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mikken☆のあしあと
ざしきわらしの住む町
ざしきわらしの住む町
「この町には『ざしきわらし』がいるんだよ。」
いきなりぼくの顔をのぞきこんで、かなこちゃんが言った。
「ざしきわらし?」と、ぼくが首をかしげると、
「おばけだよ。」と、あきと君が両手を前にブラブラさせた。
「ちがうよ。ようかいだよ。」と、そうた君がすまして言った。
ゆうなちゃんもたくや君もクスクス笑ってぼくのことを見てる。
かおるちゃんは大きな目をパチパチさせてた。
「うそだね。ぼくがこわがると思ってるんだ。」
ぼくが引っ越してきたばかりだから、みんなしてぼくをからかってるんだ。
そうにちがいないとぼくは思った。
ぼくの家族が引っ越してきたマンションはまだ新しくて子どものいる家が少ないから、小学校への登下校班はゆうなちゃんたち5人と一緒になる。前からこの町に住んでいるみんなは、最初ぼくを質問ぜめにした後、いろいろなことを教えてくれた。この町にあるいくつかの公園。よく買い物にいくお店。大きな声でほえる犬のいる家。そして「ざしきわらし」。
「うそじゃないよ。」
あきと君が前にブラブラさせていた両手を頭の後ろに組んで言った。
「こわくはないんだ。あとでちょっとふしぎな感じがするだけ。」
「ふうん。でもぼくは自分で見なきゃ信じないよ。」
と、ちょっと顔をあげてぼくが言ったら、かおるちゃんがクスッと笑った。ゆうなちゃんが
「それは無理よ。じゅん君は知ってる人の顔しか見ないもの。後で『あれっ?』って変に思うだけ。それが『ざしきわらし』なのよ。」
と、「そんなことも知らないの?」と言いたそうな顔でぼくを見ると、さっさと歩いて行ってしまった。
「ねぇ、『ざしきわらし』って知ってる?」
ぼくは家に帰っておやつを食べながら、お母さんに聞いてみた。
「たしか東北あたりで言い伝えのあるようかいじゃなかったかしら。友だち何人かで遊んでいると、はじめに覚えていたよりも一人だけ人数が増えているんだけど、みんなの顔を見合わせてみても、だれもはじめからいっしょに遊んでいた友だちにまちがいないっていうの。」
お母さんはそう教えてくれた後、「ざしきわらしがどうかしたの?」と聞いたので、ぼくは
「ううん、べつに。でも、ほんとうにいるのかな?」と言った。
「さあ、どうかしら? でもそんなようかいだったら、お母さんは会ってみたいな。」
お母さんはちょっといたずらっぽい目をして、そんなことを言った。
あきと君たちはカンけり鬼や走りくらべが好きらしい。ゆうなちゃんたち女の子も外遊びの方が楽しいという。ぼくが
「家でゲームをしようよ。」とさそうと、
「あんなの頭が痛くなるから、ヤダ。」とあきと君。そうた君なんか
「あれは外で走れなくなったおじいちゃんやおばあちゃんがやる、頭と指の運動だよ。」と言う。
「テレビなんて三十分も見てるとあきない?」 と言ったのはかなこちゃん。
・・・この町のみんなは、前に住んでたところの友だちとだいぶちがっているから、ぼくはちょっと調子がくるってしまう。
でも、あきと君やかなこちゃんたちといっしょに遊んでいると、時間はとっても早く過ぎる。6人で走り回っていると、あっという間に日が暮れる。なんだか毎日ご飯がおいしいし、夜もぐっすりねむれるようになった。それにこわい夢も見なくなった。前は、ゲームに出てきた怪物やおばけが夢に出てくることがあって、なんだか寝た気もしないことがよくあったんだ。
ある日雨が降ったので、ぼくの家でトランプをして遊ぼうということになった。「ダウト」や「七並べ」、「神経すいじゃく」に「ブラックジャック」。みんな走り回ってるだけかと思ったら、トランプのゲームを色々知っていて、おまけにけっこう強い。男のぼくたちはついつい本気になってケンカごしになると、ゆうなちゃんが
「ハイハイ、仲良くしようね。」なんて大人ぶる。
「ケンカはやーよ。」とかなこちゃんがブーイングを出す。
かおるちゃんはにこにこしてる。
ぼくたちもいつの間にか笑ってる。
この5人と遊んでると、何をしていても楽しい。外の雨の音さえもリズムのある音に聞こえる。灰色の空だって明るく見える。いつものぼくの部屋が、6人で遊んでいるとずっと広く温かく感じられた。
「みんな楽しそうね。ジュースはいかが?」
お母さんがジュースを持ってきてくれた。みんながいっせいに声をあげる。
「ありがとうございます!」
ぼくはドキドキしてしまったけれど、お母さんはちょっと目を見開いた後、何だか嬉しそうな顔をしていた。
「・・・おかあさん、ひとつ足りないよ。」
みんなにジュースのグラスを配ったら、ぼくの分が無かったんだ。
「あら?そうだった?ごめんなさいね。すぐ持ってくるから。」
お母さんはちょっとうっかりしてるところがある。ぼくはみんなの顔を見回して照れかくしに肩をすくめた。
「よくあることだよ。どこの家でも。」
たくや君がジュースを一口飲んで、かるくそう言った。
みんなが帰った後、お母さんがジュースのグラスを片づけながら首をかしげた。
「遊びにきたお友だちって全部で5人よね。」
「そうだよ。ぼくたちいつも6人でいっしょに遊んでるんだ。」
ぼくが答えると、お母さんが空っぽになったグラスの乗ったおぼんを持ったまま、「ねえ、これって7つあるわよね?」
たしかに7つだった。あきと君とそうた君とたくや君。ゆうなちゃんにかなこちゃん。あと、ぼく・・・。全部で6人だったはずなのに。
お母さんとぼくは顔を見合わせた。
次の日、学校が終わった後でみんなにその話をした。驚くかと思ったのに、みんなクスクス笑っただけだった。
「また、いっしょに遊んでたんだ。」
「いつの間に、ね。」
ゆうなちゃんとかなこちゃんは顔を見合わせて、そう言った。
「いいんじゃない?べつに。ぼくたちはぼくたちで遊んでるだけなんだし。」
あきと君は両手をうーんと伸ばしてのびをした。
「困るのはお茶菓子を配るお母さんたちだけだからね。」
そうた君がおもしろそうにぼくの目をのぞきこんで言った。
「ちょっとくすぐったいけどね。」
そう言うと、たくや君は道ばたの石ころをけ飛ばした。
かおるちゃんはにこにこ笑ってた。
「きょうは何をして遊ぶ?」
あきと君が公園に向かって走り出した。みんなであきと君の後を追いかけて行くころには、ぼくの心の中でも、ぼくたちが6人でも7人でもどっちでもかまわなくなっていた。
(終わり)
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