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★みっちーずらいふ
ある犬の親子の死・不妊手術について
中学生の頃の事だった。私には、2歳年上の兄の同級生の友達がいた。
彼女は、普段は進学した高校のそばの親戚の家から学校に通っていた。
月に数回帰省し、幼馴染の私と遊ぶ事が時々あった。
そこの家には、茶色の小柄なメスの犬がいたが、
家屋から少し離れた場所に小屋があったため、数回程度しか私とその犬との関わりはなかった。
ある時、その犬が妊娠し子犬を数匹産んだ事を聞いた。
そして子犬が産まれてすぐに、母犬と共に処分された事を聞かされた。
その犬は彼女の父親の犬だと言っていた。
家族が不在の時、気が付けば母犬と共に処分場に連れて行った後だったそうだ。
父の犬だから、
子供は父親のする事に反対する事や逆らう事はできなかったかも知れない。
だけど私は彼女がその時に言った一言も、今でも忘れる事ができない。
「子犬は残しておけば良かったのに。」
彼女はそう言った。
私は、彼女も彼女の父親も、「どちらも間違っている。」
そう感じながらも言う事ができなかった。
私には何もする事ができなかった。
その家族にとって、 犬は増えては困ったのだ。
望まれない妊娠だった。
子犬を誰かに譲ってもメスはまた妊娠する。
だから彼女の父親は、子犬も母親も処分した。
子犬の里親を探す努力も、母犬が妊娠しない配慮をされる事もなかった。
彼女と別れ家に帰った後、14歳の私は、枕に顔をうずめて泣いた。
ゆんたを迎える前から、オスでもメスでも不妊手術は必ずしようと思っていた。
1999年の時点で、殺処分に回された犬は28万頭以上いたそうだ。
犬の繁殖のスピード程、新しく飼い主となる人間は現れない。
望まれない妊娠は絶対に避けるべきだ。
その小柄な犬がもっと小さな子犬の時に家にやってきた時、彼女とその父親は、どんな気持ちでその子を迎えたのだろう。
小さな子犬に名前を付けた日はなかったのだろうか。
大きくなって、家屋から離された場所に犬小屋を置かれた後も、
誰かの姿が見えるたびに尻尾を振っていたその犬と、その犬の産んだ子犬達を、どんな気持ちで処分したのだろう。
私を見て、遠くの犬小屋から尻尾を振っていた姿が記憶の片隅に残っている。
もう、その茶色の小柄な犬の、名前を思い出す事もできない。
小さな時は可愛がってくれた大好きな人間が自分から離れて行き、ある日見知らぬ場所へ連れてこられた。
大好きな主人が、
自分と自分の子供達を連れて来た場所がどこかを知った時、その犬はどんな気持ちだっただろう。
それとも、いつまでも主人を信じていただろうか。
親子は、何も知らずに連れて行かれた場所で、この世から姿を消した。
私は大人になって、あの頃には考えなかった犬に関する事、猫に関する事、色々な事を知るようになった。
今はまだ知らない事で、これから知る事も随分と多いだろう。
病気の事を調べる上では、人間の看護婦としての知識も助けになった部分もあった。
彼女も看護婦を目指していたが、資格を得る事なく挫折し、
時間の経過と共に疎遠となっていった。
ゆんたのような小型犬は、一般的に大型犬よりも長生きだそうだ。
10数年はゆんたと過ごす事ができるだろう。
私はあの一家のような飼い主にはなりたくないと強く思っていた。
ゆんたを連れて散歩をしていると色んな人に会う。
初対面の私に、同じ犬種だというだけで
「うちの子とその子を交配をさせて欲しい」
と言う人もいた。
ゆんたが大人になっていくのを見ながら、ゆんたの血を分けた子犬が見たいと思う事もあった。
どこかゆんたに似た子犬を抱いたら、どんなにか可愛いだろう。
ゆんたの子供が見たくないと言えば嘘になる。
だけど、生まれてくる子犬達に責任を持つ事はできない。
子犬達はすぐ大人になり、また新しい命を産む。
生まれた子犬達がまた親となる。
私は交配に対して素人だ。純血種には受け継がれやすい遺伝性疾患もある。
ゆんたには発現しなかった遺伝的問題が、子孫に現れないとは言えない。
シリアスブリーダーでさえ悲しい結果を経験する事もあるだろう。
その犬達すべてが健康に生まれたとしても、幸せに天寿をまっとうする事はできないかもしれない。
子犬が産まれたら母犬と共に処分するような飼い主が
世間には本当にいる。
不妊手術について。
よく言われる事だけど、不妊手術には病気を予防する意味もある。
メスは年に数回ある発情の、身体的、精神的負担から開放される。
発情を繰り返すたびに発症率の上がる性ホルモンの影響を受ける疾患の中には、発情を経験する前に不妊手術をすれば、0パーセントに限りなく近い発生率に抑える事のできる疾患もある。
それだけ、発情を繰り返すという事は、犬の身体に与える影響が多い。
一度くらい出産を経験させた方が犬の身体には良いと言う意見もよく聞くけれど、それに医学的な根拠はない。
犬の乳腺腫瘍は、比較的高齢の不妊手術をしていない犬に多く、不妊手術をしている犬に比べ、発生率が実に7倍も高くなる。
そしてその、2頭に1頭の割合で悪性の乳腺腫瘍である事が統計的に知られている。
腫瘍の大きさが1センチを超えると、全身への転移の可能性が高くなるというが、1センチ未満の腫瘍を見つける事は容易だろうか?
転移による様々な苦痛、原発部の腫瘍の引き起こす苦痛。
早期に不妊手術を行う事によって、これらの苦痛、疾患から愛犬を守ってあげる事ができる。
以前は、早期に不妊手術を行う事によって、テストステロン欠乏性、もしくはエストロゲン(エストロジェン)欠乏性の尿失禁があるとも言われていたが、これらに否定的な意見も聞かれるそうだ。
そしてどちらもホルモン注射による治療が可能である。
雄の場合。
メスのように周期的な発情のないオスは、発情したメスに刺激されるたびに受けるストレスから開放される。
これは犬も猫も同じだ。
メスの発情が同時期に起こるわけではないため、去勢による精神的苦痛の頻度はかなり軽減されると考えられる。
家庭で暮らす以上、発情したメスからの刺激を受けるたびに、その欲求を全て満たしてあげる事はできない。
精神的ストレスだけでなくメスの場合と同じように、性ホルモンの影響を受ける疾患の発生率も軽減される。
前立腺炎、前立腺肥大症、睾丸腫瘍、会陰ヘル二ア、肛門周辺腫瘍などの発生率が不妊(去勢)手術によって極端に低くできる事が知られている。
病気になってからの手術と、健康な身体で受ける不妊手術。
身体にかかる負担は後者の方が軽いという事は明白だ。
デメリットを考えなかったわけではなかったけれど、0.数パーセントの手術時の事故が起こらない事を願いながら、ゆんたの手術に踏み切った。
不妊手術をした犬は、しなかった犬の寿命と比べ長寿となる。
ゆんたの子犬を抱けない分、ゆんたを抱いてやりたいと思う。
※不妊手術には犬猫問わずその他のメリット、デメリットがあります。
上記は私が調べた事を元に書いている事が含まれます。
疑問に思われる点はご自分で調べお考え下さい。
決めるのはそれぞれの飼い主です。
健康な身体への手術が可哀そうだと思う気持ちを否定するつもりもありません。
それも一つの愛情だと思います。
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