マルスの遺言

マルスの遺言

ハート・ブレイク・ホテル 因果応報



アメリカの原住民・インディアン居住区で、白人の警官たちがパトカーで流して気に入ったかわいいインディアンの娘を見つけると、罪もないのに投獄し、レイプした。それがほとんどゲームのように何度も繰り返されていた。その一晩投獄された監獄で、ハートをズタズタにされた多くのインディアンの娘の涙が流れた。罪もない無垢な娘たちの虐げられた苦しみの涙だった。人々はその、ぺんぺん草しか生えていないような片田舎の小さな監獄を、ハート・ブレイク・ホテルと呼んだのだ。

シートン動物記に、私が小さい頃好きでしょうがなかった「峰の王者フラッグ」という話がある。それは、尾っぽの先が白く、それを旗のように振ったことからフラッグと呼ばれるようになった小鹿が成長し、熟練した老ハンターと一騎打ちする話である。フラッグは、ハンターである人間のずる賢い知恵の前に撃たれ、倒れるが、その首を得意げに部屋に飾った老ハンターは、ある大吹雪の晩、家がつぶれて死んでしまう。つぶれた家の上に残ったのは、まるでまだ生きているかのように見えるフラッグの立派なツノをたたえた頭だったという話だ。

この間、テレビで三輪明宏の哲学「正と負」ということについて話していた。良いことのあとには悪いことも来るって事らしい。まさに世の中は男と女、光と陰、正義と悪、などの二元論で成り立っているので、正と負ということは良くわかる。しかし、陰陽のマークのように、良い時にも悪いことは起こり(良いときにも悪いことを含み)、悪いときも、本人はそうでもなかったりする(悪いときも良いことを含む)。その辺では人間の生とは複雑で、割り切れなかったりするものだが、基本的には良いことの後には悪いことがあるといっていいと思う。しかし、人間はやはり”行い”ではないかと思う。悪い行いをしたものはいつかは必ず罰せられる。アメリカは、今までもそう、罰せられていたようだったが、今の行いを続ける限り、さらに罰せられるような気がしてならないのは私だけだろうか?

アメリカ人はインディアン、先住民を排除し、虐殺までして土地を奪った。当時、知恵のある先住民たちは彼らをなんと言っていたかというと「彼らは学びに来たのだ」と。そうでなければはるばる海を越えて来て、わざわざ争いを吹っかけて来はしないだろう?と、彼らは何年か先になれば我々から多くのことを学ぶだろう。自分たちのしたことから多くを学ぶだろうと、そう言ったのだ!訳もわからず追いやられ、女、子供まで殺されているのに。

そうして今、アメリカの若者たちは先住民の生活や文化、歴史に興味を示している。かつてはニュー・エイジ・カルチャーがそうだ。今でもアメリカの歴史を展示してある博物館に、夏休みになると多くの白人の子供たちが先住民のコーナーでスケッチをし、メモを取る姿が見られるそうだ。

文化や歴史、政治の上でも、大きな意味でアメリカは先住民から学ぶものがあったと信じたい。そして我々も、同じ過ちを繰り返さないために知るべきことは知っておきたいものだ。









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