花より男子★二次小説　　　夢　桜　庵

新たな道へ　１６

つくしと花沢類・・二人を乗せた車は高速にのった

景色がどんどんと都会から離れていくのを車の窓から見ていた

つくしは、少し不安になった

（一体花沢類はどこに連れて行くつもりなんだろう・・・）

そう思ったつくしは花沢類に聞こうと振り向いた

「ねぇ・・」

振り向いたと同時に声を発したが、花沢類は既に夢の中にいたようで

窓枠に頭をつけて目をつぶっていた

その寝顔を見ながらつくしは思っていた

（花沢類・・・昔からよく寝るの好きなんだよね・・・

　ふふっ、こうして寝てる顔見てると非常階段を思い出すよ

　こうやっていつも非常階段で二人でいて、花沢類も私も

　寝ちゃって・・・それで西門さんたちに起こされるの・・

　道明寺なんか青筋立てちゃってさ・・）

高校時代の楽しかった思い出がよぎり、思わず顔に笑みを浮かべた

しかし、つくしの頭の中に辛い思い出がよぎった

だんだんとつくしの心が暗く沈んでいく

普段のつくしならすぐに車の中で寝てしまうのに

それさえも出来ないほど動揺した。不安な表情も隠せない

「うそ・・・そんな・・・・・」

つくしの発した言葉・・・

それは、この車から見える景色が

つくしの辛い思い出を心の奥底から引っ張り出すには

十分であるほどだった

どんどんつくしの顔に冷や汗が滲んできていた

「花沢類・・・なんで・・なんで連れてくるのよ・・ここに」

今だ目が閉じられたままの花沢類につくしは

呟くような声で問い詰めたのだった

＜３４＞

「類様、到着しました」

運転手の声に目をこすりながら起きた花沢類は

俯いたままであったつくしを無理やりにひっぱり外へ連れ出した

つくしの心の中で様々な思い出がフラッシュバックした

船の中で道明寺に自分の気持ちをぶつけたこと

滋さんの島で道明寺が自分の家を捨てるとまで言ってくれたこと

・・・今いるこの場所で道明寺が暴漢に刺されて生死をさまよったこと

・・・そして、道明寺が私だけを忘れてしまったこと

海ちゃんと二人恋人同士のように仲のいいのを目の前で見せ付けられた

・・・そう・・・ここは・・・

私の好きだった『道明寺　司』が死んでしまった場所

そして海ちゃんを好きな『道明寺　司』が新たに生まれた場所

あまりに辛くてとうとうつくしはその場に座りこんでしまった

どんどん震えが全身を覆い、ぶるぶると震えているのが

花沢類にも分かっていた

そう・・花沢類にも今自分のしていることが

牧野にとってどれほど心に負担を負っているかが分かっていた

そんな牧野を見るのは辛い・・・でも・・・

再会したときの牧野の顔

司との事で傷ついた心が4年たった今でも、

まだ癒えていないことがすぐに分かった

俺は親父に『私情を挟むな』と言われた

このことで見合い話が白紙にならなくなってしまうかもしれない

でも・・・心に傷を負ったままの牧野と一緒に

私情を挟まずに仕事を続けることが出来なかった

だから、牧野が会社の会議室から飛び出したとき俺も迷わず飛び出した

そうしないと牧野は俺の前からいなくなってしまう

・・・もう二度と会えないかもしれない

牧野の書いた小説の内容・・・

牧野が今どんな思いでいるか少し分かった気がした

もしかしたら牧野も

主人公のように新たな道、新たな幸せを望んでいるんじゃないか

そう・・・思った

もしそうなら・・俺は・・・これからずっとずっと牧野の隣で

新たな道、新たな幸せを一緒にかみしめたい

牧野との偶然の再会

これは俺にとって、たった一度のチャンスかもしれない

4年の間、一生懸命探したけど、牧野は見つからなかった

でも『きっと出会える』と運命の再会を信じてきた

俺は、とうとう牧野と出会うべくして出会った・・・

これが運命の再会だと・・・そう信じたい

新たな一歩を踏み出すためにも

俺は牧野を形だけじゃなくちゃんと立ち直らせてあげたい

その為には一度辛いだろうけど、あの場所に行くべきだ

そう思ったら、自然と運転手にこの場所を告げていた

牧野にも何も言わずつれてきてしまった

きっと告げていたらここには来ないことが分かっていたから

今の牧野はきっと昔の傷で自分が押しつぶされそうになっているのだと思う

でも・・・牧野

4年経ったんだ・・・そろそろ新しい自分、

新しい道を進み始めてもいいんじゃない？

ここで・・・牧野の心の傷の元となる場所で

牧野の辛い心ごとこの広い海に流してしまおうよ

そして新たな一歩を踏み出そう・・・

俺が傍にいるから・・・ずっと・・・

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