不要とされる動物達



(興味のある方だけどうぞ。重い内容あり。)

昭和47年の日本返還より28年後、2000年。
沖縄にてサミットが行われた。

反対運動なども一部ではあったようだが、この一大イベントに沖縄は喜び、湧きかえった。
観光業界の方、航空関係の仕事の方、その他警察などを始め、 治安 に関係のある職種の人間も多忙を極めたらしい。

そんな中で問題となったのは、その頃沖縄にいた 野良犬の処分
サミットに合わせて多数の野良犬が処分をされたのだった。

委託を受けた保健所の職員が一斉に野良犬の捕獲を行い、まとめて檻に入れられて連れ去られた後は、二度と帰ってくる事はなかった。
当時四国と沖縄を往復する生活をしていたので、人伝に聞いただけだったけれど「昨日までは数頭いた場所に翌日行くと、一頭もいない」という事があったそうだ。

捕獲された犬達は、飼い主が引き取りにこなければ死を免れる事はない。
野良犬であったのだから救われた犬は皆無であっただろう。

沢山の人間が訪れる事が予想される時、野良犬がいれば人間に危害を加える可能性はあるかもしれない。
犬の事は大好きだけれど、人間の安全が脅かされるのなら対策を講じなくてはいけないだろうとは思う。
しかし、この話を聞いた時どうしようもない憤りと悲しさを感じずにはいられなかった。

捕獲・殺処分以外の方法はなかったのだろうか。
野良犬が問題となっていたのはサミット直前からの話ではない。それまで放置していた問題を 一斉に殺処分 という形で解決した事に疑問を感じた。
全てが終わった後ではあったけれど。
そんな事があり、鹿児島への移住後のまいちゃんとの出会いなども通じて、行政の「不要動物」への対応について不信感を持っていた。


保健所での犬や猫達が、行政を通じて実験動物として払い下げられているのをご存知だろうか。
人間に対する治療薬の研究やその他の医学的根拠を示す材料などとして、保健所に「不要」として連れ込まれた犬猫達の一部が動物実験へと回される。

「犬や猫は人間とは生体としての反応が違うので、実験動物として用いても意味がない」、「動物愛護の観点」、などから保健所からの払い下げを中止しようという動きが全国的にある。
いまだにこの 犬猫の実験払い下げ を行っている自治体は10ヶ所ほど残っているという。
鹿児島もその一つであった。
さらに、新しい飼い主の元へ行き、生きるチャンスを得る「定期的譲渡会」さえ行われていなかった。

犬猫の殺処分に関する、1年間の経費の数分の一でいい。
犬猫が生きる機会を得る事に使って欲しい。

行政は生かす事よりも、殺す事の方を重要視しているように感じるのは私だけだろうか。
沖縄でも、里親探しや譲渡会を行おうと思えば行えたはずである。
「不幸な犬猫を増やさないためには不妊手術を」 と言われながら、一部の獣医でごくわずかな飼い主のみしか不妊手術に対する助成金を受ける事はできない(平たく言えば先着順や抽選)(自治体からの不妊手術の助成金)。

保健所に持ち込まれる犬猫は、有無を言わさず私達の払った税金によって処分されている。
犬や猫の飼い主としてどう思うだろう?
同じ税金を使うのなら、殺す事よりも殺さなくていい方法、生きるチャンスを与える方に使って欲しい。

保健所での犬猫の処分は安楽死だと思われているのも大きな誤解である。
安楽死とは 苦痛を与えずに殺す事 である。
実際には、空気のかわりに炭酸ガスを部屋に充満させて殺す、 窒息死 が殆どである。
呼吸ができない苦しみを 意識がある限り感じ 、死に至らしめる。
体格や個体差などにより一定のガスで死ぬ事ができなかった犬猫達は、 生きたまま焼却処分 をされる事さえあるという。

保健所で働いている職員が悪いわけではない。
彼らがこう言っていた事があった。
「こういう問題が取り上げられれば暫くは犬が可哀そうだと自分達が責められる。抗議の電話が増える。でも実際に犬達を引き取る人間が増え、捨てる人間が減らなければ処分される犬達は減らない。」

職員として手を下し、機械を操作する人間だけが悪いのではない。
「元」が変わらなければ、「不幸な犬や猫達を増やさない気持ち」が飼い主の中に生まれなければ、そんな犬や猫達は減らない。

苦痛を与えないガスを使わない事の理由。
それは、そのようなガスは万が一のガス漏れの際に人間が危険であるため、施設の整備など、取り扱いの面での「コスト」が高い、との事だそうだ。
コストを安くするために、人間の都合で命を絶たれる犬猫達が不必要な苦痛を与えられているのである。








大きく「制度」を動かす事は、一人一人には難しい事かもしれない。
それでも、一人一人の気持ちが全体を動かす事は可能であると信じている。

繁殖の事、避妊去勢手術の事、飼い方の事。
自分にできる事なんて少ないと思うかもしれないけれど、
こんなふうに尊い命を絶たれている犬や猫達を増やさないためにできる事。
あなたも考えてみませんか?

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