マルスの遺言

マルスの遺言

アレキサンダーの声



その理由を本当に聞きたいだろうか?

世の中の現実のほとんどが理由のない行動で埋め尽くされている

理由など聞くのは愚かというもの

しかし、ひとつだけ言えるのは 愛がそこになかったからだ

私は産まれてから短期間のうちに、あらゆるものに裏切られ 否定された

周りの全てのもの そして親族にさえも

私は生まれ故郷の人の愚かさを憎む 

愚かさとは人ではないから 人を憎んでも憎み通すことは出来ない

それはまるでカカシに向かって刃を振るうようなもの

そう、私はそのものたちを憎みはしないが 愛することも出来ない

私が外の世界に目を向けたのも当然のことだろう

私が世界に求めたのは愛であり 決して死ではなかった

世界は私を愛してくれもしたし 憎しみもした

ただ私は前に進んだだけだ

確かなもののために

しかしそれはどこにもなかった 

きれい事を言えば、皆の心の中にやっと見つけることが出来た

けれどもそれも 砂漠の蜃気楼のように不確かなもの

人類が同じ思いを抱いているとしたら 

私の乾きも理解できないものではないだろう

人生は生き続ける以上 不確かなものの連続でしかないのだ

そう、それが誰の身にも存在するとすれば

前に進んでいくその瞬間、瞬間に降って来ては消えていったものが 

その唯一確かなもの なのだと思う










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