milkyの心のままに独り言

パンドラの箱　第五章

さよなら、ママと呼んでいた人、さよなら、泣き虫だった私、さよなら〔お父さ

ん〕中学１年生。私は親戚の家（祖父の兄妹)に父親と一緒に身を寄せた。叔母は日

舞の家元をしていて、しつけに厳しい人だった。玄関の掃除。私の朝の仕事として

与えられた。土曜日は日舞の稽古、それは私の意志と関係なく、しいられていた。

この頃私は部活の陸上に夢中で、それが私の全てでもあった。ある日、私の机の引

出しから、煙草が出てきたと、叔母と父親が騒いで、疑いというよりも決め付けら

れていた事に、初めて反発した。悪い子であり、問題児というレッテルを貼られた

私は、何もしていないのに、疑われたり怒られる理不尽さに怒りを感じていた。

どうせなら、本当にそうなるのがいいのかも知れない。私は荒れていった。でも、

群れを持たず、武器も持たず、自分より強い相手と喧嘩する事で、自分の存在を確

認すもという、歪んだ行動に出た。喧嘩に勝つ事、それは私の弱さに勝つ事だと信

じ込んでいた。大人達への反発は日増しに強いものになっていった。恐かった父の

存在すら、恐怖と感じない私がいた。お金を盗んでみた。使い道が無い。工事現場

に投げ捨てた。矛盾と行き場のない心。世話になりながら、よくそんな事ができる

という叔母の悲鳴。父の罵倒。私は一切の食事を摂る事を止めた。給食も食べるの

を止めた。家で食べず給食を口にする事は卑怯に思えたから。水だけで幾日も過ご

した。ふらふらになりながら、もう死ぬ事も恐くなかった。間もなく私は倒れた。

救急車で病院へ運ばれた。初めての入院。精神的疲労と栄養失調。点滴に繋がれ、

安静入院となった。私は何がしたかったのか？何を求めていたのか？当然の事なが

ら、大人達からの謝罪の言葉はなかった。そして、退院後、私は父の妹、叔母の所

へ預けられた。今度は父とは別々に。中学２年の事だった。相変わらず部活は続け

ていた。鞄の中に煙草を入れて持ち歩いてみた。ライターやマッチを持たなければ

煙草は吸えない。大人への怒りの矛先は自分自身の自爆へ繋がっていた。叔母が気

が付くように、貯金箱を投げつけ、お金をばら撒き、暴言を吐きつける。迷惑そう

な顔を浮かべ私を見ていたっけ。そして、ここでも預金通帳が無くなったと騒ぎに

なった。それは私では無かったが、もうどうでも良かった。児童相談所という所へ

父親と出向いた。心理テストや、色んな事を聞かれたけど、心のバリアは固く閉ざ

し、大人は嫌い。私の心の中の叫びと共に頑なに孤立していた。そして、私はそれ

から家なる場所へ戻る事は無かった。児童センターで次の行く先を待つ事になっ

た。施設へ行く事が決まったからだ。その日迄行き先は知らされる事無く、電車に

乗った朝。父親もそこに居た。口はきかなかった。話す事が無かったというより、

父親の存在がかすんで見えていた。教護院。それが送られた先の施設。家庭にも問

題があり、その子供にも問題がある場合、一般の施設には入れない。特に14才を過

ぎた青少年が、普通の施設に入所するのは難しいようだ。そして入院という言葉で

そこへ入れられる。女子寮と男子寮に分けられ、中に小学校と中学校らしき校舎が

建ち、広い農場があり、ひとつの街の様だった。そこにも虐めは存在した。新入い

びりという名の、集団による虐めだったけど、先生達の監視の目も光っていた。そ

して、私は中学３年生の義務教育が終わる日迄、ここで暮らす事になった。

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