ほよよんルーム

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神経ブロック療法

神経ブロック療法

私たちが「痛い」と感じるのは、体の各部で受けた痛みの刺激が、「知覚神経」によって脳に伝えられるからだ。その際、知覚神経だけでなく、交感神経など他の神経も興奮し、血管の収縮や筋肉の緊張が起き、患部に痛みを起こす「痛み物質」がたまる。これが、さらに神経を刺激して痛みを増幅する悪循環につながる。
「神経ブロック療法」は、これらの神経の動きを、麻酔薬を使って一時的に抑える方法だ。消毒した皮膚に注射針を刺し、薬を注入する。
「今感じている痛みをとり、さらに『痛みの悪循環』を断つことが、神経ブロックの目的」と順天堂大(東京御茶ノ水、℡03.3813.3111)ペインクリニック教授の宮崎東洋さんは言う。
神経ブロックの方法は、痛みの場所や強さによって異なる。例えばぎっくり腰でも、腰の関節が少しずれたことによる比較的軽いものなら、「トリガーポイント注射」といって、痛い所に2,3ヶ所、麻酔薬をいれる。
しかし、同じぎっくり腰でも、椎間板ヘルニアや、腰部脊柱管狭窄症で足まで痛むような場合は、「硬膜外ブロック」が行われる。背中から、背骨に向かって針を刺し、脊髄を包む膜(硬膜)外側の数ミリのすき間に薬を注入する。広範囲に薬が行き渡り、知覚、交感などの神経が同時に遮断される。
「血流が良くなることで、痛み物質が洗い流され、薬の効果が切れても痛みは戻ってこない」(宮崎さん)。一回の注射で不十分な場合は、連日あるいは日をおいて数回行うこともある。ただ、すべての人に有効なわけではない。
治療直後に一時的に動けなくなったり、血圧が下がったりする場合があり、硬膜外ブロックの場合は、治療後一時間は安静を保つ。針を刺し入れる以上、血管や臓器、神経を傷つける事故や、感染が起きる可能性もある。

それだけに、治療は熟練した医師に受けることが望ましい。日本ペインクリニック学会(℡03.3811.6464)の認定医がその目安。同学会のホームページ(http://jspc.gr.jp/)で、認定医がいる医療機関「学会認定医研修施設」約250ヶ所を掲載している。

(読売新聞2002年10月22日)

治療の対象となる疾患

全身
癌、怪我や手術後の痛み、帯状疱疹、変形性脊椎症
片頭痛、群発頭痛、緊張性頭痛、その他の頭痛
首や腕
頚椎椎間板ヘルニア、五十肩、胸郭出口症候群、レイノー病
腹や内臓
急性・慢性膵炎、尿路結石症、慢性内臓痛、月経困難症
腰や足
腰椎椎間板ヘルニア、筋・筋膜性腰痛症、坐骨神経痛、腰部脊柱管狭窄症、尾骨神経症、その他の足腰の痛み
三叉神経痛、舌やのどの神経痛、その他の顔面痛
四肢
閉塞性動脈炎、閉塞性動脈硬化症、幻肢痛
「痛み」のほか、突発性難聴や顔面神経麻痺、網膜中心動脈閉塞や網膜色素変性症などの耳鼻科、眼科疾患にも応用される。





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