”名も知れぬ人たちへ”【承14】

・・・本当に悔やむ。何故?・・・

その夜,私は我が家の玄関先でタバコをくゆらせながら,携帯電話にメッセージを入力していた。

『今日は,動揺した姿を見せてしまった。だって,どうしようかって。頭の中が真っ白になった。オロオロしていたような気がする。』
このメッセージを送信した。

それから少しして返信があった。
『ん,どうしようと言ったって,どうしようもならないよ。なるようにしかならない。』
私は,"びっくり"した。
これが"癌"と宣告された妻のメッセージなのか,と。

"妻は強いな,本当に強いな,まいったな,この俺はいったいなんなんだ?"

『そうだね,これから忙しくなるんだな。落ち込んでいる暇はないな。一緒に一生懸命がんばろうな。』と打ち込んで送信した。
『うん,わかった。』と。

タバコに火をつけて,深く吸い込み,ため息と煙が一緒に口から吐き出された。

・・・さあー,これからが大変だ・・・
次ページへ 前ページへ


© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: