”名も知れぬ人たちへ”・【転8】

・・・また,また,幸せそうな,いい顔しているだろう・・・

ウォシュレット・・・私が始めて使う,記念すべき日。
最初に『ググググー』って音がして次に『シャーーー』。
うおおおー,良いね。気持ち良いー。
これだったら,毎日でもいいね,最初っからつけておけばよかった,って感想だ。
「どーお,良いでしょう・・・」
「おお,最高だね・・・俺にもぴったりだー」
もちろん娘も良いって。家族3人で大喜び・・・幸せだなー。

さあ,今度は妻の抗がん剤治療(化学療法)だ。
一泊二日の予定で私も休暇をとり,付き添えを・・・。
産・婦人科に入院,そんなに長くかからないと思っていたから,少しの下着と必要最小限のものを持参した。
午前中は,入院手続きで院内を回り歩く。妻は病棟で抗がん剤治療の準備。
私は,娘が帰ってくる時間までいて,我が家へ帰る。
「じゃー行くからね,明日退院だからまたくるよー。がんばれよー」
「うん,わかった。悪いねー,気をつけてね」
「おお,わかった。じゃーな」手を振りながら別れた。

午後から抗がん剤を点滴,1日いっぱいやっていたそうだ。
後から妻に聞いた。
妻は少しやせてはいたが,至って普通の生活には支障がなかった。
多分にこの時期から体調不良が現れてくる。

次の日,妻からメールがくる。
"おはよう,今日ね,熱が出て帰れそうもないよ。しばらく入院だって・・・"
"本当かい?大丈夫かい???"と返信する。
"大丈夫だよ,38度5分くらいかな。悪いけど下着とか持ってきてくれる?"
"おお,もちろんだ。"
"大丈夫"という文字を見て少し安心はしたが・・・。

・・・入院長引きそう・・・
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