マルスの遺言

マルスの遺言

ページⅤ(それ以降)



日本の原爆による降伏まで言い当てたといわれる詩がある。だがノストラダムスの詩にはある偏りや、癖、小さな間違いなどが存在するらしい。私が見て、原爆による日本の降伏後の状況もやや大げさである。そこには人が人をお互いに食う、という風に書いてある。実際、当時そのようなことがあったやも?いや、あったのだろうが?、ノストラダムスには、そんなおぞましい出来事はニンゲンの終わりのように思えたに違いない。いや、誰にとってもそうだろう。しかも彼には、予言はさも今起こっているかのように目の前に現れるのだろうから。

後の、つまり9.11後の世界の様子は、まるきり半獣半人の化け物が世界を被い、人が人を食うかのような記述が続く。果たしてこれは現実になるだろうか?今すぐでなくても何年後、イヤ、何十年、何百年後にはそうなるかもしれない。ただ、思い出して欲しい。かの911テロ事件の詩をまるで世界全体の滅亡のようにとらえていた我々にとって、これらの未来を予見する詩も、大したことではないといってしまえばニューヨークの被害者に申し訳ないが、そう大げさにとらえることではないかもしれない。世界の中の、ごくごく一部の出来事なのかもしれない。未来を予見するときのノストラダムスにとっては目の前にはそれしか見えていないわけだから、それが例え一部の人のことでも世界全体のことのように思えても仕方ないかもしれない。これは実際の体験者がそうであるように、目の前でそんな残虐なことが起これば残虐におぞましく書くに違いない。彼も一人の人間なのだから。


© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: