”名も知れぬ人たちへ”・【転5】

・・・いつまで・・・

妻は退院してから少したって,付属病院に入院していたとき,
同じ部屋にいた同じ病気の友達へ一泊で遊びに行った。
その前の日,私は単身赴任先から電車で帰ってきた。
我が家に妻と娘がいることに満足していた。

妻が私に向かって「明日とあさって,病院の友達のところに遊びに行ってくるよー」うれしそうに言うから,私はダメって言えないじゃーないか。まあ,ダメなことはないんだけどね。
「おお・・・いいよ,行ってこいよ。いっぱい話ししてこいよ」と。
付け加えて「俺が送っていこうか?一人で大丈夫か?」
「大丈夫だから,心配しないで。家のことお願いねー」
「もちろん,わかったよ・・・」

妻の友達・・・ピンク色が好きで,キティちゃんが大好きな"おおざっぱな性格のかあさん",それに部屋が違っていたけど妻と同じくらいの年齢で"明るくケラケラ笑う姉さん","もの静かな上品なかあさん"の三人だったと記憶している。
妻がどんな話しをしたのか,わからないが・・・。
想像するに,自分の話しではなくて友達の話しをじっくり聞いていたに違いない。でも,最後には自分の話しをしてキャッキャッと笑いながら話をしていたと・・・。

「おかえりー(ただいま),疲れたー・・・」って言いながら玄関を開けた。
「おお,ただいまー(おかえり)。横になれ」本当に疲れたようだった。
「でも面白かったー,また行きたいな・・・」
「また,行けるじゃーないか,病院で会えるかもな・・・」

・・・幸せそうな,いい顔していた・・・
次ページへ 前ページへ


© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: