”名も知れぬ人たちへ”・【転10】

・・・とりあえず良かった・・・

退院前日,娘の"合唱祭"・・・もちろん会社から休暇をもらって。

一年生の去年は,妻がビテオを持って文化会館へ出向いた。そのときのビデオを私は家で見ている。
ビデオだとなかなか臨場感がわかない,そんなことを話したら,
”おと吉・・・合唱祭,本当に感動するよ,今度一緒に行こうよ”
って妻が言った。”そうだな,行ってみようかな・・・”
でも一年生の娘は,しっかりとピアノ伴奏をこなしている。
親ばかな私は,”おお,すごいなー,たいしたもんだ”ってね。

二年生の当日,私は一人でビデオを担ぎながら文化会館へ急いだ。
娘は二年生,しかもまた,ピアノの伴奏だ。
”一年のときは優秀賞だったから今度は最優秀賞をとりたい”って意気込んでいた・・・はたしてどうなのか?

中学校のクラス数は15クラス。
だいたい1クラス5分くらいの時間配分であった。私も5段階評価で点数をつけながら聞いていく。
本当に僅差だと思う,判定が難しい。

娘の番になると私が緊張する。ピアノ伴奏はうまく演奏してあたりまえ,
それがちゃんとできるか心配・・・と同時に心臓の鼓動が早くなる。
さすがに文化会館だけあって音の伝達がよい(響き)。
それにスタインウェイという高価なピアノの音。
左右の耳にしっくりとなじむ,これはビデオとはまったく違う。
それだけではない,歌声がまたすばらしい。
妻が言うだけのことはあるなって思った。
このときの成果はやっぱり優秀賞,残念だったけどピアノはよかった。
最後に全校生徒が客席に向かって合唱する。
これがまた,すごい・・・体に振るえを感じる,ここにいる人でないと味わえない。

”おと吉・・・合唱祭,本当に感動するよ,今度一緒に行こうよ”
この妻の言葉をかみ締める。
一緒に行きたかった・・・

・・・来年は一緒に行こうなと私から言いたい・・・
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