Aug 24, 2007
テーマ： 猫の里親を求めています。(2824)
カテゴリ： にゃごにゃご
名前はまだない。
どこで生れたかとんと見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした
所でニャーニャー泣いていた事だけは何度か聞かされた。
吾輩はここで始めて人間というものを見た。しかもあとで聞くと
それは犬好きという人間中で一番珍妙な種族であったそうだ。
この犬好きというのは時々我々を捕えて迷惑がるという話である。
しかしその当時は何という考もなかったから別段恐しいとも
思わなかった。ただ彼女の掌に載せられてスーと持ち上げられた時
何だかフワフワした感じがあったばかりである。
掌の上で少し落ちついて犬好きの顔を見たのが
いわゆる人間というものの見始であろう。
この犬好きの掌の裏でしばらくはよい心持に坐っておったが、
しばらくすると非常な速力で運転し始めた。犬好きが動くのか
自分だけが動くのか分らないが無暗に眼が廻る。胸が悪くなる。
到底助からないと思っていると、どさりと音がして眼から火が出た。
それまでは記憶しているがあとは何の事やら
いくら考え出そうとしても分らない。
そんなわけで、犬好きは我輩の里親を探していると云う。
なにとぞよろしく頼むと繰り返すばかりである。
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