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本ブログの前回で、ウクライナの天然資源と工業力、そしてその輸出力を紹介した。今回はその農業資源について、書いておく。
まず、気候。ウクライナの気候は、カンザス州とほぼ同じ。夏は涼しくやや乾燥気味、冬は寒くて湿気が多い。カンザス州は農業と牧畜業でよく知られており、合衆国の大文穀倉地帯の一部をなしている。こうした特徴と酷似しているのが、ウクライナである。
本記事のウクライナの農業事情の典拠は
State Statistics Service of Ukraine, Ministry of Economy of Ukraine
ウクライナ経済省統計局
2021-09-24
最終更新日: 2021-09-24
https://www.trade.gov/country-commercial-guides/ukraine-agricultural-machinery
で、それを翻訳した。
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ウクライナの農業ビジネス部門は、依然として経済の中で最有望な部門である。肥沃な農地は 4150 万ヘクタール。国土の 70 %を占め、世界の黒土埋蔵量の約 25 %もある。ここから生まれる農産物は、ウクライナ最大の輸出産業で、 2020 年の GDP の約 9.3 %を生み出している。
生産は主に農業企業と個人農家の 2 つのグループで担われており、前者は 45,000 の企業で構成されていて、農業総生産のうちの 55% を占める。個人農家グループは、平均 1.23 ヘクタールの土地を耕す 400 万以上の世帯からなり、農業総生産の 45% 近くを生み出している。
ウクライナの農業は、穀物栽培が主で、全農業生産高の 73 %を占める。中でもトウモロコシ、小麦、大麦が主要作物である。 2013 ~ 2017 年の 5 年連続で、ウクライナは年間 6000 万トン以上の穀物と豆類を収穫。その後 2018 年と 2019 年には、生産量をそれぞれ 7000 万トン、 7400 万トンと増やした。続く 2020 年は、経済状況、 COVID-19 による制約、例年にない気象事情によりウクライナにとって激動の年となり、 2020 年の穀物総収穫量は 6,540 万トンと減った。それでも国内市場のニーズの 3 倍を超える量の収穫は得た。多くの専門家は、収量が大幅に改善されれば、ウクライナの総穀物生産量は 1 億 4000 万トンが可能と見積もっている。
油料種子は、ウクライナの農作物の中で 2 番目に重要で、主な油料作物は、ヒマワリ、大豆、菜種。 2000 年代半ば、未加工のヒマワリ種子に対する輸出関税が実施された後、ウクライナは有数のヒマワリ油産業を発展させ、ヒマワリ油の輸出国として世界第 1 位となった。
ウクライナの輸出は総量が減少する中で、農産物輸出のシェアは高まっている。ウクライナの輸出による収入に占める農業の割合は、 2012 年の 26% から 2020 年には 45% に増加し、 222 億ドルに達した。農産物輸出の基本は依然として原材料の輸出であり、トウモロコシ、小麦、菜種、大豆などの植物由来の製品である。ひまわり油はトウモロコシに次ぐ輸出品で、 58 億ドル(全輸出品の 7.6 %)を占めている。また、家禽類、飼料作物、ジャガイモ、テンサイ、各種果物や野菜も大量に生産されている。
農地売買モラトリアム(農地の取引を暫定的に禁止)政策が、ウクライナの潜在的な生産量と実際の生産量のギャップを生んでいた。この政策により、大規模農家の土地リース代がかさみ、それが灌漑や排水への投資への障害となっていた。しかし、 2021 年 7 月からの段階的な土地市場の開放により、農家は土地を担保に資金調達ができるようになり、長期的な視点で見れば、設備やインフラへの投資ができるようになった。また、同時に、農地を販売できるよう(個人あたり 247 エーカーまで)にもなった。ウクライナの農業企業は、 2024 年からは、 24,710 エーカーまで購入できるようになる。世界銀行は、土地市場の開放に加え、補助金のターゲティング改善や土地の生産性向上、農業セクターの透明性向上などの施策により、今後数年間で年率 2.0% 以上の GDP 成長率の上乗せが見込まれると推定している。
2016 年から 2017 年にかけて、大きな政治的安定、より強い経済、より安定したフリヴナ(国の通貨)などによって、ウクライナの農家が農業機械を含む設備投資を再開することが可能になった。農業機械や機器の輸入は、 2017 年には 2015 年に比べて約 2.5 倍に増加し、 2013 年の水準に戻った。この年の急増は 2018 年と 2019 年には安定し、輸入機械・機器の需要はそれぞれ 11% と 12% へと減少。 2020 年には、 COVID-19 に関連する制約、クレジットや運転資金へのアクセスの制限、オープンランド市場への移行などにより、農業機械・設備の輸入は 15 〜 20 %程度減という予想に反して、 33 %と劇的に減少した。
中古農業機械の需要は安定的に推移。エンドユーザーの多くは中堅・中小の農業生産者である。中古農機具の輸入業者は、大量の在庫を持たず、顧客の需要に応じて仕入れを行う方法をとっている。その主な理由は、高価な国内ローンや変動する為替レート、それと需要が変動することである。
ビジネスチャンス
在ウクライナ商務部は、米国の農業機械・機器メーカーのウクライナでの販売見通しについて、長期的に肯定的な見方をしている。農業機械の需要は、ウクライナのアグリビジネスの健全性に直接結びついているが、農業機械の輸入量は伝統的に多い。
ウクライナは世界有数の農作物の生産・輸出国である一方、設備が不足しており、既存の農業機械の多くは老朽化している。ウクライナ農業経済研究所によると、 2018 年、農地 1 ヘクタールあたりの固定資産の稼働率は 20 %だった。生産量の伸びと需要の遅れが予想される中、ウクライナの農業機械・設備の輸入は増加することが予想され、農業機械・設備の運用ニーズは、 2025 年に 200 億ドルと推定される。
今後続く土地市場の開放と 2030 年までのウクライナ政府の灌漑排水戦略の実施によって、灌漑排水技術への投資は促進される。また、埋め立てシステムのエンジニアリングに関連する公共調達の機会も生まれるだろう。ちなみに、ウクライナの灌漑インフラ近代化の総コストは 40 億ドルと推定されている。
現在 147,000 ヘクタールの土地をターゲットにしているシステムの近代化は、 2021 年から 2024 年の戦略実施の第 2 フェーズで取り組まれる予定。近代化の必要性は 1 億 9,400 万ドルと見積もられている。 1 ヘクタールあたりの推定コストは 1,200 ドル。典型的なポンプステーションは、約 140 万ドルで、そのうち 90 万ドルは農家所有のスプリンクラーの電源に必要で、残りの 50 万ドルはポンプステーションと複数の農家を対象とするパイプネットワークのために必要となる。
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ウクライナのその他の農業資源は、 Facebook にも紹介されているので、それも付け加えておく。 Atrlanticcouncil, 2021 年 3 月 4 日の “ ウクライナは世界を養う Ukraine can feed the world” と題した記事である。
Facebook : https://www.facebook.com/512445543/posts/10158779344825544/
耕地面積はヨーロッパで 1 位。 肥沃な黒土の面積は世界第 3 位で、世界の 25 %の量を占める。
ヒマワリとヒマワリ油の輸出で世界 1 位。
大麦生産量は世界第 2 位で、その輸出量は世界第 4 位。
世界第 3 位のトウモロコシの輸出国。
世界第 4 位のジャガイモ生産国
世界第 5 位のライ麦生産量
ミツバチ生産量世界第 5 位で 75,000 トン
小麦の輸出で世界第 8 位。
鶏卵生産量世界第 9 位。
チーズの輸出で世界第 16 位。 さらに多量の鶏肉の生産国でもある。
「ウクライナは 6 億人の食糧需要を満たすことができる」
と締めくくられている。
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一昨日、ウクライナにある原発プラントがロシアの爆撃を受けた。詳しい被害状況はわかっていないが、爆発が起これば、チェルノブイリの事故の10倍の規模になると言う。
そんなことになったら、せっかくのヨーロッパの穀倉地帯が壊滅する。しかも、ヨーロッパ全域に放射能汚染が拡大してしまうことにもなる。
プーチンは被爆した土地を欲しくはないだろう。では、彼のウクライナ侵略の目的は何なのか?
彼の本当の意図を知りたい。
戦争の後の社会は本当に悲惨だ。私は戦後七年も経ってからカンボジアに入ったが、人間が味わう不幸や苦しみは全部あったという気がした。それらを目の当たりにして、胸が痛み食欲が止まり、私は8日間で7キロ痩せた。その時見たことは、今でもはっきり思い出す。ああした不幸はけっして起こってはならない。
豊かな資源に恵まれたウクライナ、今後の成長が見込まれ、ヨーロッパのみならず世界に貢献できるはずのウクライナ。
プーチンにこれ以上のウクライナに対する蹂躙はさせてはならない。
私が今望むこと。それは、彼が、即刻、国際裁判所に訴追され、その過ちを裁かれることである。
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