うたのおけいこ 短歌の領分

うたのおけいこ 短歌の領分

2007年09月22日
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福田孝行被告(26、犯行時18歳)

この日で実質的な審理は終了。10月18日に検察側、12月4日に弁護側がそれぞれ意見を述べ、結審する予定。判決は来春下される見通し。

本村洋さんは、意見陳述で「弁護人が代わった途端に主張が変わったことが私を最も苦しめている。(被告人は)法廷で真実を語っているとは到底思えない。だから、いくら謝罪の言葉を述べようとも信じられない。・・・君の犯した罪は万死に値する。命をもって罪を償わなければならない。私は死刑を望みます。」と強い口調で福田に語り掛けた。

犯人(被告人)に対する激しい憎しみを胸に秘めながらも、決して声を荒げることなく冷静に、しかし毅然と社会正義を訴える本村さんを、凛とした男の中の男であると、僕は深く尊敬している。
いついかなる時も、男というものはかくありたいものである。

ただ、考えたくもないが、僕なんかが同じ立場に置かれた時、ああいった冷静さを保てるかどうか、全く自信がない。逆立ちしても真似の出来ない振る舞いだとも思う。

さて、事件の構図は、むしろ単純なものである。ケダモノのような男による、強姦を目的とする強姦殺人事件である(・・・正確に言うと、書くのもおぞましいが「屍姦」であるとされるが)。

弁解・弁護の余地はほとんどない。せいぜい深い反省によって更正の可能性を示すか、生い立ちや生育環境に焦点を絞って情状面で訴える程度のことであろう。

20数名も結集した、特殊な偏向したイデオロギーで理論武装した弁護団によって、公判廷が異常な展開を見せていることは周知の通りであり、国民の激しい憤激を惹き起こしている。

人非人・福田孝行の態度には、本村さんならずとも心からする反省は見出せず、20日の公判でも、質問する検察官に対して「ナメないでもらいたい」という捨てゼリフを吐いたという。
鬼畜め、正体を現わしたな、と思ったのは僕だけではあるまい。

この他にも、読むだけでも虫唾が走る傲慢不遜な言動が、司法当局関係者によって目撃・現認され、メディアで報じられ、一部は公判でも証拠採用され、裁判長も言及した。詳しくは こちら

犯人・福田孝行に対して、国民およびそれを代表する司法の判断は、死刑以外にはありえない。

もし死刑以外の判決が下された場合、警察・検察はやる気を失い、国民は司法行政への信頼を失い絶望し、正義の観念は虚妄化するであろう。
日本国民はおとなしいから暴動は起きないが、その代わり広汎かつ全面的で深刻なアパシー(非共感・非関与・無関心)状態が世を覆うことになる。

しかし、むろん、そんなことは万に一つも起きないであろう。
裁判長は死刑を宣告し、粛々と執行される。
・・・世はすべて事もなし(ロバート・ブラウニング)。

なるほど、ある程度文学、特に外国文学に親しんでいる者なら、人間心理の深奥に闇黒の深淵がありうることは先刻ご承知であろう。「いろは」の「い」とは言わないが、「ろ」ぐらいには当たる。

例えば、人類の至宝、巨人ウィリアム・シェイクスピア。彼の悲劇作品には、タナトス(死への衝動)が満ち溢れている。
ちょっと思いつくだけでも、「ロミオとジュリエット」のクライマックス・シーンには、悲劇的なシチュエーションの中で、「屍姦」に近い衝動が象徴的に展開されている。
傑作「ハムレット」のラスト、狂い死にして水面(みなも)を漂う 美しきオフィーリア姫の死体
リア王やマクベスの盲目的な破壊と滅びへの衝動。
・・・そして誰もいなくなる狂おしいまでの滅びの美である。

人間、必ず一度は死ぬのであるから(・・・007は二度死ぬらしいが)、出来れば「人生は美しい」(マリオ・プーゾ「ゴッドファーザー」)とか、「光が見える」(ヴィクトル・ユゴー「レ・ミゼラブル」)とか言って死にたいものである。

そういう一種の「結晶作用」(ロマン・ロラン)を、滅亡、破局、すなわち自他の破壊の中に見出すということは、人間精神の多様性においては十分ありうることであると、文学史および現実の歴史は告げている。

わが国でも、近松門左衛門の浄瑠璃(戯曲)「心中天網島(しんじゅうてんのあみしま)」や「女殺油地獄(おんなごろしあぶらのじごく)」に典型的である。
これは江戸爛熟期芸術の最高峰であり、日本文学史の一頂点を成すと評価されている。

これらは、心理学的にいうと、エロスとタナトス(生/性衝動と死衝動)の問題である。
精神分析学の発達によって、下意識(いわゆる深層心理)の存在は現代人の常識となったが、その人間精神の深奥にデ~ンと横たわっている、コア(中核)のようなものである。

タナトスは二方向性(ダイヴァーシティ)であって、内向すれば自傷・自殺に向かい、外向性では他者への危害・殺人となる。これには個人差や環境差などがある。・・・が、精神分析学的には自殺・他殺の差は大きくない。

石原慎太郎「乾いた花」では、さらに一歩進んで、「愛するがゆえに殺す」という倒錯した心理が、虚飾を剥ぎ取ったロマンティシズムの極北の姿として耽美的に示される。そのために主人公は情性を欠如した(ニヒルな)ヤクザであるという特殊なシチュエーションの設定を要した。

むろん、これはおそろしく思考回路をショート(短絡)した論理であり、子供によく見られる、善悪の彼岸にある素朴な残忍さが、一切の掣肘を経ずに、怪物(モンスター)にまで極度に成長した姿である。

なぜそうなるのかは諸説紛々でもあり、すいませんが僕の手に余る問題だから、興味のある方は関連書籍を読んでほしい。

これは直感的に言うのであって根拠は乏しいが、おそらく個人個人の持っているエネルギー総量(フロイトのタームでいえば、「リビドー」)のマグニチュードには、それほどの大差はないのではないか?せいぜいが等差級数であって、等比級数的な差はないのではないかと思う。

具体的にいえば、5~6倍の中には収まる程度の差なのではないだろうか。
俗に言う、「運は皆平等に持っている、使い方の問題だ」ということともやや似ている。

そのエネルギーの発動の方向性(ベクトル)の問題である。
例えば、体が丈夫で、頭もそこそこ切れて、ケンカの強い男の子は、政治家で一家を成すかも知れないし、スポーツ選手になるかも知れないし、優秀な警察官になるかも知れないし、(昔だったら「軍人」という、きわめてディグニティの高いオプションもあった)、一歩間違えればヤクザにもなり得るわけである。

これは、決して机上の空論ではなく、社会での我々の経験的な事実として観察されることである。

ところで、ここまで書いて、テーマがデカすぎ、話が広がりすぎて収拾が付かなくなっていることに、薄々気が付いたところである

よく考えたら、優に一冊の書物が編めるほどの一大テーマである。
とても僕のアタマのキャパシティの手におえるようなシロモノではない。

・・・というわけで、シメに入るが、以上ちょこっと触れたような文学・思潮を踏まえた上で法制度もあるわけであって、法も人間が創り出したものであることは当然である。

従って、近代における法制度は、個人の自由や尊厳・良心(信念・ポリシー)を尊重し、拡大する方向に、すなわち、緩和の一途を辿ってきた。
これは先進国の国民が、時には血を流して獲得してきた権利であり、全く正当かつ正統的なことであることには疑問の余地がない。

しかし、「越えてはならない一線」は厳然として存在しつづけるのだし、それは我々の市民社会から見れば、取りも直さず「譲れない一線」にほかならない。

僕は、少年法の趣旨は理解するけれども、触法少年の可塑性(矯正可能性)を過大に見積もりすぎていると思う。

少年法が制定された昭和20年代の純朴(ナイーヴ)な(?)少年犯罪と、昨今の陰湿・退廃の極みの少年犯罪とは、質的に全然違うと思う。抜本的な厳罰化への全面改正が必要だと思う。

むろん、ごく軽微な触法の場合は、若気の至りってことも十分理解できるし、更正は悠々可能だろうが、凶悪事件の場合は、全く別のカテゴリーだろう。

もう時効だろうが、かく言う僕も、生涯でたった一度だけ万引き(窃盗)をしたことがある。
高校生の時、地元では名のある本屋・落合書店で、重厚な装丁の埴谷雄高「死霊」(講談社)全一冊を盗んだ
けっこう高価な本だった。

非常に観念的な少年だったので、何となく思想的に(?)、この本は通常の商行為で入手しては(買っては)いけない本だと思い込んだ
ドストエフスキーの読み過ぎで、多少気が変になってたかも知れない。

バレなかった。この本は今も僕の本棚の隅っこにある。

・・・いや、全く若気の至りです。
落合さん、すみませんでした~!!

皆さん、万引きは窃盗事件です。
絶対にやってはいけまっせ~ん!!!

それ以来、一度も悪いことはしていない(軽微な交通違反ぐらいはするが)。
立派に更正した、善良な市民といえるだろう

期待さるべき少年法の厳罰化には、残念ながら民主党が執拗・頑迷に反対している。
民主党主導の政権が成立すれば、この問題はウヤムヤにされるのであろう。
非常に心配している。

折も折、また、というべきか、神戸市須磨区で、陰湿きわまりないいじめ自殺事件が発生した。
手を拱(こまね)いていていいのか、と焦眉の感がある。

しかし、何しろ筆者の能力を超える硬派な問題であり、なかなか忙しい身でもあるので、論考に委曲を尽くせず意を尽くせないことが残念だが、ご賢察いただき、被告には極刑を強く望むものである。

裁判長の良識に期待したい。





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最終更新日  2007年10月07日 14時18分10秒
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