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2004.10.22

(6)

テーマ：レンタル映画(833)

カテゴリ：アメリカ映画

彼が必死に馬を走らせたのは、

かつでローマ帝国の将軍だった
アエリウス・マキシマス、しかし
時の皇帝マルクス・アウレリウスには
息子コモドゥスを差し置いて次期皇帝にと
嘱望されたばかりに運命の歯車が狂ってゆく。
コモドゥスに殺されそうになりながらも、
歴戦の勇士は抜けだして家族のいるスペインに向かう。

吊されていたのである。
彼の心は妻と子供とともに
死んでしまったように見える。
だが本能とは恐ろしいものだ。
歴戦の勇士とは生き残る能力に長けた者のこと、
奴隷商人プロキシモに買われ
剣闘士となったマキシマスは、
幾度となく訪れる危機を脱して生き残る。
それだけではなく仲間や民衆も
味方につけていくのである。

西暦180年ローマ帝国。

19世紀の画家ジャン＝レオン・ジェローム
その絶対的な権力を示すかのような絵画に、
リドリー・スコット監督の想像力に火がついた。
生き残った一番強い剣闘士が皇帝の指示を待っている。
敗者は、殺せと。

一番強い者を思いのままに動かす皇帝。
一番強い者の遥か上をゆく皇帝が
民衆の神となる瞬間である。
監督はローマ帝国の「栄光」と「邪悪」を
その絵に見いだしたようだ。

だがマキシマスは
皇帝に恭順しなかった。
父親である皇帝を殺し地位についたコモドゥス
妻と子供を殺した皇帝に
マキシマスは圧倒的な力でうち勝つ。
妻と子供を愛していたたった一人の人間に、
虚構の神は民衆の目の前で敗北するのだ。
だがコモドゥスの卑怯にもマキシマスの脇腹を刺し、
それが彼の命を奪うこととなる。
ローマ帝国の「邪悪」、
マキシマスは家族の元へ召される。

ラッセル・クロウのマキシマス、
ローマ帝国の栄光をうち破るだけの力をもって
コロシアムで剣を振るう。
剣の力だけでなく仲間や民衆を、
そして観客をも引き惹きる俳優としての力を観る。
ホアキン・フェニックスのコモドゥスは
感情豊かに演じることで皇帝が
虚構の神であることを知らしめてくれる。
家族を愛するマキシマスとの相関が
彼によって際だつ。

主役がカッコのいい映画は
言うまでもなくエンターテイメントだ。
だが英雄は権力者に恭順しなかった。
「栄光」と「邪悪」を一人の人間が覆すという試みが
この映画の底流に存在しているのである。

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