め
盛大にパーティーは執り行われた
いつまでも・・・・
いつまでも・・・・
幸せを願って
・・・・・・・・・・・・・・・
天国にいる母に届くように
・・・・・・・・・・・・・・・
ウエディングベルは鳴り続けた
・・・・・・・・・・・・・・・
≪終わり≫
© Rakuten Group, Inc.
