●●●涙女

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2005.05.23

(10)

テーマ：レンタル映画(833)

カテゴリ：合作映画

赤や黄色、水色に緑、黄緑。

列席者はジャラジャラと卓を囲んで麻雀だ。
中国のお葬式は鮮やかで、騒々しい。
お葬式を盛り上げるのは、「哭き女」、
かつて中国の南北地方にあったという風習は、
廃れかけたが、また、復活しているという。
泣きながら歌って踊って、
故人を悼み、残された人の哀しみを引き受ける。

不幸が重なったからだった。

夫がケンカで監獄入り。
夫が追わせてケガの医療費が九千元。
借りた子供の親が失踪。

細身の身体に広いオデコ、
原色の服に身を包み、力強く生きてる。
誰もが知り合いだけど、
みな同じように暮らしに困っている、
そんな共同体の中にいて、
外の水飲み場でガシガシと歯を磨くグイ。
度重なる不幸にも、

借金の取り立てに来た夫婦にも、
「金がない」「どうにもならない」と
良く響く声で、オンオンと嘘泣きを始めた。
元劇団女優、演技はお手のもの、
葬式具の元カレ（妻子持ち）ヨーミンとともに、

目的はただ、ひとつ。
借金はともかくも、夫を保釈するため。
不倫は続けているのだけれど。

あれよ、あれよと。
グイは、売れっ子「哭き女」になる。

都会とは程遠い、
中国の片隅の人々の生活が描写される。
狭い場所にカオスのように並ぶ住居、
お金を稼ぐために、海賊版DVDを売る女たちは、
いちように、赤ん坊を抱えている。
取り締まりの警官の同情を引くためである。
グイのように、赤ん坊を借りる女も多いだろう。
力強く生きるグイを、
ドグマ映画のように揺れながら
カメラは追いかけてゆく。
東奔西走、
乞われれば、トラックの荷台に揺られ、
どんな田舎にも出張する。
ペットの葬式でも盛り上げる。

グイを演じるのは、
中国のオペラ歌手、リャオ・チン、
その声はよくとおり、音域も表現も豊か、
腕のふりにもしなやかさがある。
監督のリュウ・ビンジェンは
この作品の脚本が中国で公的に却下されたと語る。
カナダ・フランス・韓国の合作。

夫を保釈するために。
借金はともかくも、それが彼女が働く目的。

夫を亡くした女性のために、
今日もグイは泣いている。
彼女の手に、封筒が握らされる。
迫真の「哭き女」、お金の入った赤い封筒が、
次から次へと、もたらされる。
それも、そう。
本当に哀しいから彼女は泣いていた。
彼女の夫も、この世にいない。

本物の涙が、彼女の目からこぼれている。

どんな不幸にも、へこたれなかった彼女の、
本当の本物の涙である。
哀しいだろう、哀しいだろう。
不幸には立ち向かえても、
大切なものを失えば哀しいのだ。
迫真の「哭き女」、お金の入った赤い封筒が、
次から次へと、もたらされる。
カメラはずっと、グイのアップをとらえていた。