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2005.05.12

(6)

テーマ：映画館で観た映画(8798)

カテゴリ：アメリカ映画

何かが欠けている。

ずっと、シンドイ。

『Uturn、OK』
田舎町スペリアの入口の看板。
よそ者は引き返せ、
という意味だと言う。

車のラジエーター・ホースが破裂する。
マフィアに返す金を持って

その町で、修理をせざるを得ない。

引き返せるものなら
引き返せば良かったのだが。
悪夢が、始まる。

オリバー・ストーン監督作品。
ボビーを演じるショーン・ペンを中心に、
豪華キャストが砂にまみえる。
ジェニファー・ロペスにニック・ノルディ
ビリー・ボブ・ソーントン、ジョン・ボイド。
ホアキン・フェニックス、クレア・デーンズ、
リブ・タイラーの顔もある。

ジワリと暑さまでカメラは捕らえる。
音楽が神経を逆撫でする。

盲目の男にソーダをせびられる。
この暑さを癒すにはソーダしかないように。

知り合った女とボビーはキスをする。

その妻に夫殺しを頼まれる。
強盗に巻き込まれ、大金はパァに。
マフィアに返す金だから、
金が必要になり、殺しを請け負うが、
夫の妻の関係もまた複雑。
その妻と出来ていた保安官は、
彼女と夫との秘密を話して殺される。
知り合った若いカップルも、
ボビーの悪夢を増大させる。

いつまでたっても
車がなおらない。

ソーダが美味しそうだ。

いつまでたっても
車がなおらない。

壊れた車、壊れた夫婦、壊れたカップル。
壊れた男、壊れた秩序、壊れた町。
欠けたものがほんの少しでも、
欠けたものは全体を壊してゆく。
壊れながら走ることは可能だけれども。

壊れながら走っていた町。
『Uturn、OK』
引き返さなかったボビーもまた、
その町の一部に組み込まれてゆく。
わずかに、欠けただけで、
壊れてしまった町の中に。

普通に見えても、何かがオカシイ。
魅力的なキャストが演じるのは、
濃厚な、濃厚すぎる、灼熱の悪夢。
オリバー・ストーン監督らしからぬ作品、
だが、従来の作品と同様に、
観客を息詰まる世界へ案内する。

もう、ボビーも戻れない。
死ぬのを待つしかなくなってしまった。

よそ者は引き返せ。

観客はボビーとともに、悪夢に出会う。
引き返すことの出来ない悪夢に出会う。