”名も知れぬ人たちへ”・・・【承6】

・・・      ・・・

目の前が真っ白になった。
"どうしよう,どうしよう"と考えていても思いつかない。

とにかく,妻は今の緊急的な危機を脱しなければならない。
緊急入院し輸血・・・

ベットに横たわる妻から,入院のための準備をしてくれと頼まれた。
私は何が必要なのか,どこに何ががあるのか分からない状態だった。
"本当にいざっとなったとき,男って役に立たない"
情けなくて涙が出そうだ・・・心の中では洪水のような涙が・・・

妻の下着全部,フェイスタオル,バスタオル,歯磨きセット,お茶パック,いつも持ち歩いていたお気に入りのバックなどを持って病室へ。

妻にいきなり,怒られた。"下着こんなにいらないよ。これとこれとこれは持ち帰って"と。
怒られても"うん,うん"とうなずくしかなかった。

結果は,いつわかるのか聞きそびれた,とにかく結果が出ないことには仕事ができない。

我が家の玄関先で,上司へ電話で報告し,とりあえず一週間休暇を取る事にした。
携帯電話を耳にあて,深々と頭をさげていた私がいた。
終わった後,空を見上げた。初夏のなまあたたい風が頬をなでた。

・・・なみだがとまらなかった・・・

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