”名も知れぬ人たちへ”・【転22】

・・・単身赴任の解消・・・

 妻がようやく退院し,自宅に戻ってきた。

 体力が少し戻ったといっても家事はもう無理に近い。それでもがんばってご飯を作ってくれた。
もう,私は単身赴任は限界があると思い,電車通勤にしてもらうことで解消となった。
 それでも,朝は4時に起きてバスで最寄の駅まで行き,電車で1時間40分,徒歩10分。夜は17時30分ころだったかな,電車で帰る。家に着くと20時を回る。

 家事は十分に手伝うことは出来ないがいつも私がそばにいることで精神的に違うだろう,とそう思う。それに家族が一つ屋根の下で暮らすことが一番幸せなことだと思った。

 妻はいつも娘の部屋に布団を敷いて寝ていた。
階段を登り降りするのも辛そうだったが,がんばっていたな。         

 抗がん剤は,もう出来ないだろうと医師から言われた。
私にはどうすることも出来ない,このもどかしさ・・・何故,私の妻なんだ,と頭でいつも叫んでいた。

・・・敗血症・・・

次ページへ
前ページへ


© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: