”名も知れぬ人たちへ”・・・【承1】

・・・今から一年と七ヶ月前のこと・・・

妻から私の携帯に電話がかかってきた。

かかってくることすら,すごく珍しいことだった。

「どうしたっ?」

「もうだめだ,フラフラだぁー」震えた声で。

「わかった,明日朝一番で行くからな。無理するな」

私は,そのとき単身赴任で遠隔地にいた。今すぐにでも会いたいのに深夜のため交通手段がなかった。

このとき,私は全然眠ることができずジャージ(パジャマ兼用)を脱ぎ捨てて普段着に着替えた。

とにかく会社に直行した。夜でもパスワードが分かれば入ることができるシステムであった。

朝一番の電車までの時間をとりあえず仕事にあてて,迷惑のかからないようにして,会社を出た。

もちろん,会社の上司へ電話し事情を伝え休暇を取った。

娘は学校行事で遠方へ研修に行っていた。

妻は家に一人で苦しんでいた・・・

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